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Happyending

Happyending

気が付けば、あたしは昨日と同じスイートルームにいた。
司さんにキスされて、頭がぼーっとしてしている間にベッドルームに運ばれていたみたい。
司さんが氷を包んで持ってきて、『ごめんな』って、あたしの左頬に当ててくれた。

彼の瞳が優しくて、この人に甘えるのは心地よくて、
ふにゃって蕩けそうになっちゃったけど・・・
でも、あれ?って思った。

ごめん?
ごめんって.....何が『ごめん』なんだろう?
あの女の人が言ってたこと?
あたしはド庶民だって、陰口を言われたこと?
でもそれって、司さんが謝ることじゃない。

あたしのせいで司さんが馬鹿にされるのが嫌だった。
でも、あたしの怒りはそれだけでもなかった。
あたしは、自分を否定するつもりなんてない。
記憶の中のあたしは、お金は無かったけど温かい家庭で育っていた。
頼りないパパで、見栄っ張りなママで、ちょっと気弱な弟だけど、そんな家族を恥ずかしいだなんて思ったことはないよ。
それにあたしだって、恥ずかしい生き方なんてしてないはず。

でも・・・・ああ、そっか。
あんなことを言われちゃうのは、やっぱりあたしがお金持ちの司さんと結婚したからなんだ。
好きって気持ちだけじゃ、認めてくれない人もいるんだね。
だから、この人は、『ごめん』って言ってるんだ。
司さんのせいじゃないのに。


「あのさ.....謝らないで。」
「は?」
「司さんは悪くないでしょ?もちろん、あたしだって悪くない。」
「........?」
「あんなの平気だよ。あたし、一人で戦えるよ。あたし、そんなに弱くない。だから、あんまり心配しないで。」

理不尽なことを言われて、ムカッてしたけど、よく考えたらあんなの大したことじゃない。
司さんのことまで悪く言われたのは許せないけど、だからって、司さんがあたしに謝る必要なんてない。

「一人でとか言うな。あんな奴ら、俺がいくらでも.....」
「ストップ!だって、これはあたしの問題でしょ?そりゃ、生まれや育ちは変わらないけどさ。あんな人たちに文句言われないようになればいいんでしょ?そのために......」


あ‥‥っ!

今..............気づいた。
分かっちゃった。つくしの.....気持ち。
記憶がなくなる前の、あたしの気持ち。

あたしは、無理して煮詰まってたんじゃない。
嫌々花嫁修業をしていたんじゃないんだ。
自分のために、あんな人たちに文句を言われないように、こんちくしょーって頑張ってたんだ。

___この人のことが、本当に好きだから。

色んな事が言えなかったんじゃない。
この人に言うと、すっごく心配しちゃうから。
あんな風に、あたしをかばってくれちゃうから。
あたしが乗り越えるべきことなのに、甘やかされちゃうから。

あの日記は、溜まりに溜まった文句を書き連ねていたんじゃない。
自分を鼓舞するためだ。
弱気になった時にも頑張るために。
そのために書いていたんだと思う。

あたしは戦いたかったんだ。
この人と生きていくために、逃げずに頑張りたかったんだ。
司さんの役に立ちたくて、相応しいと思われたくて‥‥

今なら分かる。
記憶がないあたしも、結局は同じだから。
この人に守られるだけなのは嫌だ。
あたしもこの人を守ってあげなくちゃ。


頭が急にすっきりとした気がした。
記憶はまだ完全じゃないけれど、大切なことを思い出したような。

けど、ごめん・・・・つくし。
あたし、深く考えてなかったから、やっちゃったかも。
でもね.....でも。
これだけはあんたが間違ってるよ。

もっと甘えていいんだよ。
それは彼に頼るというのとは違う。
夫婦なんだから、一緒にいたい気持ちとか、そういうのは隠しちゃダメなんだよ。
ちゃんと話し合って、一緒に立ち向かえばいい。
辛い時には甘えたらいいんだよ。
きっとこの人は分かってくれる。
よしよしって、頭を撫でてくれるよ。


