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Happyending

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なかなか更新できずにすみません。
『希望の光』も途中ですが、神尾先生のインスタを見て突然書きたくなったSSをアップします。
サラサラっと書いてしまいましたが、あの素敵なイラストからの雰囲気が伝わるといいのですが・・
***






夕刻のパリ。
俺は一人、白い息を吐きながら街頭を歩いていた。

年始の今日は、観光客向けの店も早々に店じまいを始めている。
1本中に入れば静かな路地が伸び、その石畳をコツコツと靴音を鳴らしながら、思い出すように歩を進めていた。

こんな寒い日にわざわざ一人歩きだなんて、いつもの俺なら絶対にしねぇ。
けど今日は、久しぶりにこの街を歩きたくなった。



年末はニューヨークで過ごし、今夜はフランス大統領主催のパーティーに呼ばれている。
パーティーは18時からだが、その前に予定されていた商談が先方の都合で急遽キャンセルになり、中途半端に時間が空いちまった。

こんなことなら、強引に牧野を連れて来るんだった。
そうしたら、誕生日を一緒に過ごしてやれなかったあいつと少しでも一緒にいられただろ?
ま、無理やり連れて来ようとしたって、素直についてくるような女じゃねぇんだけど。

クリスマスは辛うじて約束していたディナーに間に合った。
その翌朝には、俺はもうニューヨークに飛んでいた。
あいつも社会人3年目で、かなり重要な仕事を任されている。
年末ギリギリまで仕事だって言ってたし、そうそう長い休みがとれねぇってことも分かってる。
けどよ。あいつがこのパーティーのパートナーを引き受けてくれてたら、今、この時間を一緒に過ごすことができたんじゃねーのかよ。
この時間だけじゃねぇ。夜だってずっと一緒にいられたじゃねーか。

ったく、あの女。
手に入れたと思っても、いつも掌をすり抜ける。
欲しくて欲しくて堪らねぇのに、なかなか完全に俺の手に落ちてはこない。


はぁ・・・

2時間以上もの珍しいプライベートタイム。
ここが日本だったら、すぐにでも牧野の家に飛んで行くのに。
だが、ここには日本じゃねぇから、あいつには会えない。

それなら、ここで会える牧野に会いに行こうと思った。

俺の中の、思い出の牧野がいる、
7年前、二人の未来を誓ったあの場所に。
あの日の牧野に会いに。






寒ぃ...っ!

いつの間にか、雪まで降って来やがった。

「あんたはやっぱり赤が似合うね」なんてあいつが言うから、迷いなく選んだ赤のダブルコート。
そのコートの肩にも真っ白な雪がふわりと落ちてくる。

フワフワと舞う綿雪は、一度だけ一緒に行くことができた縁日で、あいつが美味そうに食っていた綿菓子に似ていた。

プッ.....。
この雪を見て牧野が綿菓子食ってる姿を思い出すなんて、俺も相当イカレてる。
一人でいたってあいつのことを考えれば自然と心が和む。
ホントに、あいつはすげぇ女だよ。
離れていたって、俺の心はあいつのもんだ。
あいつ以外、俺を満たしてくれる奴はいねぇ。



牧野と付き合って、もう8年だ。
約束の4年で日本に帰国した俺は、初めの1年はあいつが学生だったこともあり、それなりに恋人らしいデートの時間もとれていた。あいつが行きたいと言った縁日に行ったり、映画を見たり、あいつと並んで料理を作ったり、夜には抱き合って眠ったり。
だが今は、俺も道明寺HDの専務になり、あいつに会うための時間を取ることも難しくなっていた。
当然のことながら、社会人になった牧野と空いた時間を合わせるのは至難の業で。

会えない寂しさと焦りが募る。
っていうか、あいつは平気なのかよ。
クリスマスには辛うじて会えたけど、その前に会ったのなんて2カ月も前だったはずだ。
お前はそれでいいのかよ。

本当はあいつを旅行にだって連れて行きてぇし、あいつをもっと幸せにしやりてぇのに。
あいつだって、俺を幸せにするとか宣戦布告したくせに・・・
まさか忘れてんじゃねーだろーなっ!

