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Happyending

Happyending

波田君にかけた電話は5コールぐらいで繋がったけど、あまり彼からの反応がなくて、なんだかすごく緊張した空気が流れて、すごく焦った。

意を決して伝えた『ごめんなさい』の言葉。
申し訳ないけれど、デートもお付き合いもできないのは本当の気持ち。
やっぱりすぐには反応はなくて、ますます申し訳ない気持ちになった。
それなら夕方に断れよって思っているのかも・・結局彼を傷つけるのは同じなのに、あたしってば何してるんだろう。

もう一度ごめんねって伝えようとした、
その時に聞こえた言葉は____

『てめぇ・・・誰に向かて口きいてんだっ!!』

という、ものすごい怒声。

・・・・・へ?

さっきの波田君とは一変した超俺様風の言葉遣いに、思わず携帯を落としそうになった。


「波田・・君?」
『誰が波田君だっ!』

「え?」
『俺はそんな奴じゃねぇ。』

「うそっ!」
『何で嘘なんかつくんだよっ!』

「・・・・・・。」


電話の相手は波田君じゃない・・らしい。
つまり、あたしは間違い電話を掛けちゃった訳で。
間違い電話の相手に向かって、告白の返事をしていたことになる。

って、いやーっ!!
穴があったら入りたいっ!!

で、でもさ、でもさ。
普通間違いだって気づいたら、向こうが言ってくれるんじゃないの?
波田君じゃないんだったら、もっと早く教えてよ。
私だけが悪いんじゃないってそう思うけど、電話の向こうでは相手の男の人がさらにエスカレートしてる。


『だいたいなぁ。お前、バカか?男をフルのにいちいちグダグダ言ってんじゃねーよ。前置き長げぇーんだよっ!』

前置き長いって言われても・・・。
そうか、そうなのか・・・そうかも?

『好きじゃねぇから付き合えねぇんだろーが。だったら、一発で断れっ!』

確かに・・・。

大声で怒鳴ってるこの人の言葉に、心の中で同意してしまってるあたし。
だから、思わず言ってしまった。


「なんか・・・すごいですね。」

『はぁっ!?』

「おっしゃってること、ごもっともって感じで。」

『当たりめぇだろっ。俺を誰だと思ってんだっ。』

・・・・知りませんけど?
とはさすがに言えない。


こういう場合、どうすればいいの?
ああ、そっか。どうもすみませんでしたって電話を切ればいいんだ・・とやっと気づいた。


「あの、ご迷惑をおかけしちゃって、スミマセンでした。」

『ったく、この俺にくだらねぇ電話かけてきやがって。』


こっちが謝ってるのに、まだ怒ってる相手の人。
そんなに怒ってるんだったら、そっちが電話を切ったらいいんじゃないの?
って文句も言いたくなるんだけど、でもそれは言えなかった。
なんか不思議なの。
怒られてるのに、あんまり嫌じゃないの・・この人の声。

怒鳴ってるのにね・・・すっごくいい声してる。
言葉は乱暴だし、ちょっと怖いんだけど、低めに耳に響いてくる素敵な声。
ついついまだ話したくなるぐらいに、惹き付けられる声。
こんな声、初めて聴いた。


