FC2ブログ

Happyending

Happyending

なんてゲンキンな・・・
改めて、『道明寺』という名前の威力を思い知った。


参観後の保護者懇談会。
司も出たいと西田さんにゴネてたけど、さすがに後に会議が控えてるとかで渋々帰って行った。そんな姿にすら、保護者たちはハートマーク飛ばしてるし。
全く...無駄に容姿がいいんだからっ!
・・・・なんて思ったけど、容姿だけじゃないんだよね。

1学期の生徒たちの様子とサマースクールの説明っていうのが今回の懇談のメインだけど、毎年大なり小なりのクレームが付けられるのは必至。
去年もそうだったし、一昨年もそうだった。
けど今年は...。

『牧野先生は...道明寺様とどのようなご関係で...?』
『先生の指輪は道明寺副社長からの贈り物ですの?とても素敵ですわ。』

『牧野先生は自転車通勤をされているそうで健康的だと評判ですわ。実は、拙宅でも取り入れようかと考えているんですのよ?』
『まぁ、それは素晴らしいわ!』

『葉山様は牧野先生と近しいご様子。是非、宅の娘ともお近づきを...』
『あらっ!抜け駆けはいけませんわ!』

って、これ何よ?
明らかに司への媚びと、道明寺家とお近づきになりたいアピール。
去年は、やれスーツの生地が安物だとか、ジュエリーは本物を身につけなければ教育上良くないとか、早く英徳の風紀に慣れろとか散々だったのに。
道明寺財閥の力を痛感せざるを得ないこの変化に開いた口が塞がらない。


『道明寺司さんとは個人的なお付き合いがありまして...。本日の参観では私事で授業を中断してしまい大変申し訳なく思っています。彼にも...いえ、道明寺さんにも私からきっちり注意しておきますので...』

なんて言おうものなら、

『注意だなんて、なりませんわっ!道明寺様のおかげで、とてもよい参観になりました。ねぇ、皆様!』

そう言い出したのは高瀬さんだったりする。
そして、そうだ、そうだと賛同の嵐。
ホント参っちゃうわ...。


本当はちょっと怖かった。
司のパートナーになることで、ごく普通のあたしがさも凄い人であるかのように見られてしまうことが。
あたしはまだまだ未熟な教員で、平凡な女なのに。

今日もね、痛感したよ。
あたしが不安だったこと、そのまま。

結局・・・みんなお金持ちの権力に屈しちゃう。


でも、同時にこう思えるあたしもいた。

確かに権力は怖いけど、
その権力が間違った方向に振るわれなければいいのかな?

司の態度は.....というか登場から、普通じゃなかったけど、彼が言った事は間違ってはいなかった。参観は生徒の日常を見てもらうためのもので、親をランク付けする場じゃない。
そのことを分かってもらうには、やはり立場のある人の発言が必要だった。


つまりは、何が正しいことなのか、
それを見つめる目が大切だっていうこと・・・。

権力者であればある程、それは必要なこと。




**



「それで?結局は上手くいったんだろ?」
「う...ん。そういうことになるのかな?」


授業参観だった今日。
俺も会議の時間が迫っていたことから、参観後の懇談会ってやつまでは乱入できず、後ろ髪を引かれる思いで英徳を後にした。
つくしにクレーム付ける奴がいたらタダじゃおかねーけどな。

急いで帰宅してみればつくしは案外ご機嫌で、懇談はどうやら上手くいったらしい。

「色々言いたいことはあるんだけど.....でも、一番はありがとう...かな。」

なんて可愛らしく言うもんだから、そのままつくしをベッドに引きづり込んだ。
つくしの左手にはエンゲージリングが輝いてる。
つまり、俺たちの関係はオープンになったってことだよな?
俺はそれが嬉しくて堪らなかった。



散々イって、散々イカせて、俺の方を向いてベッドに沈んだつくしの、少し汗ばんだ前髪を整えてやりながらのピロートーク。
二人同時に登り詰めた後の、この甘い疲労感がなんとも言えない。

「なぁ、籍だけでも先に入れねぇ?」
「籍?」
「式や披露宴は、やっぱちゃんと準備してぇから今すぐにってのは無理だけど。もう、こうして一緒に暮らしてんだ。学校にもバレただろ?今更中途半端でいることの方がよくねぇだろ?」
「うん.....そうだよね。でも、本当にいいのかな?」
「まだなんかあるのか?」
「その......教師を続けたままで、司の奥さんになること。」

