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Happyending

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1か月後には弟が退院した。
弟が実家に戻ったタイミングで、俺は牧野を迎えに行った。
決して何かを約束をしていた訳じゃない。

その1か月の間も、何度も繰り返し考えていた。
俺はどうするべきか?
牧野の笑顔を守るために、どうすればいいのか。

それでも結局結論は出なかったけど、とにかく、牧野を連れ出してあげたいと思った。
誰も彼女のことも司のことも知らない世界に。

「類、どこ行くの?困るよ...。」

「いいから、俺に付いて来て。」


羽田から飛行機に乗り、俺たちは日本を後にした。



今にして思うと、やはり全ては司に計算されていたような気がする。
俺の仕事の拠点がヨーロッパに移るという情報を、きっとあいつは掴んでたはずだ。

そして、牧野との婚約解消のニュースは、俺たちが日本を飛び立つと同時に公表された。
世論はそれを道明寺HDの内情悪化のためと見ていたが、俺にはそうじゃないと思えた。
ライバル社の令嬢との婚姻を急ぐためならこの1か月の間に発表することだってできたはずだ。

牧野を守るため.....

あの時、「守り切れない」と言った司。
あれは.....牧野との未来の事じゃなかったのか?

困惑しつつシートに座る牧野と同じように、俺もタブレット画面の報道を見ながら困惑していた。
牧野が日本を去ったタイミングで発表されたこのニュースの意味をじっと考えた。

アメリカ政府すらも、道明寺とアメリカのトップ企業であるAG社の合併を望んでいる状況では、牧野が邪魔者と見られてもおかしくない。いや、孫娘との縁談を持ちかけているAG会長からすれば明らかに邪魔者だ。道明寺の莫大な資産をアメリカ側が手に入れるためには婚姻関係となることが手っ取り早い。あの社会はなかなか特殊だ。邪魔者は完全に排除される。

......待てよ?
そうなると、進を狙ったのは本当に、道明寺の子会社の社長だったのか?
それなら、そんなニュースは一つも流れていないのはどうしてだ?

もっと他に、牧野の身を狙う奴がいる....?
司が牧野を手放さなきゃ守れないぐらいに大きな組織?
まさか.....
国家権力なのか?

だから、あいつは「守り切れない」と言ったのか?
あれは牧野の笑顔だけでなく、その身の安全のことだったのか?


牧野に知られないように、タブレット画面を消した。

それなら......今の自分の行動は正しいはずだ。
牧野を隠さなきゃならない。
司との繋がりを完全に消さないと、守ることはできないから。







「ここ......」

「なかなかいいところでしょ?」

俺たちが到着したのはトスカーナ。
花沢物産が所有しているブドウ畑の一角にある別荘だ。

「この先にレストランがあってね。ウェイトレスを募集してる。ちょうどいい仕事になるし、しばらくはゆっくりできるでしょ?ああ、住まいはこの別荘でいいよ。今は管理人の老夫婦しか住んでいないから凄く喜んでる。」

「ちょっと、類。そんな勝手に決められても...」

「ここのみんなはのんびり暮らしてる。あんたが望むように、誰もあんたのことを詮索しない。それに、余計な情報は入ってこないよ。良くも悪くも、田舎だからね。」

「..............。」

「俺もしばらくはイタリアなんだ。ここなら週末に様子を見に来れるし。」

「えっ!?」

「せっかく連れて来てやったのに、冷たいな。一人でここを満喫するつもりだった?」

「そんな.....」

そんな会話をしながらも、急遽手配したSPに目配せする。
念のためにブドウ畑の作業員としてSPを送り込んだ。

司との婚約解消報道が流れた今、直接攻撃を受けるとは考えにくいが、それでも念には念を入れる。



こうして、牧野のトスカーナ生活が始まった。
イタリア語はさっぱり分からないという牧野は、語学を勉強しながら、レストランのウェイトレス、ブドウ畑の仕事と毎日忙しく動き回っていた。
俺はパリやミラノで仕事をして、週末はできるだけこのトスカーナに飛んだ。