『おいっ、聞いてんのか?』
「はいっ。」

あたしったら、怒られてるのにぼーっとしてたみたい。

『だから!きっちり、バシッと断れよ。いいかっ!』

きっちり、バシッとって・・プクク・・・・って、笑っちゃった。

『てめぇ、何笑ってんだっ。』
「ごっ、ごめんなさい。わかりました。きっちりバシッと断ります。」
『よしっ。』

よしって・・・プププ・・・。
怒られてるのに、どうしてか笑いが止まらないの。
変なの。


『てめっ、また笑いやがったな!』
「ひゃっ、違います。すごいなって感動して!」
『何がだよ。』
「そのはっきりした物言いが・・・。」

そうなんだよ。
あたしとは違って、びしっとばしっとはっきり言うところがすごくいい。
ちょっと憧れちゃう。
俺様口調なのが残念ではあるけど・・・。

『おめぇはグダグダしすぎなんだよ。』
「おっしゃる通りです。いつも反省してるんですけど・・。」

あれ・・変な流れ。
いつの間にか相手のトーンも少し落ち着いてきてる。

『つーか、嫌ならその場で断れよ。』
「はい。」

『好きでもねぇ男に誘われて食事行って何の意味があんだよ。時間の無駄だろ。』
「返す返すごもっともで・・・」

『くだらねぇことに費やす暇があったら、自分を磨け。』


・・・・・・っ!!

あれ、なんだろ。今、グサッときた。
この人の言葉、凄く的を得てて、優柔不断なあたしの背中を押してくれる。
大切なことは何なのか?
それをしっかり分かっている人・・そんな気がする。

すごい俺様なのに・・・・。


『おいっ、だから、聞いてんのかよっ!』

また怒ってるけど、やっぱり嫌な気分は全くしない。

「はい、聞いてます。」

『ん、じゃあな。』

やだっ。
相手の人が電話を切ろうとしてる。
なんだか、ちょっと物足りないっていうか、もう少し話したいのに・・あたし。


「あのっ、待って!」
『何だよ。』

「また、電話してもいいですか?・・・師匠。」
『はぁっ!?つーか、師匠ってなんだよっ。』

「だって、凄いですもん。師匠って呼んでもいいですか?」
『バカ言ってんじゃねーぞ。』


「あたし、いっつもグダグダ悩んじゃうから、
 師匠みたいになりたいです。
 大切なことをきちんと伝えられるようになりたいっ!」

『・・・・切るぞ。』

「ええーっ。お願いします・・・って・・・・」


____ツーツーツー


ありゃ・・・
電話はあっけなく切られちゃった。





***



「明日は早朝から衛星会議がありますので、こちらの資料の確認をお願いします。」
「分かった。」
「明朝は6時にお迎えに上がりますので。」
「早ぇな。」
「ですので、今日はもうご帰宅されても構いません。資料はご自宅で目を通していただければ。」

昨日の会食を少しは申し訳ねぇとでも思っているのか、今日の西田は珍しく俺のケツを叩かねぇ。
けど、それはそれで焦る自分もいる。

ビジネスで女と繋がろうなんて微塵も思わねぇ。
政略結婚なんて絶対にあり得ねぇ。
だが、その方針を貫くためには、自分自身が強くならねぇと。

アメリカの大学をスキップで3年で卒業し、MBAを取得した俺は半年前に帰国した。
今は自分の家が経営権を握る、道明寺ホールディングスの専務だ。
アメリカでは学生時代からビジネスの世界に足を踏み入れ、それなりの成果は上げてきた。
けど、まだまだだ。
もっと頑張らねぇと。


「もうすこしここで仕事していくから。お前は先に帰れ。」

そんな言葉が出たのも、もっと己を磨かなければと思うからだ。
それに、俺は早い時間に仕事が終わったところで仕事の他にすることもねぇし、体を休めろと言われてもすぐに眠れる体質でもねぇ。
今よりもハードな生活をしていた時には、睡眠薬を常用していたぐらいだ。

「畏まりました。プライベートルームにお食事を用意しましょうか?」
「いや、いい。」

飯なんて一食や二食抜いてもなんてことねぇし。

「では、お言葉に甘えてお先に失礼いたします。」
「ああ。」



西田が出て行った執務室で、俺は明日の衛星会議の資料を読み始めた。

一通り読み終えた時間はちょうど10時。
昨日、あの変な女から電話がかかってきた時間だ。

あの女、俺のこと『師匠』とか呼びやがって。
バカにしてんのか?
けど、なんか違うような気がするんだよな。
あいつの声は不思議と嫌味がなかった。

俺みてぇになりてぇって?
女に興味もなく、仕事三昧の俺みてぇに?