実際、道明寺家の嫁として、財閥の仕事をして欲しいっていう幹部はいるだろう。
海外からの賓客があった場合には、夫婦同伴が求められることもありそうだ。
けど、俺は俺の仕事にこいつを巻き込むつもりはねぇし、パーティーなんかも必要最低限一緒に出てくれたらそれで構わねぇ。
それに、この時代だ。
夫婦共働きなんて当たり前。家庭に入れと押し付ける方がナンセンス。


「俺は仕事に反対するつもりはねぇよ。それは初めから言ってるだろ?」
「うん。」
「ただ、現実問題、俺はまたそのうち海外赴任になるのは避けられない。」
「海外?」
「ヨーロッパならフランスかドイツ。最終は本社のニューヨーク。」
「.......そうなんだ。やっぱり、あたし何にも分かってなかったね。」
「俺が説明してねぇからな。つーか、そういう俺の都合にお前を付き合わせるのはフェアじゃねぇって思うんだけど......けど、やっぱ俺は、お前に付いて来てほしいと思ってる。」
「......うん。」

今年帰国したばかりだから、2-3年は日本だろう。
だがその後日本を離れるときは、つくしを連れて行くつもりだ。
それは分かって欲しい。

「ねぇ、あたしが英徳の先生になった理由って覚えてる?」
「あのガキ......リュウだろ?」
「うん、そう。」

牧野が英徳の教師になったのは、独りぼっちで学校に行きたくないと言ったリュウを放っておけなかったから。

「だからね、できれば、あの子が初等部を卒業するまでは英徳で教師を続けたいんだ、あたし。」

ガキが卒業するまでってことはあと3年以上だが、そう言い出すことは想定の範囲内。
あのガキもつくしに執着してるし、たぶんこいつの性格上、リュウを見放すことなんてできる訳ねぇ。

「分かってる。」
「それでいいの?」
「良いも悪いも、それはお前が決めることだ。」
「うん。ありがとう.....司。」

仕方ねぇだろ、そういうお前に惚れちまったんだからな。
ただし、

「あのガキすんなり納得すっかな。」
「何を?」
「お前ボケてんのか?あいつお前に惚れてんだろ?」
「ほっ、惚れっ!?ち、違うよ、違う!甘えてるんだよ。ほら、ご両親が海外生活だから。司だってそうだったから何となく分からない?」
「分かんねー。」

俺にとってのタマや姉ちゃんみたいなもんだってことは分かる。
が、あの執着は半端ねぇ。
マジで俺の事ライバルだと思ってるみてぇだし。
つくしもあいつを特別に思ってるところからすると、マジでライバルでもある。
ま、俺の勝利は決まってんだけど。

「きっと分かってくれるよ。」
「本当に大丈夫かよ。」
「何が心配なの?」
「ガキが駄々こねたら、結婚辞めるとか言うなよ?」
「ぷっ...そんな心配してるの?来週からのサマーキャンプでゆっくり説明するし、初等部終わるまでは教師続けるんだから...ね?」

すんなりいくといいんだが......

・・・・・って、待て待て!
今、聞き捨てならない言葉が聞こえたような...

『来週からのサマーキャンプ』?

それって何だっ!?


「あれ、言ってなかったっけ?」
「聞いてねーぞ。」
「えっ!?」

腹の底から響く、唸るように低い声。
突然不機嫌になる俺に、慌てるつくし。

「あのね?来週から夏休みでしょ?英徳は夏休み中に希望者を募ったサマーキャンプがあるじゃない。覚えてない?」
「覚えてねー。」

いや、覚えはある。
が、参加なんてしたことねぇ。

「3年生は今年は2泊3日の軽井沢なんだけど、今日の参観のおかげ?で、急に希望者が増えちゃってね。10人の予定が、30人になりそうなの。バスは元々大型を手配してるから大丈夫なんだけど、ホテルは今調整中でね?」

2泊3日の軽井沢・・・・だと!?

ジリジリと迫る俺に、つくしはわずかに距離をとろうとする。

「ほ...ほら、今日の授業は“手袋を買いに”だったでしょ?はじめは参加者が少なかったんだけど、今日の授業で、我が子を信じて自立を促し、陰で見守る大切さとか.....そういう母ギツネの心境を掘り下げたから、急に参加者が増えてね。.....えっと、班ごとに青空市場やスーパーに買い出しに行くの。それで、夕食は生徒が作るのよ?」

そう言うことじゃねぇっ!
何が母ギツネの心境だっ!!

