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Happyending

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「俺、ずっと牧野のことが好きだったんだ。・・・俺と付き合ってくれないかな。」

「・・・え?・・・・ええっ!」


お世話になった教授の特別講演が終わった後の大学の中庭で、
あまりの驚きに、ぱかっと開いてしまった口がふさがらないあたし。
目の前では、波田君がちょっと照れ臭そうに笑ってる。

「そんなに驚かれちゃうと、ちょっとショックだな。俺、それなりにアピールしてきたつもりだったんだけど?」


波田君は、T大学経済学部の同級生。
だけど、ゼミは別だったし、個人的に親しくした記憶なんてない。
大学4回生のあたしたちは、卒論も通り、あとは卒業式を待つばかりだ。
1か月後には社会に出ていくというこの時期に、
どうして今になってこんなことを言うの?

「ずっと好きだったけど、牧野はきっと気づいてないんだろうなぁって思ってたからさ。」

だって、たまに学食で一緒になる時だって他の友達も一緒だったし、飲み会の時だって二人で話したことなんてなかったよ?

「けど、やっぱり気持ちは伝えたかったし、俺の事少しは考えて欲しくて・・さ。」
「波田君・・。」
「無理?」
「えっと・・・。」

波田君がじっとあたしを見つめてる。
きちんと断らなきゃダメだ。
だって、あたしは波田君のことをそんな風に考えたことなんて一度もない。多分これからもないと思う。
そう頭ではわかっているんだけど、本人を目の前にしているとなかなか言葉が出てこない。
どうしたら彼を傷つけずに伝えられる?

あー、もうっ。
あたしは自分のこういうところがダメなところだと思う。
グダグダ考えているうちに、本筋からずれちゃうところ。


「じゃあさ、デートしようよ。それ位はいいだろ?」
「えっ!?」
「プッ、牧野、驚きすぎ。」

そりゃ、驚くでしょ?
それに、ほらまた本筋からズレてきてる。

「一緒に食事しようよ。オシャレで美味しいって評判のレストラン、おすすめのところがあるんだ。返事は今週中でいいから。考えてみてよ。・・・・はい、これ。」

波田君に半ば強引に手渡されたのは、彼の携帯番号が書かれたメモだった。

困惑しているあたしに、

「俺、牧野との思い出が欲しいんだ。一回だけでもいいからさ。断らないで欲しいな。」

波田君はそう言って、立ち去ってしまった。



どうしよう・・・・
どうしようーーっ!!



渡されたメモを持ったまま、呆然と立ち尽くすあたしの名前は、牧野つくし。
来月には東京での就職が決まってる。

大学も卒業しようというこの時期になって、生まれて初めて告白された。
そして、告白って、とっても素敵な響きだけど、素敵なのは相思相愛の場合だけなんだと初めて知った。
だって、今のあたしは戸惑いばかりで、ドキドキとかワクワクとかそんな気分はなれないもん。

それに、告白されたのが初めてってだけじゃない。
デートだってしたことがないし、
もちろん、恋人がいたこともない。

親友の優紀には、『つくしには恋愛する時間的余裕がないよね』なんて笑われた。
大学は奨学金で通ってたから、学生生活はバイト三昧だったし、
就職は一流企業を狙っていたから、勉強は手を抜かなかった。
だから、恋愛に費やす時間は本当になかったけど、でも、どっちかっていうとあたしは恋愛に興味がなかったと言った方が正しいのかも。

恋に憧れがないって訳じゃないんだけど、
でも、彼氏持ちの友人達みたいに、四六時中一緒にいたいと思えるような人なんて・・・あたしは出会ったことがない。
だから、無理して恋愛をしようとは思わない。
いつか自然と一緒にいたいと思える人に出会えたら・・その時はとは思うけど。


ああ・・あたしってば本当にバカ。
後から断る方が気まずいじゃないの。
どうしてさっききちんと断らなかったのよっ!!