「つくし?」
「........ふふっ!あははっ!」
「おいっ!」

肩の力がすっと抜けた。
頑張り過ぎることなんて無い。
ゆっくりでいいんだ。
だって、すぐにどうにかなる問題じゃないもん。
だから、

「あたしね、やっぱり頑張る。」
「だから、頑張らなくていいっつってんだろ。」
「ううん。頑張りたくなった!」
「はぁ?」

こんなにもつくしが頑張る理由が分からなかっただけ。
でも、それを知ったあたしは・・・・頑張りたい。
じゃないと、この人はすぐに暴走するもん。

あっ、そうか、だからつくしは言えなかったのかも。
この人はすぐにあたしを甘やかして、あたしに何かあればさっきみたいに報復しちゃうから。
でも、そんなことしたら、司さんの株が下がっちゃうじゃないの。
それってどうなの?ダメでしょ?

「辛い時は辛いって言うから。だから、それまでは黙って見守っていて。さっきみたいに、怖いことはしないで。」
「.........怖いことって何だよ。」
「あんな風に、あたしのせいで仕事に影響が出るのは嫌だよ。」

この人は、あたしの為ならきっと何でもしちゃうんだ。
だからあたしがブレーキをかけなくちゃダメなんだ。
そうか.....つくしもなかなか大変だったんだね。


「なんだよ、もっと甘えろよ。さっきみたいに。」
「んー、でも、甘えすぎると司さんが暴走しちゃいそうだから。」

甘えるよ。
でもそれは、こうやって一緒の時間を取ってくれたり、一緒に食事をしたり、あたしの話を聞いてくれたりとか、そういうことで十分なの。

「いいんだよっ、暴走させろ。」

司さんがあたしの髪の毛をガシガシってした。

「ぷぷっ、ダメに決まってるでしょ!」


そう言ったら、不貞腐れちゃった司さん。
すっごく男っぽいところはちょっと怖いぐらいで、
時々あたしに注がれる甘い視線にはドキって心臓が飛び出そう。
なのに、こんな風に不貞腐れてる司さんは可愛くて。
あたしの前ではいろんな顔を見せてくれる。


あたしは.....
この人が凄く好き。

だから、逃げないよ。




「あっ.....でもね。一つ甘えていい?」
「おぅ、何だ?」

司さんがすっごく嬉しそうに、ワクワクした顔してる。
しっぽを振ってるみたい。
ハチ公っぽくてますます可愛い。

「お腹空いちゃった。」
「はぁ!?」

だって、あのフルコース食べ損なっちゃったんだよ。

「仕方ねぇな。」
「今から、何か食べに行く?」
「いや.....俺も腹減って限界きてるから。」
「.........?」


パフンッって、ベッドに押し倒された。

「なっ、なに?」
「料理は後からこの部屋に来ることになってる。」
「えっ、そうなの?......で?」

この体勢は一体・・?
なんだか、危険な予感。

「俺にも少し食わせて?」

司さんは、そのままあたしの首筋に顔を埋めた。

「あっ.....」

程よい重み。
程よい熱さ。
目を閉じたら、この人のことしか考えられなくなる。

昨日はたんこぶがとか心配してたくせに・・・
なんて、少しだけ文句を言ったけど、

「1回だけ.....」

甘えた司さんの声が、かなりあたしのツボで、

「もぅ......仕方ないなぁ。」

なんて言いながら、
あたしは、司さんのクルクルの頭を抱きしめていた。






***




「わっ、結構混んでるね。もっと早く来ればよかった~。」
「お前、起きれなかっただろ?」
「ちょっ.....誰のせいよっ!」

頬を膨らませて怒ってるつくしが可愛すぎ。
昨日はあれから、一度だけ繋がって、準備されたフレンチを食べた。
満腹で眠い...なんて言い出したつくしを逃がしてやる余裕はなく、
そのままベッドに引きずり込んで、何度も求めてた。
やっと眠らせてやれたのは何時だったか...覚えてねぇ。