本当なら毎日でも会いたかったけど、そうはしない距離が丁度良かったのかも知れない。
彼女にとっても、俺にとっても。
牧野は俺に甘えることを良しとしなかったし、俺には冷静になる時間が必要だった。


俺は仕事の傍ら、道明寺の動向を追っていた。
あきらや総二郎も同じだった。
だが、やはりおかしい。
合併を押すアメリカ政府、それを拒絶する道明寺HDの構図が明白になっていく。
当然司は政略結婚など受け付けない構えだ。
さらに、俺たち3人とも、司との連絡は取れなくなっていた。
あいつが今、どうしているのか?
全く情報が掴めない。

あいつは俺たちの親友だ。
なんとかしてやりたいと思うのに、それも出来ない。
いや...もしかすると、司と係わることで俺たちにも危害が及ぶことをあいつは懸念していたのかも知れない。

だったら今、俺たちのすべきことは、あいつの大切な牧野を守ることだけだ。
牧野はあいつの、唯一の弱点だから。





6カ月が過ぎた頃、牧野が言った。

「類、ありがとう。」

「ん?」

「ここに連れて来てくれてありがとう。」

「うん。」

言葉もろくに分からない。
だからこそ、余計な情報は入らない。
目の前の仕事をこなすだけで精一杯だ。
そんな生活が今の自分には丁度いいんだと笑った牧野。
その笑顔はぎこちなかったけど、それでも久しぶりの笑顔を見れた俺はとてもホッとしたことを覚えている。


「じゃあさ、いつか、俺のお願いもひとつだけ聞いてくれる?」

「類のお願い?あたしに出来ることなんてあるかな?」

「あるよ。」

それは、たぶん牧野にしか出来ないことだ。

「今じゃなくていいの?」

「今は、まだちょっと無理かな。」


この時、どうしてこんなことを言ったのかは分からない。
何か明確な未来が見えたわけでもない。
それでもいつか、俺は牧野に一つお願いをするだろうと思った。

大好きな彼女を、
きっと今、たった一人で戦っている親友の元に返すために。




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Comments 5

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Happyending  
こんばんは~ 

いつもたくさんの応援をありがとうございます(*^^*)
そろそろ書き終わらねば...と思って頑張っております。5話で終われるかな...書いてみたら6話かもですが(;^_^Aでも先が見えてきた!!

ふぁ●様
スケールがね...大きいんですが、あいまいにスルー(笑)。司は巨大な敵と戦っています。類君は、本当にねぇ。手に入れようと思えば、8年もあればつくしを手に入れることはできるんじゃないかな。でも、司を信じてるから...。そうそう、同僚!ありかもですねっ!(笑)。

あ●様
もう8年って書いてしまった...(;'∀') 何やってんでしょ?私。しかも、タイトルありきだったのに、ちょっとずれた...(;・∀・) 頑張って元の路線に戻さねば...と奮闘しております(笑)。ツイッター!!見ました。こういう事かぁ。可愛いですね、つくしの練り切り( *´艸`) 最近は仕事で東京ってことがほぼないですが、今度行ったら浜離宮に行こうと思いました!行ったことないです!!

名無し様
類くーん.....ごめんなさいです(*_*; 

花●様
本当に...類君いつもごめんなさい。そして、ありがとう...です。類君のお誕生日なのに...毎年幸せにしてあげられない。だから、毎年もう書くの止めようと思うんですよね(;^_^A

さて、夜中だ。
明日は入学式!
いってきまーす(^^)

2019/04/06 (Sat) 02:08 | EDIT | REPLY |   
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2019/04/05 (Fri) 16:31 | EDIT | REPLY |   
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やばい、最後の一文…
鳥肌がたった。

類くんー(/ _ ; )

2019/04/05 (Fri) 01:40 | EDIT | REPLY |   
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2019/04/05 (Fri) 00:31 | EDIT | REPLY |   
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2019/04/05 (Fri) 00:09 | EDIT | REPLY |   

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