俺の予定では、帰国したらすぐに結婚している筈だった。
そして、あいつをずっと傍に置いて、ニューヨークだってフランスだって、どこにだって連れて回るつもりだったんだ。
それなのに牧野のやつ・・・
まだ学生だとか、社会経験を積みてぇとか、なんだかんだと理由を付けては俺のプロポーズを断りやがって。


マジ、タチ悪ぃんだ。
俺が惚れてる女は、一筋縄じゃいかねぇ。
あの上目遣いでお願いされたら俺なんてイチコロだ。

あーくそっ!
俺からのプロポーズに微妙な顔をする女なんてお前ぐらいなんだぞ?
その辺分かってんのかよっ。

なんて文句も言いてぇけど、

___結局、惚れたもんが負け。

あいつのことが好きすぎて、俺はあいつに無理強いなんて出来ねぇ。





記憶を辿りながら、その記憶の中にある教会の前に立った。
ヨーロッパの教会には、地下にもう一つ同じ作りの礼拝堂が作られていることがある。
その教会にはうっすらと明かりが灯っていて、俺は地下の礼拝堂に足を進めた。

あの日。
海外にまで来て迷子になって、怪しい男に襲われて、殺されそうになってたバカ女。
あいつは俺に心配かけるのが趣味だとしか思えねぇ。
かといって守ろうとしても守られるだけじゃ嫌だとか言うし。

可愛くねぇーんだ。俺の恋人は。

けどな・・・


『あたし、ほんとにこんなにさびしいと思わなかった』
『一日一日がながくて』
『世界中の時計を早回ししたいくらい.......』


・・・・って、そう言ってたよなあいつ。

あの時の牧野は、すげぇ可愛かった。


あの時誓ったよな。
この地下の教会で。


____3年経ったら、ずっと一緒にいよう
  

俺にはあの約束だけが全てだってってのに、
お前は忘れちまったのかよ、二人の約束を・・・




牧野が背伸びをして俺にキスをくれたその場所で、あの日のあいつを思い出していた。
過去を振り返るのは趣味じゃねーが、突然できた時間に、あの時のあいつに会いたくなった。
あの時の牧野が俺のアメリカ時代を支えててくれていたからだ。


すっと目を閉じて、あの日の牧野を感じていた。
そこへ、

___コツン

と小さなヒールの音。

それから、

「道明寺?」

と彼女だけが呼ぶ、俺の呼び名が聞こえた。


目を開けて振り返れば、

相変わらずの薄着で駆け寄ってくる俺の最愛の女が、
パフンッと俺の胸に飛び込んできた。



「牧野っ!?」
「えへっ、びっくりした?」

「おまっ、なんでここにいる?」
「年末ギリギリまで働いたから、年始から1週間の冬休み。」
「・・って、そんな事言ってなかったじゃねーか。」
「だって内緒だったんだもん。」

「ってか、一人で来たのか?危ねぇだろ?なんかあったらどうすんだっ。」
「危ないって・・・あたし、知ってるんだからね。あんたがあたしにSP付けてること!」
「・・・・・・。」

あの日、男に殺されかけたあいつを見て、俺は速攻SPを手配した。
俺の大事な女なんだ。何かあってからじゃ遅ぇ。


バツが悪そうにする俺の顔を、でっかい瞳をキラキラさせた牧野が覗き込んでくる。
その姿を見ただけで、俺の心臓はバクバクだ。
もう、8年も付き合ってる恋人なのにな。

「あのね・・・ここだと思った。」
「ん?」
「道明寺がメープルから出掛けたって聞いて、ここだと思ったんだ。」

こいつは一体何が言いたい?