俺は嫌だね。
こいつを信じて見守る?
絶対に無理っ!
大切なものはこの手で守りたい。
チャリ通だって、この俺がタダで許す訳ねーだろ。
気付いてねーのはお前だけで、朝から晩までSPが張り付いてんだよっ!!

だいたい今日の物語の親ギツネは自分はビビって我が子の手袋を買いに行けないからって、子供に買いに行かせただけだろーが!
俺はそんなオトコじゃねーんだよっ!!



「誰が行くんだ?」
「え?えっと.....生徒と教師が5名、あと調理師さんと校医の先生と、お世話係のスタッフさんと.....」
「男もいるのか?」
「そりゃいるわよ。だって、隣のB組の西山先生は男性だし、お世話係も男性がいるし。」

・・・・・・・。

何処を突っ込んでいいのかわかんねぇ。
俺という婚約者がいながら、他の男と旅行だと?
俺と旅行に行ったこともないってのに?
そんなの心配で行かせられる訳ねぇだろ!!
俺は親ギツネじゃねぇぞっ。
お前の婚約者だっ!!


「ダメだ。」
「は?」
「行かせらんねぇ。」
「何言ってるの?」

訳わかんねぇっていうつくしの顔。

「危険だろ?」
「子供たちが?」
「バカっ!お前がだっ!!」

意味不明って顔だな。

「あのな。俺は出張の時、女は絶対に帯同しない。」
「........そうなの?」
「なのに、お前は男と旅行にいくとか、ありえねぇだろ?」
「でも、授業の一環なんだけど...?」

だからこいつは危機管理がなってねぇんだ。
大学時代だって色んな男に言い寄られてたのは知ってんだぞ?
お前が鈍感なだけで、周りの男は放っておかねぇんだよ!!


「絶対ダメだ。」
「どうして!?そんなこと言ってたら、教師続けられないじゃないっ!!」

つくしが眉間に皺を寄せる。
甘いピロートークが言い合いになった。

けど、ダメなもんはダメだっ!!!


「どうしてもだめだって言うならねー!!」
「どうしても行くって言うならなっ!!」


二人の声が重なった。

睨み合う俺たち。


「どうしてもダメなら何だよ。」
「ダメなら.........」

そこで口を噤んだつくし。

「あたし......」

結婚を辞めるとでも言うつもりか?
こんなことで?
俺が一度捉えた獲物を逃がすとでも?


お前は俺が誰だか分かってんのか?
俺は道明寺司だ。
俺の辞書に不可能の文字はない。
俺は不可能を可能にする男だ。


「俺も行く。」

「・・・・え?」

「流石に初めから合流は出来ねぇけど、1日目の夜までには行く。」

「・・・・司?」


「俺はお前の母親じゃねぇからなっ。
 少しでも危険があるなら絶対に行かせねぇ。
 けど、どうしてもって言うなら、
 地獄にだって、どこにだってついて行く。」


ぽかーんって、つくしの間抜け面。

しばらくの間、真剣に見つめ合う俺たち。



けど、最後には根負けしたように、

「本当に、もぅ.....大袈裟なんだから。」

やれやれ.....なんて言いながら、
じゃあ司の分もご飯準備するね...と、

つくしが優しい瞳で、俺の頬を撫でた。




にほんブログ村

いつもたくさんの応援をありがとうございます。
関連記事
Posted by

Comments 3

There are no comments yet.
Happyending  
こんばんは(*^^*)

いつもたくさんの応援をありがとうございます!
早くお話を終わらせようと必死なのですが...なかなか(;^_^A

花●様
司ったら~もぅっ。そりゃあね、一人で行かせる訳ないです(笑)。おいおい、仕事は大丈夫?さすがの西田さんもキレちゃうかな?でも、司の辞書に不可能の文字はないので...(つくしちゃんに関してはww)ププッ!!

スリ●様
つくしちゃんも覚悟はできたようですよ!そして、そこ!(笑) 丁度もう一方、同じ疑問を投下してくださいまして…。本当は時間もないしスルーするつもりだった妄想をアレンジしてお届けします!34.5話をどうぞ~(笑)

本当は『母の日』のお話を書こうかなと思ったのですが、上手くお話を纏められそうになかったので...(;^_^A
こちらのお話も早く完結させるべく頑張ります!!
繋ぎの34.5話もどうぞ読んでやってくださいね(*^^*)

2019/05/12 (Sun) 23:59 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/05/12 (Sun) 11:25 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/05/11 (Sat) 23:57 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply