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Happyending

Happyending

「ちょっと待て、落ち着け。」
「ん?落ち着いてるよ?」

ガラガラとスーツケースを引きながら歩く牧野を追いかけていく。

「何でいきなり香港なんだよ。なんか不満でもあんのか?」
「え?不満?そんなのないよ?」

いきなり相談もせずに香港とか、
俺を捨てて、家出でもすんのかと心配になった。

それでも、ゴロゴロゴロと寝室へ入っていく時には、何故か扉を開いて支えてやっていた。

「ありがと。」
「じゃあ、何でだよっ!?」

牧野がでっけぇ瞳を俺に向ける。
キラキラと輝く、俺が大好きな黒曜石の瞳だ。

「あのね。香港メープルに隣接するショッピングモールのオープニングが明日なんだって。」
「あー、そうだったかもな。」
「それで、あたしにも是非いらっしゃいって。」
「は?誰が?」
「メープル本社の担当の人。」
「担当者って誰だ?」
「え?えっと、カエデさん。」

「楓って・・・・」
「4月からずっとやり取りしていた人だよ。」


メープル本部のカエデ。
そんな女、恐らく一人しかいねぇ。
西田が言っていたじゃねーか。ババァも牧野を気に入ってると。
つまりババァが、直接牧野とメールのやり取りをしていたってことだ。

........こいつは、気づいてねぇのか?

ちらっと牧野を見れば動揺する様子も見られねぇ。
このノホホンとした様子を見ればそうなんだろう。
それもそうかもしれねぇな。
会社の社長が身分も名乗らずにメールをやり取りするだなんて、誰が想像できるかよ。

・・・迂闊だった。
交際をオープンにした今、
対外的な面では完璧に牧野を守っていたつもりだったが、
まさか、こうも早くババァが直接乗り出してくるとは。


「信用できんのかよ。」
「何のこと?」
「その........カエデって奴だよ。」
「どうして?カエデさん、優しいよ。秘書課に移った時も頑張りなさいってメールくれたの。嬉しかったもん。」

ババァが優しい・・・?
このカエデはマジで違う人間なのか?

「でも厳しい人でもある。何度も細かいところまで考えさせられた。社会人になった今、結果を出しなさいって。過程を評価してあげられるのは学生までよって。」

やっぱ、ババァだ。
新入社員にこんなことを言うのは、ババァしか考えらんねぇ。
それを飄々と受け入れているこいつも、ある意味すげぇけど。


「お前は俺の秘書だ。俺の許可なく行ける訳ねぇだろ?」
「でも、カエデさんがそちらには話を通しておきますからって。」

くそっ。ヤラレタ。
流石はババァだ。有無を言わせずこいつを香港に連れ出す気だ。
・・・・って、感心してる場合じゃねーぞっ。

ババァの意図が読めねぇ。
ババァは恐らく俺とこいつの関係まで分かってる。
その上で、こいつを香港に呼び出したんだ。
嫌な予感がするのは気のせいか?


「ダメだ。行くな。」
「えっ.....何で?」
「海外なんて、一人じゃ危ねぇだろ?」

俺はこっちで煮詰めているプロジェクトの会議が連続していて、すぐには日本を動けねぇ。
そんな時に、牧野一人をババァの元に送り込めるかっ!!

「そりゃ、初海外だけど・・・。」
「初・・・?」

そういえば、こいつは留学どころか、海外旅行の経験もないんだった。
ますます危険じゃねーかっ!!

「Eチケットはもう頂いてるの。でも、あれ.....チェックインってどうやるのかなぁ。調べておかなきゃ!」
「俺もいつもプライベートジェットだからな。オンラインでチェックインできるはずだけど、まぁ、控えを持っていけばカウンターで・・・・・って、おいっ!!」

俺の声なんて聞いちゃいねぇ。
牧野はふんふーん・・と鼻歌を歌いながら、持ち物の準備を始めてる。

「すごく楽しみ。」
「そんなに嬉しいのかよ、出張が.....。」

俺と離れるのに?