「だから、部屋で食おうぜって言っただろ?」

俺たちがいるのは、朝食ビュッフェ会場のセンターレストランだ。
俺は気乗りしなかったが、つくしがどうしても行きたいというから一緒にやって来た。

「だって、あのまま部屋にいたら、また......」
「また......何だよ。」

__ドスッ

脇腹につくしからの肘鉄。

「ってぇ。何だよ、お前だって結構ノッてただろ?」
「ぎゃっ、なんてこと言うの!!信じられないっ!!」


席に案内され、俺はコーヒー、つくしは紅茶をオーダーし、楽しそうに食い物を選んでるつくしの後ろを歩きながら、痛い位の視線が俺たちに注がれているのを感じてた。
美味しい、美味しいって食ってばかりいるこいつは全く気付いていないが。

まぁ、いいんだけどな。

食事も終盤って頃になって、
「なんだか凄く見られてない?」
と、さすがにつくしも気づいたようだ。

見られてるだろ。
バリバリ見られてる。
昨日の今日で、こんなところで堂々と食ってりゃ、そりゃ目立つ。

「なんでだろうね。」
「さぁ。」

首を傾げながら席を立ち、俺がつくしをエスコートしてレストランから出たところで、

「あれ?」
とつくしが立ち止まった。

目の前のサイドテーブルに、ローカル紙が置かれていた。

「これ.....司さん......?」

つくしがその新聞を手に取り、開いた。


「えーーーっ!あたしっ!?」


そこ写されていたのは、俺だけじゃない。
しっかりと抱き合う俺とつくし。
しかも、なかり濃厚なキスシーン。


「なっ、なっ、何でっ!!??」

何でって?
あれだけ堂々とキスしてれば目立つだろ。
しかも、ここは姉貴のところのホテルで、道明寺の名前を知ってる奴らも多い。
俺が新妻を連れていて、しかも腰抜けになるまでキスしてりゃ、写真にも撮られるさ。


「どうして、あたしたちが新聞にっ!?」

厳密に言えば新聞だけじゃない。
SNSにも上がってる。

おかげで朝から俺の携帯は鳴りっぱなしだ。
こいつが起きちまうから電源落としといたけど。


「ベストカップルってことだろ?」
「そんなバカな......」

つくしの顔がばっちり写ってんのは削除させてる。
つくしの蕩けてる顔は他の男には見せらんねぇから。

目をまんまるにして固まってるこいつの腰を引き寄せた。


「そんで、今日はどこ行く?」
「まっ...待って。そんな、ちょっとっ!」

逃げないんだろ?
俺の傍から、これから先ずっと...


グイグイッとつくしを連れて歩いていく。
俺の足取りは、すげぇ軽かった。




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Comments 3

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Happyending  
こんばんは(*^^*)

いつもたくさんの応援をありがとうございます(*^^*)
やっとつくしちゃんの気持ちも晴れてきて...私の足取りも軽くなって参りました(^o^)
あとは記憶ですね....(;^_^A

スリ●様
司を頼ることと甘えることは違うし、逆に司はつくしちゃんに頼られたいですよね(*^^*) ちょっとやり過ぎちゃうから、安易に頼れないけど...笑。このつくしちゃんは忘れそうだけど記憶がないので、新聞に載っちゃうぐらいに有名な人だなんて思ってなかったんですよね。びっくりですよね(笑)。もう、覚悟を決めるしかないですよね~( *´艸`)

花●様
話しを聞いてもらえることってすっごく大事だと思います。適当に話を流されるとほんとムカッてします。うちの旦那さん...笑。一度伝えたこと、絶対覚えてないし(笑)。あー、やっぱり司みたいなひとはなかなかいませんねぇ(>_<)!! さて、ベストカップルの二人は....ちょっと寄り道しています(*^^*) 

さてさて、今書いているので、明日にはアップしたいなと思います。
もう少しお待ちください~(*^^*)

2019/01/13 (Sun) 23:07 | EDIT | REPLY |   
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2019/01/13 (Sun) 00:42 | EDIT | REPLY |   
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2019/01/12 (Sat) 20:51 | EDIT | REPLY |   

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