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Happyending

Happyending

「ねぇ・・怒ってる?」
「怒ってねぇ。」
「怒ってるでしょ?」

俺が運転するAMGの助手席で、牧野がチラチラこっちを見てる。
はぁ、そんなに申し訳なさそうな顔すんな。
つーか、俺は決して怒ってる訳じゃねぇ!




___昨日の夜

俺は思わず牧野を押し倒してた。
だって、仕方ねぇだろ?
密室に彼女と二人きりで、結婚の約束までしたんだ。
もっと触れ合いたい・・・

居間には弟がいることだって分かってた。
だから、最後までとかそんな事は決して思ってなかったが、
ちょっとだけ・・・
そう思ったら、手が勝手に動いてた。
Tシャツの上から牧野の胸に触れた。
ビクッと彼女が固くなったのが分かったけど、止まれなかったのは俺が悪かった。
こいつは暗闇に引きづり込まれたことがある。
石で殴ってやったって言ってたけど、相当怖い思いをしたに違いない。
けど、ここは電気が煌々と灯ってるし、隣の部屋には弟もいるし、ある意味こいつにとっては安全地帯。
少しだけなら許されるだろ?・・・てか、許してくれ。

正直、どこまでが『ちょっと』のラインなのかは微妙で、未だに自分でも分かんねぇ。
ちょっとだけ素肌に触れたい。
ちょっとだけ俺のものだって印をつけたい。
女の体に触りてぇなんて、一度も思ったことなんかねぇっつーのに。
ブラの上からでも分かる胸の弾力。
その感触に、完全に自制心が吹っ飛んで、
牧野のTシャツの裾から手を入れたとたん・・

「姉ちゃん、電話〜!」
という、すっとぼけた弟の声。

二人の視線が絡み合った。
・・・・・・・。
完全にがっついてた俺・・・すっげぇ、気まずい。

___ドスッ!

「うぉっ!」
俺に付きつけられたのは、あのでっけぇ犬のヌイグルミで、

「ごめんっ、行ってくるね!」
牧野は俺の下から這い出して、逃げるように走り去って行った。


残されたのは、俺と犬の『コテツ』。
それは後から聞いたこいつの名前で、やっぱり俺の予想は的中。
こいつはオスで、毎晩牧野と寝ているらしい。
コテツのヤロー。
自制の効かない俺をバカにしたように笑いやがって。
しかし、何だって俺はこんなところにこいつを置いたんだ・・・くそっ!

「ジロジロ見てんじゃねーよ。」
俺はコテツにヘッドロックをかました。




そんな流れで、結局俺はその晩も弟の部屋で寝た。
でもまぁ、それはそれで良かったかも知れねぇ。
あわよくば牧野のベッドで寝てみてぇとも思ったが、服の上から胸を触っただけで理性ぶっ飛んだし。
自分で寸止め許可してどうすんだ。
ちょっとだけで我慢なんてできねぇってことは十分思い知った。
それに、弟とはもう一度じっくり話をしたかった。

「明日、お前たちの両親に会いに行って、そのまま牧野を東京に連れて行く。」
「分かりました。」
「お前にも迷惑かけるな。」
「いえ、俺、嬉しいですから。」
「そっか。サンキュ。」

俺はこの男が気に入ってる。
こいつが俺の弟になるってことは嬉しい誤算。

「お前はもう俺の弟だからな。何かあったら必ず連絡しろよ。」
「えへ・・・頼りにしてます。兄さん。」

よくよく聞けば、留学先はボストンらしい。
ニューヨークからは離れているが、アメリカ出張ついでにも顔は出せそうだ。
なんなら牧野も連れて行けばいい。
そんな風に、ただ会い行きたい、利益が絡まない家族が増えるということも、俺にとって予想以上に幸せなことだった。




今朝はすっきりと目覚めた。
三人で朝食をとり、「東京なんて近いから心配しないで」と言っている牧野の肩をそっと抱きしめて弟を見送った。

それから背中の傷を爺さん先生に診てもらうために母屋へ向かった。
抜糸は半分だけしてもらい、残りの半分は東京ですることになった。
俺と牧野の報告を聞いた先生と奥さんは、驚きながらも喜んでくれた。