「だって、少しだけだけど自分が提案したものがカタチになっているんだよ?この目で見たいって思うのはおかしいこと?」

そりゃあ.........行きたいのは分かる。
自分のした仕事の完成形は見ておくべきだし、牧野自身見届けたい気持ちもあるだろう。
だが、今回はそれだけが目的とは思えねぇんだ。
ババァの策略が読めねぇ。
だから・・・・

「なぁ.....近いうちに必ず俺が連れて行くから、今回は我慢してくれねぇか?」
「えーっ!?」
「一人で行かせるのは心配なんだ。」
「師匠?どうしたの?なんか、おかしい.....。」

俺ともあろうもんが、次の言葉が出てこねぇ。

何と説明したらいいのか。
お前がメールでやり取りしてるのは、恐らくは俺の母親だと伝えればいいのか?
そうすれば、こいつは行くのを止めるのか?
いや、止めやしねぇだろう・・・。
そりゃ、一瞬は迷うだろうが、きっと行く。
相手が誰であろうが、こいつは自分の意志を曲げねぇだろう。
こいつは何も悪ぃことなんかしてねぇんだから、尚更だ。
俺に止める権利はねぇ。


「...........師匠は、あたしのこと信用してないの?」
「は?」
「一人じゃ何にもできない女だと思ってる?」
「いや......そんなことはねぇよ。」

「あたしも、ちゃんと頑張りたい。師匠の隣にいても笑われないように、もっと努力したいの。」
「牧野......。」

「行ってもいい?」

俺を見上げるでっけぇ瞳。
ウルウルして、ずりぃんだ。
俺の決心を鈍らせる。


はぁ.........