まぁ、俺はあれこれ悩むような性格じゃねーけどな。
それが、あの優柔不断女には新鮮だったということか。
つっても、あいつが俺みたいになれる訳ねーだろとツッコミてぇが。

しかし、間違い電話だとは言え、女とあれほどしゃべったことってあったか?
いきなり俺に向かって、『あなたとは付き合えません』とか言ったかと思えば、最後には『師匠』呼ばわりだ。
面白れぇ女だったな。
コロコロと転がる鈴の音のような笑い方。
高飛車な感じは一切なくて、ずっと聞いていたくなるような不思議な声。
何があの女のツボに入ったのかは分かんねぇけど、あの女の笑い声を聞くと俺も楽しくなった。
ホント面白れぇ。あんな女初めてだ。


って、だからって、なんだっつーのっ!
師匠なんて冗談じゃねぇ。
俺はあの女とタラタラ電話してるほど暇じぇねーんだよっ。
だから、最後に電話を切ってやった。
もう少し話してぇ・・って気持ちは捨てた・・はずだ。


ちっ。
自分が女のことなんか考えてることに一瞬寒気がして、
手元の資料をもう一度見直そうと手に取った時、

デスクの上の携帯が鳴った。
プライベートの携帯だ。


ぱっと手を伸ばし、携帯を取る。
ディスプレーも見ずに、けれど迷うことなく通話ボタンを押していた。



『・・・・師匠?』

右耳に聞こえてきた声にほっとする。
やっぱ、あいつだった。俺の勘は完璧だ。
しかし、いきなり師匠って、何だよ。
文句を言ってやろうと思ったのに、自分の口から出たのは別の言葉で、

「おぅ、ちゃんと断ったか?」
『はい。きちっとバシッと断りました。』

その返事を聞いて、何故だかにやける自分がいた。

「よくやった。」
『えへへ。ありがとうございます。』

昨日とは違って、予想外に穏やかな雰囲気の会話。
相手は知らねぇ女だってのに、肩の力が抜けていくような。
疲れが飛んでいくような感覚がして、電話を耳に当てながら目を閉じた。


『師匠、今日は怒らないんですか?』
「何が?」
『電話、また掛けたこと・・・』

俺は怒ってねぇ。
知らねぇ女から、夜10時に電話があったのに。
怒りよりも、ほっとした感情がある。
やっぱり、掛かってきた・・そんな満足感。

「怒ってねぇ。」
『良かったぁ。』

電話の向こうで、女が心底ほっとしたのが分かる。


「お前、こんな時間まで何してた?」

おいっ!
俺はなんでこんなことを聞いてるんだ?

『え?バイトだよ。』

「バイト?」
『うん。団子屋さん。』
「・・・・へぇ。」
『あ、今、バカにしたでしょ?
 おいしいんだからね、うちのお団子!
 そりゃ、家庭教師の方が割りはいいんだけどね。
 高校生の時からやってるからやめられないし、楽しいの。』

「家庭教師って、お前、社会人じゃねーの?」
『大学4年だよ。』
「ふーん。」

ってことは、もうすぐ就職か。

『4月から社会人になるから、団子屋さんはもうすぐ終わりなの。』


こいつの声が心地いい。
瞼がだんだんと重くなってきた。


『師匠、聞いてる?』

ああ・・・聞いてる。

『あのね。また困ったことがあったら電話してもいい?』

仕方ねぇな。
お前の声は悪くねぇから、許可してやってもいいぜ。


そんなことを思いながら、ゆっくりと立ち上がった俺は執務室のソファーにごろっと横になった。

やべ、眠ぃ・・・。


『じゃあ、また電話するね。』

「ああ。」

『よろしくね、師匠。』



_____ありえねぇ。

電話とはいえ、女と次の約束をした。

そして、その女の声を聞いていただけなのに、
あれほど眠ることが難しかったこの俺が、
簡単に眠りに落ちていくなんて・・・


この間違い電話が、俺の人生を変えていくなんて、
この時の俺は全く予想していなかったな。


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相変わらずの不定期更新でごめんなさい。
皆様からの応援に感謝です(*^^*)
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Comments 7