「あたしも会いたかったの。あの日のあたしと道明寺に。」
「......牧野?」

「あの日、約束したよね。覚えてる?」

俺が忘れる訳ねーだろ。
お前こそ、忘れてたんじゃねーのかよ。


牧野が俺の左手をとって、ゆっくりと祭壇の前に進んだ。
俺はこいつに連れられるがまま隣に並んだ。


すぅっと牧野が息を吸い込んで、

「神様......どうか、あたしに道明寺をください。」

しっかりと正面を見据え、こいつが言った。

「たくさん幸せにしますから、あたしを道明寺の奥さんにしてください。」



___それって・・・・



「おいっ!それって、プロポーズの返事じゃねーかっ!!」

それは、このクリスマスにした10回目のプロポーズの返事。


隣の牧野が満面の笑みを俺に向ける。
それは俺が一番好きなこいつの笑顔で・・・


「それはまず俺に言えっ!」
「あははっ!きゃーっ!!」


俺は牧野の腕を引き寄せて、こいつの小さな体を抱きしめた。
凍える様な寒さが一瞬にして消え失せた。
そして、体も心もポカポカと温かくなってくる。


「それって、結婚ってことだよな?間違ってねーよな?」
「うん。」
「仕事はどうすんだ?」
「んー?春からはあんたの秘書だって。」
「マジかっ!?」
「マジ.....ぷくくっ。」

「笑ってんじゃねーぞっ。」
俺がそう言えば、

「嬉しくないの?」
と、牧野が少し不安そうな顔をする。

「バーカ、嬉しいに決まってんだろ。もう逃がさねぇ。」
「逃げてないってば。」

「俺はお前を信用してねーからな。」
「あんた、それ酷い.....っ」
「それだけお前に惚れてんだよっ。いい加減俺を安心させろ。」

いい加減、俺の手に落ちてこい。
俺はお前以外、何も要らねぇんだから。


「たくさん待たせてごめんね。
 だけど、待っててくれてありがとう。
 あたし、ここで伝えたかったんだ。
 あんたに、ありがとうって。
 あたしのこと、ずっと好きでいてくれてありがとう。
 これからはあたしがあんたを幸せにするからね。」


3年どころか、もう7年も過ぎちまったけど・・・


「俺がお前を幸せにしてやる。」


いつか二人で将来を誓ったこの場所で、
あの日のように口づけを交わした。

俺たちは、この先もずっと一緒だ。




それから、俺のコートに牧野を入れ、
雪が降り続ける中を、傘もささずにメープルまで歩いた。
それでも、全く寒くねぇ。
それは、こいつと二人だから。
俺は、牧野を手に入れたから。


この冬のパリで、
俺の夢がやっと叶ったんだ。



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待ち合わせに来て欲しいのは・・・道明寺です(*´艸`*)
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Comments 11

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こんばんは(*^^*) ③

ふぁ●様
あはは。パーティーに間に合ったかどうか・・。2時間あったから、ギリギリ間に合ったと思います(笑)。つくしちゃんはパートナーも務める覚悟で来たはずです。ちゃんとドレスも持ってきたかなぁ。いやいや、そこは司が常に用意していそうな気もします(´艸`*) でも、パーティーどころじゃないかもですね。すぐにホテルに戻って熱ーい夜を過ごしたに違いありません(≧▽≦)!コメントありがとうございました(*^^*)

さと●様
プロポーズ10回断るつくしちゃん、ホント凄いですね(笑)。そりゃ、司も雪の中で寂しくもなるってもんです。でも最後はやっぱりつくしちゃんの登場!司を幸せにできるのはつくしちゃんしかいませんからね~(*^^*) 本当にイラストが素敵で、創作欲に駆られました。また覗いてくださいね~。コメントありがとうございました(*^^*)

ま●様
つくしちゃんに会えましたよ!やっぱり会えないと・・ですよね(≧▽≦) 原作のその後のイメージです。伝わって嬉しいです(*^^*) 拍手コメありがとうございました!