「道明寺さん、つくしちゃんを幸せにしてあげてね。」
と先生の奥さんが言った時、
「千尋さん、違うの。私が彼を幸せにしてあげたいの。」
と言ってくれた牧野。

「つくしちゃんは今までで一番いい顔をしてるな。」
そう言った先生は、俺に向かって、
「僕は昔、君と同じような目をした青年に会ったことがあるよ。その青年も、自分の家の都合に彼女を巻き込んでいいのかどうか真剣に悩んでた。けどね、今は幸せにやってるみたいだよ。だから、君たちもきっと大丈夫だ。」

この爺さん先生の一言には重みがある。
伊達に歳は食ってねぇんだろう。
俺たちにはまだ見えないこの先にある未来が、爺さんには見えるのかもな。
神様もお寺さんも何も信じちゃいねぇけど、この爺さんの話は何故か素直に聞くことが出来た。
鏡越しにみた傷も綺麗に縫合されてたから、医師としての腕もいいんだろう。
大丈夫だとそう思えて、心が僅かに軽くなった。

「つくしちゃんが赤ちゃんを産む時には、私たちがお手伝いに行きたいわ、ね、あなた。」
「やだっ、気が早いです!!」
「私たちの手が鈍らないうちに赤ちゃんが出来たらいいわね。」

牧野が俺の子供を妊娠したら・・・か。
世間一般的には目出度い話なのかも知れねぇけど、

「すみませんが、先生はご遠慮下さい。」
「「えっ??」」
「俺以外の男に彼女を触らせる気はないので。」

「どっ、道明寺さんっ!!」
「「あははははっ!!!」」

真っ赤になって焦ってる牧野に、大爆笑の先生夫婦。
俺は決して間違ったことなんて言ってねぇし。
笑われる筋合いなんてねぇぞ!
たとえ爺さん先生でも、牧野の体を見せられるわけねぇ!!
つーか、俺だってまだ見てねぇし・・。

「とにかく、進君のことは任せなさい。君達は、君達のことだけを考えて。」
「はい。」

先生夫妻に見送られ、結局牧野は数日分の着替えと少しだけどと言いながらも貯金通帳と印鑑、それから コテツだけを連れて、俺の車に乗り込んだ。






「ねぇ・・勘違いしないでね?」
「何が?」
「別に、そのぉ・・嫌だっていう訳じゃなかったの。」
「分かってる。」

分かってるから、もう言うな。
俺だって、ガッついたみたいで恥ずかしいんだよっ!

「昨日は、弟もいたし・・。」
「だから分かってるって。」

「・・・ごめんなさい。」

ちげぇっ!
あー、くそっ、何で上手く伝わらねぇんだっ!!

「お前がそんな顔すんな。自制ができねぇ俺がわりぃ。お前が、昔怖い思いしたことがあるのも知ってんのにな。無理矢理しようなんて思ってねぇから心配すんな。お前のペースに合わせるから。まぁ、ちょっと・・時々は手が出ちまうこともあるかもしれねぇけど・・・・それは好きな女が傍にいたら男としては仕方ねぇってことで・・・・。」

最後はちょっと言い訳っぽくなったけど、これが今の俺の正直な気持ちだ。

「うん。」

上手く伝わったのかは分かんねぇけど、素直に頷いたこいつの髪をくしゃっと撫でた。





その後到着したのは、ちっせぇ旅館。
出迎えてくれたのは牧野の両親。
背が低くて小太り眼鏡なのがパパで、結構きつそうなのがママだと彼女が教えてくれた。

昨日の夜、俺が牧野を押し倒した時に掛かってきた電話は母親からで、その時に牧野は『彼氏』を連れて行くと話したらしい。

案内されたのは、旅館の一室。
10畳程度の畳の一部屋に、古くせぇテレビが置かれてる。
一応トイレと風呂は付いているみたいだが、こんな近くに人がいればトイレで用も足せねぇと俺は思う。

