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Happyending

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あたしが師匠のために出来ること。
一緒にいるだけじゃ嫌。
守られるだけじゃなくて、あたしも師匠に何かを返したい。
彼を守れるだけの何かを手にしたい。
今すぐじゃなくてもいいの。
これから先、あたし達がずっと続いていくのなら、
少しずつ、彼に近づいていきたい。
そうじゃなきゃ、ダメだと思う。


左手の薬指にピッタリと納まったプラチナのリング。
ブルーダイヤモンドが並んだ綺麗なリングはあたしには不相応なものだ。
だけど、嬉しかった。
この先の未来を師匠が......ううん、司さんが約束してくれたから。
ずっと一緒にいようって言ってくれたから。

ふふっと自然と笑ってた。
この先の未来、ずっと彼と一緒にいられるかどうかは、
きっとあたし次第。
香港に行ったからってすぐに何かが変わるわけじゃないけど、
それでも一歩を踏み出したい。

だって、見えたんだもの。
あたしと彼の、幸せな未来が・・・・。





成田空港のチェックインカウンター。
あたしはこれから香港国際空港へ飛ぶ。

あたしを香港へ招待してくれたのは、NYメープル本社のカエデさん。
名前は和風だけど、メールの雰囲気は明らかに外国籍の人って感じで、ズバリ・バサリと豪快だった。アメリカと日本では文化が違うのね。歯に衣着せぬ物言いが、なんとなく師匠に似てた。それに、このメールのやり取りはとても勉強になった。完璧なビジネス英語、多角的に物事を捉える完璧な目線。あたしの提案のあいまいな部分を細かく指摘して回答を要求された。それは、この秘書課に移ってからもずっと続いていたの。
秘書課の仕事もやりがいはあるけれど、やっぱりこの仕事は特別だった。社会人になったあたしが、初めて個人で任された仕事だったから。



パスポートとか、何やら色々を、カウンターの綺麗なお姉さんが確認してる。

ちらっと左手を見ると、大切なペアリング。
この片割れは、今頃師匠の指で同じように輝いているはず。
そしてに手首には、以前に貰ったローズゴールドの丸い時計。
これ一つを身に着けるだけで、ぐっと気持ちが引き締まるの。


今朝、この時計着けているあたしをじーっと見つめる師匠の視線を、痛いぐらいに感じた。

「どうしたの?まだそんなに心配?」
「心配過ぎる。」
「ありゃ......」

誘拐事件があってから、師匠はめちゃくちゃ心配症になってる。

「携帯は携帯しなきゃ意味ねぇからな?」
「なんか、先生みたい。」
「何かあったらすぐに電話しろ。」
「パパみたいだね。」

「あー、行かせたくねぇ。」

そんな師匠は子供みたい・・・とは言えなかったけど、

「大丈夫だよ。」
「お前の大丈夫は信用なんねぇんだよっ。」
「うっ......。」

まぁ、前科があるから文句はいえない。

「俺も朝一から仕事が詰まってて、空港までは送って行けねぇんだ。」
「うん。大丈夫電車で行くから。」
「バカッ。そーいうところが心配なんだよっ。車用意してるから絶対に乗ってけ。」

身支度を整えたあたしを師匠がしっかりと抱きしめた。
それから、チュッとキスが降ってくる。
いつも通り、甘くて、優しいキス。

「行ってくるね。」
「あー、行かせたくねぇ。」

って最後まで渋ってる師匠と一緒に地下の駐車場に下りて、
待機していた黒い車に荷物を載せた。

背伸びして、いつまでも心配そうな師匠の左頬にキスをした。
目を見開いた後に嬉しそうに笑った彼とクスクスと微笑み合って、
あたしはマンションを出発した。








「牧野つくし様。」
「はいっ。」

急にカウンターのお姉さんに話しかけられて、
びっくりして、声が裏返っちゃった。

「申し訳ございません。ご予約の席にオーバーブッキングがございまして.....」
「オーバーブッキング!?」
「はい。大変申し訳ございませんが、ファーストクラスに空き席がございますので.....」
「ファーストっ!?いや、無理っ。無理です。お願いします、エコノミーでっ!!」
「お客様、落ち着かれてください。追加料金は発生いたしません。」
「........へ?」
「お手持ちの航空券をファーストクラスに無料でグレードアップしますので、どうかそちらへ移って頂けませんか?」
「え?うそ........これって、詐欺じゃないですよね?」

