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Happyending

Happyending

思い返せば、エステから出てきた時から、つくしの様子はどこかおかしかった。
フラフラと出てきて、なんていうか、焦点があってないような...。
俺が一番気に入っているスカイブルーのドレスは当然似合っていたが、心ここにあらずな様子が気になっていた。

姉ちゃんがリザーブした特別個室から夕陽を見ても、昨日のようにはしゃがなかった。
オードブルが出て来ても、じっと皿を見つめるだけで何も言わない。

明らかにおかしいだろ?

どうしたんだと聞いても、何も答えない。
一体何があったって言うんだよ。
何かを思い出したのか?
だからって、黙り込むようなことがあるのか?


トイレに行くというつくしを見送った。
すっげぇ心配だったけど、流石に付いて行くのはまずいだろ。
つくしが黙り込む理由を考えながらじっと待っていると、俺の携帯電話が鳴った。

SPのトップからだった。
あいつが事故った時を思い出し、一瞬背中が冷たくなった。
携帯の通話ボタンを押すと同時に、俺は席を立つ。

「何だっ。」
「つくし様にトラブルです!」

ドアを開けるとすぐに、階下につくしの後ろ姿が見えた。
つくしに向かい合う形で女が二人いる。

数メートル離れた位置に数名のSPが見え、そのうちの一人と目が合った。
小さく首を振った。

俺が行く。

階段を一気に駆け下りた。
その途中で俺が見たもの......


__バシッ!


「あんたのせいでパパの会社が、大変なことになったんだからっ!」


俺の目の前で、俺のつくしが女に殴られた。

信じられない光景に目を見開き、
その次の瞬間には怒りで体が震えた。

何があったのかは問題じゃねぇ。
どんな理由があろうとも、俺はこの女共を許さねぇ。
女だからと言って容赦はしない。


「てめぇっ!!」
「司さん、待って。」

つくしがさっと右手を出して、奴らに掴みかかろうとした俺を止めた。
どこまでも冷静なつくしの声。
つくしはじっと正面の、その女を見据えていた。


それから一気に右手を振り上げて・・・


__バチンッ!!


つくしが女を平手打ちした。


...........マジか?
それは俺の想定外の行動だった。
これまでにも悔しい思いをしたはずだ。
それでも、こいつはじっと耐え、上流階級のマナーってやつを学ぼうと必死になっていた。
そんなの、大事な事じゃねーのにな。


「お父様の会社が大変なら、どうしてあなたはこんなところにいるの?」

「うっ、うるさいっ!!」
「ちょっ......美也子っ、どうしたのよっ。」


美也子?
もしかして、あのパーティーに来てた相良建設の娘か?
そういやこんな女だった気もする。
つくしのことを鼻で笑い、俺の逆鱗に触れた女。
あの会社は、今回のプロジェクトから弾いたはずだ。
逆恨み?・・・・・つくしにか?


「あたしのことは何と言われたって構わない。だけど、司さんのことを馬鹿にするのは絶対に許さない!」


つくしがきっぱりと言い切った。

けど・・・・・俺?
俺がバカにされたからって、こいつはこんなに怒ってんのか?

肩の力が少しだけ抜けた。
だって、そうだろ?
俺がこんな女にコケにされるとでも?
見くびるなよ。


「つくし?」

周囲にはレストランとホテルの客が集まり始めていた。
そんな事にも気づいていないつくしの肩を抱き寄せて、そっと黒髪にキスをする。

「何があった?俺が馬鹿にされたのか?」

「......あたしのせいよ。でも、許せなかったの。あたしを選んだ司さんは見る目がないって。だから、司さんの会社の株も下がるって.....。」

つくしはギュッと両手を握りしめたまま、じっと正面を見据えている。
こんなに興奮して怒ってるつくしを見るのは初めてだった。
なのに、その横顔が綺麗だとか思う俺は、どっかおかしいのか?


「見る目がないって?へぇ......。」

固く握られたつくしの手を開き、俺の手を重ねる。
恋人繋ぎをしながら、目の前の女共を睨んだ。
いや、半分笑っていたか?