「今日は午後から休みを取ったから」という牧野の両親に早めの夕食を誘われて、四人でテーブルを囲むことになった。

料理はすき焼きで、全員が同じ鍋に箸を突っ込むという大胆方式だ。
「つくしが彼を紹介するだなんて、驚いたんですよ。」
「それが、こーんな素敵な方だなんて、ママびっくり!」
「それで、道明寺さんは何をされている方?」
ペラペラとしゃべりまくりの牧野の母親。
俺の皿にこれでもかっと肉を入れてくる。

比べて牧野の父親は、
「つくし、仕事はどうするんだい?」
「ご飯はちゃんと食べてるのかい?」
なんて、俺の顔なんて見ずに牧野のことばかり構ってる。
俺のことなんて眼中にねぇって感じでちょっと焦る。
・・・まさか、結婚を反対するとか?
何がうちの両親は反対しないだよっ!


何とか無事に食事が終わり、テーブルにはコーヒーが置かれた。
ここで言うしかねぇ。
隣の牧野と自然に目が合って、彼女がコクンと頷いた。
座布団から下りて姿勢を正すと、牧野が同じように俺の隣にぴったりと並んだ。
その様子が可愛くて、笑いそうになるけどぐっと堪える。


「お父さん、お母さん。」
「「はっ、はい。」」

俺の気迫に押されたのか、牧野の両親も姿勢を正した。

「つくしさんを俺に下さい。」



しーん・・・・・・・



やべぇ・・・返事ねぇし。
血の気が引いた俺の手を牧野がそっと握ってくれた。

「パパ、ママ、あのね・・いきなりでびっくりしたと思うけど・・・」


「ほらほら~っ!!見なさいよ、パパ。絶対に結婚の申し込みだって言ったじゃないの!」
「だって、紹介するだけだって言ってたじゃないかぁ!」
「甘いわよ、パパ。こんな田舎まで会いに来るんだから結婚に決まってるでしょ!」
「そんなぁ、つくしぃ~。」

取り敢えずリアクションが貰えてホッとしたが、牧野の父親のガッカリした顔に胸が痛む。

「そんなに早くお嫁に行かなくてもいいじゃないか〜。」
「パパ・・・。」
「何言ってるの、売れ残ってからじゃ遅いのよ?つくしだって26なんだから、貰って頂くだけでありがたいお話よ?」
「でもなぁ。道明寺さんと出会ってまだ間もないんだろう?それならもう少しじっくり考えてみてもいいんじゃないのかな?」

やはり、牧野のパパは結婚に消極的らしい。

「道明寺さん、気を悪くされないでね。男親ってこんなものよ。」

牧野の母親が俺を慰めてくれるが、軽いショックは否めねぇ。
自分で言うのもなんだが、娘を俺に差し出そうとするオヤジは山ほどいるってのに、牧野のオヤジは違ってた。それはきっと俺の素性を知らないからじゃねぇ。きっと娘が心配だから。娘の幸せを心底願ってるから。


「パパ、私、道明寺さんが好きなの。他の人じゃダメなの。今、彼と一緒に東京に行かなかったら絶対に後悔する。」
「つくし・・・。」

「つくしはどこに行っても大丈夫よ。ね、つくし!」
「ママ。」
「でも、道明寺さんは会社を経営しているということだけど、その会社が潰れたりしたらどうするんだい?やっぱり結婚するなら公務員がいいんじゃないのかなぁ。」
「・・・・パパがそれ言う?」

結婚するなら俺よりも公務員・・・。
何故かといえば、牧野の父親は牧野が大学2年の時に会社をリストラされたらしい。それと同時にこっちに移り住んだらしいが、大学の学費や生活費なんかは奨学金とバイトで牧野が 全て工面した。だから、安定した職業筆頭の公務員がいいんじゃないかと言う。