丁寧に対応してくれていたお姉さんの眉間にちょっとだけ皺が寄った。
心外って感じだ。

「こちらは正規カウンタ―ですので、そのようなことはございません。」

エコノミークラスから、ビジネスクラスを通り越して、ファーストクラスに。
初めての国際線がファーストクラスだなんてっ。

「ご変更で構いませんか?」
「はいっ。よろしくお願いします.....。」


あー、びっくり。
こんなことってあるんだなぁ。
師匠にも教えてあげたい。
電話したいけど、今は絶対に忙しいはず。
本当は声を聞きたいけど・・・・
あたしたちはLINEで繋がってはいない。
付き合ってこの数カ月、携帯メールもしたことがなかった。(仕事上PCへのメールのやり取りはあるんだけどね。)
何か二人で取り決めした訳じゃないんだけど、たぶん、二人とも、直接声を聞くことを一番大切にしているから。

でも、今日は特別。
あたしは初めての海外出張で、
師匠は呆れちゃうぐらいに心配性だから。
あたしは、師匠の携帯宛に初めてのメールを入れた。

『ちゃんと搭乗手続きできたよ。
 それでね、びっくりなことがあったの。
 ダブルブッキングでね。
 ファーストクラスにグレードアップされたの!!
 すごいラッキーでしょ?
 こんなことってあるんだねぇ。
 それだけなんだけど、師匠に伝えたくて。
 じゃあ・・・行ってきます。』



荷物を預けて、手荷物検査を受け、出国手続きを済ませると、
あたしはどこか座るところを探そうとウロウロした。
ファーストクラスのラウンジも使えるって言われたけど、それはちょっと・・・ね。
入るのも怖いし。
カフェにでも入って資料の確認をしようと辺りを見回すけれど、座れそうな席が空いていなかった。
どうしようかな、と考えていると、

「あれ?金子さんっ?!」

少し先に見覚えのある顔が見えたの。
誘拐事件の時に、あたしを救おうとして大けがをした金子さんが、空港内のオープンカフェに座ってた。
一度だけお見舞いに行ったけどそれっきりになっていたし、こんなところで知っている人に会えるなんて!と思わず駆け寄ってしまってから、金子さんの隣には綺麗な女性が見えてハッとする。

「牧野さん、お久しぶりです。」
「こんにちは。ごめんなさい......お邪魔しちゃったみたいですね。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。」
「ご旅行ですか?」

そう聞いたら、隣の綺麗な人が答えてくれた。

「実は新婚旅行なんです。」
「えっ!あっ、おめでとうございます!!」

それから、やけに深々と頭を下げて自己紹介をしてくれる。

「金子麻衣です。」
「牧野つくしです。以前に金子さんにお世話になったんです。」
「聞いています。私たちはこれから香港なんですが.......」
「香港ですかっ!?あたしもです。」
「まぁ、奇遇ですね。一緒にこちらでお茶でもいかがですか?」
「えっ?いいんですか??」
「ええ、どうぞどうぞ。」

と思わず同じテーブルに座ってしまったけど・・・
新婚夫婦の邪魔をしちゃうなんて、師匠に怒られそう。
そういえばあの時、金子さんのお見舞いに行くの師匠が止めたじゃない。
あたしったら・・・。

そう思ったんだけど、二人があまりにもフレンドリーだったから、ついつい一緒にテーブルを囲んでしまった。おしゃべりをしていたら、飛行機も同じらしい。宿泊先も同じ香港メープルらしく、行先も同じ。凄い偶然ですねって、ますます盛り上がった。
嬉しくなって、あれこれ話をしていたら、あっという間に時間が過ぎたようで、
急に金子さんが時計を見て、

「ファーストクラスは優先搭乗が始まりますね。」
「え?あたしは最後でもいいんですけど。」
「乗り遅れる方が問題ですから、行きましょう。」

おしゃべりに没頭していたあたしはすっかり時間を忘れていたみたい。
金子さんにちょっと強引に誘導されて、機内へ乗り込むことになった。
あたしの姿が消えるまで、金子さんと麻衣さんは手を振ってくれたんだ。


ファーストクラスは個室になっていて、びっくりするぐらいに豪華。
これならゆっくりできるし、確認したい資料も広げられる。
しかも、5時間のフライトなのに、フルコースみたいなお料理が順番に運ばれてきた。
地上でだって、こんな豪華な料理食べたことないかもっ。
「お肉かお魚か」って聞かれて、「お肉」って答えたら、「焼き加減は?」と聞き返されてびっくりしちゃった。機内で焼くの?そんな訳ないよねぇ?どうしてるんだろ?今度師匠に聞いてみよう。

最後のデザートまで、一つ一つ写真に撮って残しておく。
あとで師匠に見せてあげなきゃね。
ぷくくっ!!