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Happyending  
こんばんは(*^^*) ②

つか●様
面白そうですか?良かった~。これ、ドン引きされそうで、本当に怖かった・・(;^_^A(なら、書くなよって話ですが・・汗)そんな夫婦の物語も落ち着いたら書きたいです。でも、あちらは少し長くなりそうで、体力溜まったら再スタートしたいなという感じです!しばらくは、こちらのTelephone loveにお付き合いくださいませ~(#^^#)

まり●様
そうなんですよね。顔を合わせなければ、相性抜群なんじゃないかな。出会ったら、つくしちゃんが素直でいられるのかどうか・・・(^^;)まずは、携帯で愛を育む?・・なんてそんなにうまくいくでしょうか?(笑)。お楽しみに(≧▽≦)!

ふぁ●様
私もスマホで打つの遅いです(涙)。いえいえ、ライムラグなんて。いつでもコメント嬉しいです!ありがとうございます。そして、そうでしたね。携帯の登録名考えなきゃ。どうしよっかなぁ(笑)。ちょっと今晩考えておこう!師匠は決まりかな?(≧▽≦)!


今日ももう、一日終わってしまった・・・。
明日は1話更新を目指します。
ゆっくりペースになりますが、また覗いてくださいね(*^^*)

2018/06/10 (Sun) 00:09 | EDIT | REPLY |   
Happyending  
こんばんは(*^^*)

いつもたくさんの応援をありがとうございます(*^^*)
不思議なお話でしょ?(笑)。私もですね、こんなお話を書くのはどうかと思うんですよ。けど、書きたくなってしまって・・(;^_^A こうして披露しちゃうのもどうかと思うのですが、お付き合いいただけると私も嬉しいです(笑)!

さてさて
じゅんこ様
わぁ!お久しぶりです。元気にされていますか?キュンって来ました?それは良かったです。思い切ってアップした甲斐がありました(笑)。ほんと声って大事ですよね。声がいいとカッコよさ2割増しな気がします(笑)。一緒に楽しんで頂けるとうれしいです(≧▽≦)!

スリ●様
そうなんですよ、「先生」じゃなくて、「師匠」!(笑)。総二郎じゃありませんよ・・ププッ。そして、そうそう、つくしちゃんの就職先はそこしかないと考えてますよ!中編で終わらせてやる~っ!!けど、大概長くなりがちな私のお話、本当に中編で収まるのか心配です。って、中編って何話ぐらいのことを言うんでしょうね・・・(;'∀')

花●様
楽しんで頂けています?(笑)良かった、良かった!私も、昔は夜中電話とかしたなぁ。電話は最強アイテムでしたよね~。懐かしや~(笑)。今では、少しでも短く終わらせようと必死(^^;) あの頃は時間も余裕もあったんだろうなぁ・・なーんてね。

2018/06/09 (Sat) 23:58 | EDIT | REPLY |   
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2018/06/09 (Sat) 22:58 | EDIT | REPLY |   
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2018/06/09 (Sat) 16:54 | EDIT | REPLY |   
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2018/06/09 (Sat) 05:54 | EDIT | REPLY |   
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2018/06/08 (Fri) 22:58 | EDIT | REPLY |   
じゅんこ  
こんばんは✨

更新ありがとうございます☆
なんだか新鮮でキュンってきました💗
なんだかこんな出会いもあるんだなぁ…とウキウキします。
声って大事ですよね(^^)相性もあるのかな。
ぅわー楽しみです✨
ゆっくり待ってます!!

2018/06/08 (Fri) 21:22 | EDIT | REPLY |   

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