「私は貧乏は慣れてるし、道明寺さんが一文無しになっても大丈夫だよ。ちゃんと彼を支えてあげるし。」
「そうよ。つくしは学生の時から私たち家族を支えてくれてたじゃないの。ね?」
「うん。」

俺が無一文になっても・・・。
会社が潰れても、俺の個人としての資産も相当あるし、こいつに苦労はさせねぇつもりだが。
こいつらの中では、俺は無一文になる設定で、それでも俺を養ってくれるという。
その意気込みを単純に喜んでいいのかは、かなり悩む。
貧乏慣れしてるか・・。
相当信用されてねぇな・・俺。


「うちはずっと貧乏だったけど、私は一度も後悔してないわよ。だって、好きな人と結婚したんだもの。ね、そう思わない、パパ?」

牧野の母親の一言にはっとする。
本当にその通りだと思った。
好きな相手と結婚できるのなら、この先どんなことがあっても後悔なんてしねぇ。

「そうだねぇ。」

諦めたように、牧野がの父親がふぅっと息を吐いた。



「お許しいただけますか?」

「つくしのこと、よろしくお願いします。本当に優しい娘なんです。どうか、どうか幸せをにしてやってください。」

「はい。お約束します。」




そうして俺は、婚姻届の証人の欄に牧野の父親のサインを貰った。
半分泣いてる父親の背中をトントンと叩いた母親が、

「今晩泊まっていくのよね?明日の朝ご飯は、一緒に食べましょう。」

そう言って、グズグズしている父親を促して立ち上がった。



「「え・・・?」」



残されたのは、俺たち二人。
繋いだ手を急に意識する。


この狭い部屋で一晩、二人きり。
無理矢理なことはしないと誓った以上、その約束は反故にはできねぇ。

けど、部屋のどこにいても、彼女を意識せずにはいられねぇぐらいに狭い部屋だ。
我慢するにも逃げ場がない。

ちらっと隣に座る牧野を見ると、
彼女の顔は真っ赤で・・・


やっべぇ・・
これって、軽い拷問じゃねぇ?


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Comments 4

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Happyending  
こんばんは(*^^*)

いつもたくさんの応援をありがとうございます。
やっぱりね・・えへへ・・ですよねf^_^;
そして、あっという間に先生夫妻とつくしパパママからの了解を頂きました(笑)。ちょっと巻きモード(笑)。

さてさて、
スリ●様
原作のパパなら、小躍りしちゃうんでしょうけど、ここはちょっとシリアスパパ(笑)。やっぱり男親は女の子が結婚するのは寂しいんじゃないかなぁという妄想で・・どうでしょうね。そうそう、つくしちゃんまだ司がどんな仕事をしているのか、どんな役職かも知りません。これは騙している訳じゃなくて、言わなかっただけ・・ということで(笑)。驚くでしょうねぇ・・きっと。どんな展開にするかはまだ考えてない。いつも書きながらなので・・f^_^; まだお話の流れも迷ってますσ^_^;

花●様
やっぱり進でした(笑)!さて、ついについに、本当に二人きりですよ!この続きは・・・明日の朝です(^^)/

さと●様
司、だんだんと子供っぽくなってきた(笑)。世界の道明寺より公務員・・とか言われたら、司ショックだっただろうな。私も司のボンビーは想像しにくいです。御曹司以外の背景も想像しにくい・・f^_^; ふっと思うと、パラレルのつかつくばっかり書いてますが、司は常に道明寺の御曹司。これ以外に司に合うのって思いつかないんですよねぇ。そして、あはは!Rの波を逃したと見せかけて、拷問Rの波!(笑)ここまできたら・・あはは〜。では明日に(*^^*)


では、明日は朝5時に!

2018/05/12 (Sat) 23:50 | EDIT | REPLY |   
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2018/05/11 (Fri) 22:51 | EDIT | REPLY |   
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2018/05/11 (Fri) 22:40 | EDIT | REPLY |   
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2018/05/11 (Fri) 21:42 | EDIT | REPLY |   

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