これじゃだめよっ!
ちゃんと断ろうっ!

そう決めて、その場で波田君に電話をかけようとしたけれど、
「やばっ、バイトの時間だ。」
と気づいて、携帯を鞄にしまって走り出してしまった。

こういうところも、あたしは恋愛に向いていないんだと思う。




夜、バイトが終わって、一人暮らしのアパートに帰ってきたあたしは、改めて波田君に手渡されたメモを開いた。

よーしっ!!

大きく一つ深呼吸をして、
メモに書かれた番号をタップした。






***



「本日の業務はこちらで終了です。お疲れ様でした。」

目の前には無表情が定番の俺の第一秘書、西田。
次から次へ仕事をつぎ込んできやがるサイボーグ。
“お疲れ”だなんて微塵も思ってねぇだろってツッコミてぇ。

俺は、たった今出てきた料亭前に待機させていたリムジンに無言で乗り込んだ。


はぁ・・マジ、やってらんねぇ。


仕事上付き合いのある建設会社の社長との会食だと出向いてみれば、相手は娘を同席させる始末。
クネクネと媚びを売ってくる女が気持ち悪ぃったらありゃしねぇ。
俺はそーいう女が一番嫌いなんだよっ!
だいたい、西田は分かってたはずだ。今日、この女がついて来るってことを。
西田は、俺の女嫌いを知っている。
それでもこの会食を設定したのは、今後うちが指揮を執って展開する予定の有料老人ホームの建設事業の担当の一つがこの会社だったからだ。

ちっ!
プライベートでは、俺は絶対に女を寄せ付けない。
今日だって、会社の専務なんて役職じゃなかったら速攻で退席するところだが、これもビジネスだと何とか耐え抜いたっつーのに、

『一度娘と二人で食事でもどうかな、司君』
『とてもおいしいフレンチレストランが青山にできたんですの。ご存知ですか?司さん。』

てめぇら、馴れ馴れしーんだよっ。
つーか、何で俺がこの女と二人で食事行かなきゃなんねぇんだ。
黙っていればつけあがってんじゃねーよっ!

ブチッ!!
俺の我慢も限界にきた。

『ビジネスとプライベートは完全に分ける主義ですので。
 それでもとおっしゃるのであれば、契約自体を白紙に戻します。
 では、失礼します。』

そう言い残して、俺はさっさとその場を後にした。





邸の私室にたどり着き、ドサッとソファーに凭れ掛かった。
腕時計を見ればまだ10時だ。
中途半端な時間に帰って来ちまった。
シャワーでも浴びて少し仕事でもすっかと腰を上げようと思った瞬間に携帯が鳴った。
しかも、プライベートの方だ。

俺のプライベート携帯の番号を知っている人間は少ない。
ディスプレイを見ると、見知らぬ番号が表示されていた。

・・・誰だ?


いつもだったら絶対にスルーだ。

だが、この時、俺は少し余裕があったのかも知れねぇな。
自然と通話ボタンを押していた。


無言で携帯を耳に当てた。



『もしもし?』

聞こえてきたのは女の声。
聞いた記憶はねぇな。
だが、少し高めのその声の聞き心地は悪くない。

「・・・・・・。」

俺は返事をするでもなく無言を貫いていた。


『もしもし・・・波田君?』

ここで初めて、間違い電話だと気づく俺。


『あの・・・あたし、牧野です。』

「・・・・ああ。」

牧野なんて女、知ってるはずもねーのに、
適当に返事なんかしちまったのはどうしてだ?


『良かった。あのね、夕方の話なんだけど・・・』

牧野と名乗った女の声が、少し曇ったような気がした。



『波田君のことは、いい人だと思ってるの。』

・・・・・・?