結局俺は、こいつのお願いに折れるしかねぇんだ。




「ちょっと、こっち来い。」
「ん?」

床に座り込んでトランクを開いていた牧野が、俺を見上げて小首を傾げた。
可愛い・・・
こんな時でもドキドキするなんて、俺はどんだけこいつに惚れてんだ。

牧野を一度立ち上がらせてから、ベッドサイドにもう一度座らせた。
俺もその隣に座って彼女の手を握る。

「香港に行ってもいい。」
「師匠?」
「ただし........」

俺はポケットから小箱を取り出した。
こんな形で渡すつもりじゃなかったが、今渡さなきゃダメだと俺の本能がガンガンに訴えるから。

その箱をゆっくりと開けた。

「これ........?」
「俺とお前の。」
「あたし達の?」

そのうちの小さな方をつまみ、引き出した。
二人の絆を深めると言われるパワーストーン。
青白く光るブルーダイヤモンドが嵌め込まれたリング。

それを、すーっと牧野の左手、薬指に滑らせた。

白くて細い指に輝く小さなダイヤモンド。
キラキラと輝いて、俺達に未来を約束してくれる。
俺が・・カタチにしたいモノ。


「この先の未来まで、ずっと一緒だ。」

「師匠......」

驚きに染まる大きな瞳。


「受け取ってくれるだろ?」


その瞳が涙で揺らぐ。
それでも、

「うん。」

涙をいっぱいに溜めながら、俺を見上げて笑ってくれる、
俺の......俺だけの女。



ケースの中に残された対のリングに視線を落としてから、もう一度牧野に視線を戻すと、目をぱちくりとさせた牧野が、ああっ...と俺の意図に気付いた。

その細い指でリングをつまみ、
反対の手で俺の左手をとって、

「ふふっ、結婚式みたい」

そう言いながら、冷たいリングを滑らせた。

ヒンヤリとしたリングはすぐに俺の体温に馴染んでいく。
初めて牧野の声を聞いた時のように。
俺に必要不可欠なものになっていく。



____パフンッ

「きゃっ」


もう我慢できなくて、
いきなり牧野をベッドに押し倒した。


「俺からは絶対に逃げらんねぇから。」
「逃げないよ。」

「その言葉、忘れんなよ。何があっても。」


ババァが何と言ったって、俺はこいつを手放さない。
こいつにもその覚悟をして欲しかった。
絶対に俺の手を離すな。


唇を合わせて、深いキスへと誘導する。

「んん......ふっ......んっ........ししょ......」

言いたいことは分かってる。
明日の準備が残ってんだろ?
だけど今は、俺のことだけを考えて欲しい。
絶対に忘れられねぇぐらいに熱く抱きたい。


「だっ......めぇ。あしたの、支度........」

ほらな。

「あとで手伝ってやる。」
「あっ......ん........」

彼女の可愛い口を、もう一度キスで塞いだ。


牧野の温かい体に酔いしれて、
深く沈みこみ、じっくりとナカを味わう。

「つかさっ......もうっ......お願い.....っ」

初めて彼女に懇願されて舞い上がった。

二人同時に頂点まで駆け上り、
二人同時に、同じ景色を見たはずだ。

どこまでも続く、俺達の幸せの道。
それは、永遠に続いていた。







ペチッ・・・
牧野のローブに手を突っ込んで胸を揉んだら叩かれた。

「もうもうもうっ!!」
「何だよ、すげぇ良かっただろ?」
「そーいうことじゃないのっ!」
「そーいうことだろ?」

互いにバスローブ姿のまま、俺は牧野の背中にへばりついて、彼女の旅支度を手伝っている。
(いや、邪魔してんのか?行っていいとは言ったものの、どこかでやっぱ行かせたくねぇ。)

寒かったらどうしよう、暑かったらどうしよう、と
あれこれと服を詰め込んでいる牧野。

「おいっ、何泊行くつもりだよっ!」
「あれ?そういえば何日だろ?」
「ホテルはとってんのか?」
「あ、とってない......かも。」
「はぁ.....大丈夫かよ。」

こいつの無防備さに眩暈がしそうだ。




俺は立ち上がってベッドサイドの携帯を手に取り、
耳に当てながらリビングに向かう。
もちろん相手は・・・・


「西田。お前、知ってたんだろ?」
「いえ、今日初めて伺いました。」
「何ですぐに言わねーんだよっ!」
「社長命令でして........」

「くそっ。あいつは、何も知らねぇんだな?」
「気づいていないようです。」

洗濯はできるのかな~なんて、どこまでものんきな牧野の後ろ姿を見つめ溜息を吐いた。

「あいつは無防備すぎる。ホテルもとってねぇ。」
「ホテルは、香港メープルを用意していると社長秘書より連絡がありました。」

単なる新入社員相手にもかかわらず、きちんと航空券とホテルの手配はされている。
少なくとも、適当な対応はされてねぇ。
ババァは一体何を考えてる?


「......お前、分かってんだろーな。」
「明日の夜には間に合うようにスケジュールを調整しております。」
「よし。出来るだけ早く行くぞ。」

こっちの仕事は完璧に終わらせていく。
その上で、ババァの懐に乗り込んでやる。



決戦は、
______明日だ。




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Comments 7

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Happyending  
こんばんは(*^^*) ②

さと●様
そうそう!親子ですよね~(≧▽≦) 司は電話で、楓さんはメールで、出会う前からつくしに興味深々(笑)!え~??そんなつもりはなかったですよ~(*^^*) ただ、Rって、私の場合いつも初めて設定だからなかなか苦しいんですよね。もういい加減初めてを書くのは嫌だ・・(笑)。以前のRとか絶対に読み返しませんが・・・絶対似たり寄ったりだ・・(;'∀') さらっとRとかは苦ではないです( ´艸`) 

Lu●様
あはっ。飛び込んでいく予定ですが、間に合うかなぁ・・(笑)