「ひっ!.....ち、違います!私じゃありませんっ。」
「...........あっ...........私..........は..........」


弁解など聞く気はない。
胸ポケットの携帯を探った。
日本は今、何時だ?でも、ま、仕方ねぇか。
あいつも数日ゆっくりしたんだろう。

携帯を耳元に当てると同時に相手が出た。

「西田......あぁ、悪い。急用だ。相良建設との今後一切の取引を中止する。うちの系列会社との取引も含め全てだ。すぐに通達を出せ。あ?......理由?」

道明寺に睨まれてまで相良と組む会社など、実質ゼロだろう。
俺は、女に視線を移した。
これが最後だ。

「どうやら、相良には俺の失脚を狙ってる奴がいるらしい。
 大問題だろ?」

何があったのかは知らねぇけどな。
それはこの際どうでもいい。

“招致致しました”との返事を受けて、俺はゆっくりと携帯を切った。


「ち......違います.........。」
「何が?」
「道明寺様をしっ、失脚だなんて...。ただ、奥様が.....」
「妻が、何か?」
「あっ......」

クッ......!今頃失言に気付いたか?
つくしを馬鹿にするような発言をした相良建設はプロジェクトから外したってのに、今回は危害まで加えた。
俺がそう簡単に許す訳ねーだろ。
俺自身のことなんてどーでもいいんだ。
だが、妻を侮辱した責任はしっかり取ってもらう。

放心している女どもを尻目に、つくしを連れてその場を離れようとした時、それまでポカンと状況を見守っていたつくしが、急に我に返ったように焦り出した。


「ま、待って.....司さん。でもね、お相子なの。あたしもこの人を叩いちゃったから。」
「侮辱されて、先に手を出されたんだ。当然だろ?」
「でも...でもね。やっぱり、殴るのはダメだよね......?」

あんなに怒ってたくせに、今度は自分も悪いんだという。
俺の下した制裁は、つくしが望んでいるものではない様だ。
けどな。俺自身が許せねーんだよ。
こればかりは、そんな上目遣いをされてもダメだ。

「司さん......」
「撤回はしない。」
「でもっ!」
「どんな理由があったとしても、俺は、自分の妻が殴られて、平気でいられるような男じゃない。」

つくしがはっと息を呑み、
俺は、打たれたつくしの左頬に触れた。


「痛いか?」
「平気。」
「......プッ。お前、案外手が早いんだな。」
「そうみたい........呆れた?」
「いや?」

お前が右手を振り上げた瞬間、
止めようと思えば止められたんだ。
けど、俺は止めなかった。
むしろその姿にドキッとして、思わず見惚れてた。
やっぱ、俺はおかしいのかもな。
急に姉ちゃんから飛び蹴り食らってた昔の記憶が脳裏を過った。

「クッ......!」

つくしがむやみに暴力を振るうとは思っていないが、
たぶん俺は、この先こいつが何をしても許しちまう。

しかも、俺の為に手を上げたとか......
感動もんだと思う俺は、やっぱイカレてんのか?

「もうっ、また笑うーっ。」
「ワリ」

もうもうっ、とか言いながら、つくしが俺の胸を叩く。
俺の視界の端では、呆然とした女共がホテルスタッフに連れられて行く。
ここは、姉ちゃんとこのホテルなんだ。
つくしを殴っといて、ここにいられる訳がねぇ。

奴らがつくしの視界に入らないように、俺は立ち位置を変えた。



「あたしのこと......嫌いになった?」
「何で?」
「記憶をなくす前のあたしは、もっとお淑やかで、司さんに相応しい奥さんになろうと頑張ってたんでしょ?なのに、あたしは......。」
「記憶があろうがなかろうが、つくしはつくしだろ。俺はどんなお前でもいいって言っただろ?いい加減信じてくれよ。」

日本でも何度も伝えた言葉だ。
頑固なお前は、なかなか素直に受け入れてはくれなかったが。

どんなお前でもいい。
俺に合わせる必要なんてない。
自分が思う通りに自由にやればいいんだ。
そのためにはどんな協力だってする。
それ位の度量は持ち合わせてる。


「花嫁修業とか.....無理かも知れない。」
「そもそも、俺はやれなんて一言も言ってない。」

「迷惑かけるよ、これからも。」
「それはねぇな。つーか、もっと迷惑かけられて―。お前からなら。」

「狂暴だし.....」
「大丈夫だ。狂暴には慣れてる。」

つくしがきょとんと首を傾げたが、すぐに真剣な顔に戻った。
思いつめたような眼差し。

「それに......」
「何だよ。」
「あたし.....司さんが思ってるような女じゃないかも知れないよ?」
「は?」

「ふ......二股かけたりとか......」
「はぁ?誰が?」
「あたしが......え、営業の人と.....つきあってたって、あの人が言ってた。あたし、違うと思うんだけど.....。でも、やっぱり記憶がないし。もしも.......、もしも、あたし、悪い女だったらどうしようっ!!」

つくしが最後には絶望的な表情で、俺のジャケットを掴んだ。


・・・・ブッ

はぁ.....一体何を言い出すのかと思えば。
けどまぁ、真面目に悩んでるんだろうな......こいつは。


デカい瞳に涙を溜めて俺を見上げる、愛しい女。
何を言われたのか、何となく想像がついた。
あの男のことか......。
あの男はマジだっただろうが、付き合ってねぇし。
そもそも、その男からこいつをガードするために暗躍してたのは俺だ。
確か西田が大阪支社に送ったんじゃなかったか?