『講義はいつも一生懸命受けてたよね。そういえば3回生までは結構同じ講義とってた?それに、オシャレなレストランも行ってみたいとは思うけど・・・・。』

・・・・・・は?
急に早口になって、グダグダ言い出したこの女。
こいつが一体何が言いたいのかさっぱり分かんねぇ。


『でもね。デートをするのも、二人きりで食事をするのも、やっぱり本当に好きな人とじゃないと無理だと思うの・・・あたし。』


デートするのも、
一緒に食事をするのも、
好きな男じゃないと無理。

そんなの当たり前だろーが。
いちいち言う事か?
バカじゃねーの?


そんな疑問が頭をかすめたその直後、
俺は、生まれてこの方一度も言われたことがない文句を聞かされた。



『だから、ごめんなさい。
 あたし、あなたとはお付き合いもデートも出来ません。
 本当にごめんなさいっ!』





これは間違い電話だ。
だから今のは俺に言われた言葉じゃねぇ。

そんなことは分かっていたが・・・

___なんか俺、惨めじゃね?


そこから、何故だかフツフツと怒りが湧いてきた。

俺はなぁ、女に言い寄られることはあっても、
振られたことなんか、一度もねーよ。


それに、この俺の、道明寺司の、
ブランドやステータスに媚びてくる女なんかに、
死んだって告白なんかしねぇっ!!

だから、俺が振られるとか、ありえねーんだよっ!!!



「てめぇ・・・誰に向かって口きいてんだっ!!」


気が付けば、俺は、
電話越しの見知らぬ女に向かって怒鳴っていた。



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こちらのお話は中編の予定です。
放置しているお話もあるのにごめんなさいっ。
突然降ってきた妄想が、気楽に書けそうだったので・・つい(;^_^A
時間がある時に更新したいと思いますので、また覗いて頂けたら嬉しいです!
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Comments 7

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Happyending  
こんばんは(*^^*)

少しだけご無沙汰になりました。Happydaysを書こうかなと思っていたのに、急にこんなのもいいかな~と湧いてきたお話を書いてしまった・・(;^_^A でも、今はばたばたしているので、自分が書きやすいお話で、私自身のリフレッシュにもなればいいな~という気持ちです。脳内のくだらない妄想をこうやって垂れ流し(笑)するのは、今更ながらに恥ずかしいような気もしますが、拍手やコメントを頂けると嬉しくて、ほっとします(*^^*)いつもありがとうございます。

さて、今日は夕方から時間があると思ったのに、トラブル続きで忙しくなってしまい、2話目が全く書けていません・・涙。ですので、明日の朝の更新は難しそうで、明日の夜に更新できたらな~と思います。
そんなこんなで、たくさんのコメントをいただいたのにまとめてのお返事で申し訳ありません(>_<)。その分、早くお話更新できるようにがんばりますね~(^^)v

体調の心配もありがとうございます。今年度はいろいろと役が重なったり、仕事の面でも忙しくなるのが分かっていた年なので、おそらくこの先も不定期な更新しかできないのかなと思いますが、こうしてお話を書くことも私の楽しみでもあります。皆様にお話を待っていただけることがとても励みにもなっているので、無理せずに続けていきたいなという気持ちです。お話をお待たせしてしまうことも多々あるかと思いますが、見つけた時に楽しんでいただけたら嬉しいです!

Telephone Loveってちょっと恥ずかしいタイトルですが、どうぞしばらくお付き合いくださいね~(#^^#)!

2018/06/07 (Thu) 23:14 | EDIT | REPLY |   
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2018/06/07 (Thu) 12:42 | EDIT | REPLY |   
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2018/06/07 (Thu) 08:10 | EDIT | REPLY |   
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2018/06/07 (Thu) 07:27 | EDIT | REPLY |   
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2018/06/07 (Thu) 06:57 | EDIT | REPLY |   
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2018/06/07 (Thu) 06:23 | EDIT | REPLY |   
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2018/06/07 (Thu) 05:31 | EDIT | REPLY |   

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