Lu●様
あはは!やっぱり坊ちゃんですよねっ!(*^^*)どんなに不機嫌でも!(笑)カフェで、坊ちゃんとつくしちゃんが待ち合わせしているところを目撃したいです(´艸`*) 拍手コメありがとうございました(*^^*)


さて~。ぼちぼちお話の続きを書きたいと思いますが、やっぱり時間がなくて・・。
希望の光もちょっと読み直さないと世界観を忘れてる・・(;^_^A
もう少しお待ちください~( ;∀;)

2018/10/21 (Sun) 00:57 | EDIT | REPLY |   
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こんばんは(*^^*) ②

まり●様
えへへ、楽しんで頂けて嬉しいです(≧▽≦) イラスト、素敵でしたよね~。もう道明寺最高!!って思いました。なんとなく寂しそうな道明寺に幸せをプレゼントしたくなって・・・。きっと今頃はメープルでイチャイチャしているに違いありません(笑)。コメントありがとうございました(*^^*)

花●様
ね~、つくしちゃんのプロポーズ返し、可愛かったですね( *´艸`) こういうのもいいかなぁと思ったんですよ~。照れ屋さんなつくしちゃんはきっと面と向かって返事はできないだろうな~なんて思いながら書いていました。いい年して乙女チック妄想炸裂ですよ(笑)!自分でもびっくりします(;'∀')でも、一緒に楽しんで頂けて嬉しいです(≧▽≦)!!

mi●様
うわぁ、過分な誉め言葉です(;^_^A でも嬉しい!ありがとうございます(*^^*) 原作のその後が一番緊張するんですよ。パラレルは原作を大切にしながらも自分で考えた世界を書いていますが、原作のその後は原作のキャラを崩さないようにと注意しているかな。原作はコメディなのに私はコメディは苦手なので困ります(;^_^A でも、楽しんで頂けて良かったです(≧▽≦)コメントありがとうございました(*^^*)

2018/10/21 (Sun) 00:47 | EDIT | REPLY |   
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こんばんは(*^^*) ①

いつもたくさんの応援をありがとうございます!
もう週末ですね~。時間が過ぎるのが早いです(;^_^A

このお話。あのイラストを見た時にすーっと頭に浮かんで来たんです。たぶん、神尾先生の中では二人はまだ遠恋中なんでしょうけれど、あの司は凄く大人っぽかったし、何となく憂いもあって、私の頭の中ではすでに社会人になっていました(笑)。1話ですが、自分の中ではとっても気に入ったお話になりました(´艸`*)

さてさて
じゅんこ様
こんばんは(*^^*)道明寺一択!(笑)。コメントしたんですね!でも、先生は類君でしたね~(笑)。こちらのつくしちゃんは10回も司からのプロポーズを断っていたりして・・でも、やっと覚悟を決めたようです(´艸`*) はい、ゆっくりペースですがまた書いていきますね~。

スリ●様
そうそう!つくしちゃんは初めからパリに行くつもりだったと思います。西田さんも知っていたはず。商談がキャンセルになったのは態とかも(´艸`*) だた予想外に司が街に出かけてしまいました。でも、目的地はつくしちゃんが一緒に行こうと思っていた教会で同じ。プロポーズの返事は将来を誓った場所で・・(´艸`*) 赤いコートの司君、本当に素敵でしたね~(*´▽`*)あれが似合うのは司君しかいませんね!!(笑)へへっ、コメントありがとうございました(*^^*)

椿●様
短編ですが、喜んで頂けて嬉しいです(≧▽≦)原作のその後は書くときに凄く緊張するのですが、このお話はすーっと頭の中に浮かんできました。神尾先生パワーですね(*^^*)原作のその後、もっと見たいなぁと思います。はい、無理せずやっていきますね。お気遣いありがとうございます(*^^*)

2018/10/21 (Sun) 00:31 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/19 (Fri) 18:53 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/17 (Wed) 00:25 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/16 (Tue) 10:20 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/16 (Tue) 09:28 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/16 (Tue) 06:06 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/16 (Tue) 05:59 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/16 (Tue) 05:56 | EDIT | REPLY |   
じゅんこ  
おはようございます✨

素敵なお話ありがとうございました💕
私も道明寺一択!って書いてしまいました😁
ほんと、つくしちゃん。あんまり司をいじめないであげてーー💦
また楽しみにしてますね!!!

2018/10/16 (Tue) 05:26 | EDIT | REPLY |   

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