けど、もしも.....
もしも、こいつに俺の他に男がいたら......
それでもきっと、俺はこいつと別れはしないだろう。
もしも、こいつが俺から逃げようとしても、どこまででも追いかける。
相手男を殺して、こいつを俺しか入れない部屋に閉じ込めて、一生俺だけのものに......

って、俺はやっぱ、こいつに狂ってる。
けど、信じてるんだ。

こいつは、俺だけの女で、
俺の為に生まれてきた女なんだって。

そんな女に巡り合えた俺は、幸せだ。
だから・・・


___パンッ


「ひゃっ、いたっ。」


俺はつくしの両方の頬っぺたをパチンと叩いた。
そのままつくしの顔を覗き込む。


「自分を信じろよ。」

「え?」

「記憶がなくたって、お前はお前だ。
 俺が愛してる女なんだ。
 最高の女に決まってるだろ?」

「司さん.....」


それから、耳元で囁いてやった。
こいつにしか聞かせない、甘い声で。


「でも......お前は案外悪女かもな。
 俺を虜にして離さない。
 ベッドの中とか、最高だ。」


それは俺の本心で、揶揄ったつもり何て微塵もねぇのに、
つくしは急に顔を真っ赤にして怒り出した。


「あっ、あたし、悪女じゃないっ!」
「バーカ、自分で言ったんだろーが。」
「でも、違うって思ってたもんっ!」
「別に俺はどっちでもいい。」


お前が、悪女だろーが、善女だろーが。
関係ねーよ。
俺の隣にいるのがお前であればどっちでもいい。



このレストランに来た時の、浮かない様子のつくしはもういなかった。
目の前にいるのは、怒ったり、泣いたり、笑ったり、いつも表情がクルクルと変わって忙しい、俺の大好きなつくしだ。

そして、俺が知っているよりも、少しだけ幼い。
記憶が完全でない分、余計なしがらみがないからか、自分の想いを隠さず、素直に伝えてくる。

たぶんそれは、いつもの優しく我慢強いつくしの奥底に隠れている、彼女の本来の姿だ。


けど俺は、どんなお前でも好きだ。


「だからずっと一緒にいろよ。」

「......うん。」


つくしが安心したように、嬉しそうに笑った。
俺の背中に手を回し、少しだけ背伸びをする。
つくしからキスを強請るなんて、珍しい。


周囲では、客が目を丸くして俺達を見てる。
つくしはさっぱり気付いていないが、それでいい。
教えてやればいいんだ。
俺たちがどれだけ愛し合ってるかってことを、
世界中の奴らに。


つくしの背中を支え、見せつけるようにキスをした。
何度も、何度も・・・


彼女の瞳が潤み、小刻みに震え、
やがて全身の力が抜け落ちるまで、
俺はその柔らかい唇を離さなかった。




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Comments 3

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Happyending  
こんばんは(*^^*)

いつもたくさんの応援をありがとうございます(*^^*)
記憶のないつくしちゃん、なんだか大変なことになっちゃった...笑。
ここまで地位がある人だなんて思っていなかったようです(;^_^A
戸惑っただろうなぁ...ごめんよ(;・∀・)

さてさて、
スリ●様
つくしちゃんの前で制裁しちゃいましたよ?(笑)。本来なら陰で抹殺と行きたいところでしたが、もろ目撃しちゃいましたからね~。その場を適当に取り繕うことなんて司には出来ません!(笑)。ありのままの・・・本当にそうですね。ありのままのつくしちゃんでいいんですよね!記憶を取り戻したつくしちゃんに伝えてあげたいですね~(*^^*)

花●様
そうそう、そうなんです。付き合ってすぐに婚約して...じっくり話し合う時間がないままに結婚。こんな一面もあるってことを知って、案外司嬉しかったと思います(*^^*) 椿お姉さんで慣れてますしね( *´艸`) 天然なつくしちゃんに振り回され、こんなつくしちゃんも可愛くて.....ますます好きになっちゃうだろうな。結局、どんなつくしちゃんでも司は大好きなんだよーって思います(*^^*)

しかし、このお話は一体どこへ行こうとしているのか...(;'∀')?
そろそろ本当のHappyendに持っていきたいな~と思います。
ではでは、また、続きで(*^^*)!

2019/01/11 (Fri) 22:06 | EDIT | REPLY |   
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2019/01/11 (Fri) 09:36 | EDIT | REPLY |   
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2019/01/11 (Fri) 07:36 | EDIT | REPLY |   

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