ま●様
そうだったんですね~(*^^*)おめでとうございます(≧▽≦)!!もしかして・・と勝手に想像したりもしてましたが(←本当に勝手でスミマセン)、そうかそうかぁ。でも、今は辛いですよね。お察しいたします。というか、私自身もかなりきつかったです。もう言葉では言い表せなかった。もう二度とゴメンだ~!!と思ったのに、喉元過ぎれば・・です。とは言っても今はそんな先の事分かるかいっ!って感じだと思いますが、とにかく口にできるものだけ口にして、乗り切ってくださいね(#^^#) 応援しています!!また、気分転換に遊びに来てくださいね~。

ぴ●様
そろそろ終わりますよ~。えへへ。もうちょっとお付き合いください(*^^*)

昨日は疲れがたまったのか頭が痛くて・・今朝からだいぶマシです。
書きかけていたお話、今書いたので、21時に予約しました~。ってあと1時間だけど(笑)。
まだあんまり進んでいませんが、もうすぐラストです!
最後までお付き合いいただけると嬉しいです☆彡

2018/08/22 (Wed) 19:58 | EDIT | REPLY |   
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2018/08/21 (Tue) 12:01 | EDIT | REPLY |   
Happyending  
こんばんは(*^^*)

いつもたくさんの応援をありがとうございます。
そしてついに香港へ・・なのですが、仕事が忙しくて今日はもう寝ます(笑)。頭が回らない(;^_^A
色々とやるべきことがあって続き少し間が空くかも・・ですが、もうだいぶ長いお話になっているのでなんとか終わらせるべく頑張ります!

さてさて、
ふぁ●様
絶対酔ってますよね?(笑)。坊ちゃんにそんなにつらい思いはさせられないです~( *´艸`) ラストはだいたい考えているのであとは繋がなきゃなんです!最後まで見守ってくださいね~(*^^*)

花●様
そろそろラストにしなきゃ、怒られそう(笑)。短編どころか、もう完璧に長編です( ;∀;)もうすぐ40話って、どうなんだ・・と頭を抱えたいです(;'∀') つくしちゃん、天然過ぎるんですけど、なんか可愛くって( *´艸`) 司もそんなところにメロメロなのかなぁなんて思っちゃいます(≧▽≦) 続き、もう少しお待ちください(*^^*)

スリ●様
楽しんで頂けて嬉しいです(≧▽≦) 確かに幸せがギュッと詰まってましたね~( *´艸`) さて、カエデさんはどう出るか?私もここはじっくり考えて書かねばです('◇')ゞ いや、実ははっきりとは考えてないんですよ(笑)。いつも書きながら考えるので。でもラストシーンは、頭に浮かんでます!( *´艸`)

あ●様
コメントいただいて、あ、そういうのもありかな・・と思いました。まだ書いてないから如何様にも変更可能なのでちょっと迷う・・・(笑)。でも、さすがにそれは無いかぁと思ってみたり。でもでも、それも面白そう( *´艸`)
今から寝ちゃいますが、ちょっと妄想の世界へ漂ってみます(*^^*) え?また暑くなるんですか?? もう勘弁して~ですね。やっと朝晩過ごしやすくなったのに・・・( ;∀;)

he●様
ご無沙汰しております。お元気ですか?こちらも朝は過ごしやすくなりました。日中はまだまだ暑いですが、一時期のことを思えば楽になりましたね~(*´▽`*) そうですね、香港でのつくしちゃんの立ち位置・・。もう少し考えてしっかり書きたいです!コメントありがとうございました(*^^*)


そんなわけで、出来るだけ早くとは思うのですが、いろいろと忙しくて・・・
続き、もう少しお待ちください(*^^*)

2018/08/20 (Mon) 23:13 | EDIT | REPLY |   
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2018/08/20 (Mon) 21:56 | EDIT | REPLY |   
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2018/08/20 (Mon) 10:50 | EDIT | REPLY |   
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2018/08/19 (Sun) 23:41 | EDIT | REPLY |   
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2018/08/19 (Sun) 23:08 | EDIT | REPLY |   

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