***



「乗ったか?」
『はい。たった今、搭乗されました。』
「いいか。あいつはすぐきょときょとするから、まっすぐホテルまで送り届けろ。」
『承知しております。』

ピッと携帯を切った。
空港に配置したSPによると、牧野は到着した途端方向感覚がなくなり、迷子になったらしい。
ギリギリまで手を出すなと伝えていたが、目的の国際線カウンターまで30分もかかったそうだ。
頭は悪くねえはずなのに、あいつの方向感覚は一体どうなってるんだ。

朝から前倒しにして詰めまくっている会議の合間に何度も携帯をチェックするが、着信はない。
唯一あいつから届いたのは、『ファーストクラスにグレードアップされたの』と書かれたメール。
初めてあいつからもらった携帯へのメールは色気も何もねぇ。
寂しいとかなんとか、他に書くことねぇのかよ。
添付されていた写真は、空港での自撮り。
俺がいねぇのにはしゃぎやがって。
その後も金子を見つけて楽しんでいたみてぇだ。
飛行機に乗り遅れたらどーすんだ。
・・・ったく。


「西田。牧野には酒を出さないように伝えてあるんだろうな。」
「徹底しております。」
「メープルまであいつらに送らせろよ。」
「抜かりなく。」

牧野は俺があいつにSPをつけていることを知らない。
金子は以前からあいつにつけていたSPだが、あの誘拐事件の時ですら、俺についていたSPがたまたま助けてくれたんだと思ってる。
幸か不幸か、牧野は金子を信頼してるから、今回の警護を任せた。
顔を知られている分、堂々と近づけるってもんだ。
ま、偽装夫婦としてだけどな。
いくらSPといえども、男一人で牧野に近づける訳にはいかねぇ。
女の方は、以前姉ちゃんに付いていたSPだ。
もう二人、離れて警護をしている奴らがいる。
合計四人で、俺が到着するまで牧野を包囲する計画だ。


「今頃肉でも食ってっかな。」

あいつのことを考えるだけで口角が上がっちまう。

あいつは嫌がるかも知んねぇけど、
仕事だろーが何だろーが、
あいつを野放しになんか絶対にしねぇ。
それが俺の守り方だ。



「司様、次の会議のお時間です。」
「おぅ。速攻終わらせるぞ。」

俺はジャケットに腕を通し、席を立った。



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Comments 4

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Happyending  
こんばんは(◎_◎;)

いつもたくさんの応援をありがとうございます。
毎日ドタバタで、PCでゆっくりお話を考える時間が取れないんです( ;∀;)少し書いては止めて・・となるから、続きを書こうと思うとまた一からで時間が倍かかってる気がします。
そんなこんなで、更新ゆっくりですみません!
先ほど、38話を先にアップしました~。21時1分前に予約投稿(笑)。

さてさて、
花●様
金子さん、偽装夫婦になって任務遂行中です(笑)。そして、ゆっくり待っていただいてありがとうございます。でも、あとちょっとなのに~。早く終わらせたいよ~と本当に思います!あっという間に1週間が過ぎてちょっとショックですよ~。まだまだ暑いのに、8月ももう終わりだなんて、信じられません!!

あ●様
すごいっ!それは自慢ですね(≧▽≦)!!ツイッター、見ました。あのツーショットはメンズノンノに載ったイラストですね。私はお友達に送ってもらって買ってないですが(;^_^A ミニ漫画続き読みたいです~(≧▽≦) そして・・あ(;'∀')それ、覚えていらっしゃる??(笑)。えーっ、何も考えてないデス(;^_^A アセアセ・・・でも、ちょっとプレゼントもらっちゃったりしてるので、それをアップしたいのですが、まずこちらを終わらせたくて・・。とにかく、頑張ります(笑)!

スリ●様
そうです。もしかしたら、先に楓さんがつくしちゃんを捕まえたかもしれない( ´艸`) 司君も、楓さんも、二人ともつくしちゃんを気に入ってるんです。けれど、道明寺の嫁としてはどうでしょうか?この先も司君と一緒にいるために、二人にどんな道を進んでもらいましょうかね??頭の中ではほぼ決めています。あとは書くだけって感じですが、結構難しそう(;'∀') なんとかラストまで頑張ります!!

ま●様
師匠の影、出まくりです( ´艸`) そして、颯爽と仕事へ向かう司もまたカッコいい(≧▽≦)!! ほんとね~、似た者親子!爆笑です(≧▽≦) そして、楓さんもつくしちゃんの虜になってますよ・・プププ。ラストに向かって頑張りまーす!!

さて、家事やら仕事やら、地域の役やら、いろいろあって頭いっぱいですが、なんとか終わりにすべく少しずつですが進んでいきます。いつも応援本当に感謝です(*^^*)

2018/08/24 (Fri) 21:22 | EDIT | REPLY |   
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2018/08/22 (Wed) 21:42 | EDIT | REPLY |   
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2018/08/22 (Wed) 21:40 | EDIT | REPLY |   
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2018/08/22 (Wed) 21:39 | EDIT | REPLY |   

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