ブラックバカラ 22.5
司に抱きかかえられた状態で夏祭りを後にした。
ゆらゆらと揺られながら、つくしは懐かしい感覚に陥っていた。
以前にも、こんな風に大切に抱き上げられたことがある。
あれは...いつだった?
花沢類?
ううん、違う。
あの時も、香水の香りがして、大切に、庇う様に...まるでどこかのお嬢様のように抱きかかえられて......あれは、誰だった?
リムジンに乗り込んだ時には、つくしはすでに夢の中だった。
心地よい振動を感じながら、夢の中にまで香水の香りが漂ってくる。
すると夢の中に、男の声が聞こえてきた。
『顔の傷が残ったら、俺が責任取ってやるよ』
何バカなこと言ってんの?
クスクスクスッ、あたしにそんなこと言う男は誰?
そんなこと言ったって、何にも出ないからね。
『相手の男、ブッ殺してやりたいぐらい、お前が好きだ』
ああ、そんなことあったっけ?
あれは、学校中からいじめにあってさ。
ホント酷かった。
そうよ、赤札とか貼られて、騙されて、車で校庭を引きずられたんだからっ。
本当にありえないっ!
・・・それで、あんたは誰?
どうしてそんなこと言うのよ。私のことが好きだ…なんて。
ふわふわ.....ふわふわ.....夢の中を漂っているみたいだ。
・・・・・あれ?
あたし、浴衣を着てる。
そうだ、美作さんちでやった浴衣パーティー。
『うまこにも衣装だな』
ぷっ、そんな真面目な声でギャクとか言わないで。
でも、いい声だね。
あれ、でも聞いたことある!この声。
誰.....だっけ?
『あたし、道明寺が好きなのっ』
・・・・え?・・・・・ええっ!?
『それでっ、あたしたち、こないだから付き合ってます!』
その場を立ち去ろうとしていた男が振り返った。
つくしは息を飲んだ。
____道明寺.....
なんだ、あんたあの時いたんじゃない。
えっ......!?
次の瞬間、道明寺が、おかっぱ頭の女を抱き締めた。
その横顔はとても嬉しそう。
待って。あれは......
..................あぁ.................そうだった........
そうだったんだ.............
これは夢じゃない。
・・・・・記憶だ。
幸せな、あたしの記憶。
バカで、高慢で、どうしようもない男なのに、大財閥の御曹司で超がつくお金持ち。
そんな厄介な男を、あたしはいつの間にか好きになっていた。
たかが高校生の恋愛。
それでも現実は甘くなかった。
でも、あたしたちは一緒にいようって決めたね。
あんたが道明寺を捨てるっていうから、あたしがあんたを養おうと思ったんだよ。
今思えば本当に子供だったけど、でもあの時は本気だった。
あの時、あの島で、あんたが言ってくれた。
『お前がいれば、他には何もいらない』
それにあたしがいるからもう寂しくないんだって言ったよね。
あたし、あの言葉嬉しかった。
あの後、あたし、初めてあんたと.....
怖かったけど、嫌じゃなかったよ。
『力抜け、じゃねぇとお前がキツイ』
『そんなに痛いの?痛くしないで』
ぷっ、あたしってば、何言ってんのよね。
今思えば、あの時、あんた相当困った顔してたね。
『痛くしねぇから力抜いてくれ』
『ほんとに?ほんと?』
『ホントだ』
あたしったら、覚悟を決めたはずなのにガチガチで。
だって、初めてだったんだもん...。
いつもはせっかちなあんたが、根気強くあたしを説得してたっけ。
『やだっ、痛いっ、痛ーいっ!!』
『悪ぃっ、けどもう少しだから、頑張れ!』
『が...頑張れって...もう無理っ!道明寺、あたし死んじゃうっ!!』
『いや、死なねぇから...くっ!!』
『きゃあっ』
ぷくくくっ、あたし、なんて恥ずかしいの。
ムードもへったくれも無かったね。
ごめんね、道明寺。
あたし、ガキで.....
でもね、あの時、あんたがあんまり真剣だったから、あたし、最後まで頑張ったんだからね。
それにね、最後までできて嬉しかったの。
『俺、すげぇ幸せ』
あんた、すっごく嬉しそうに笑ったでしょ?
あたし、あんたのあんな顔、初めて見たんだ。
あの日、あたしたちは間違いなく幸せだった。
あんなに痛かったのにね、それ以上に幸せの方が大きかったの。
『俺がお前を幸せにしてやるから、お前も俺を幸せにしろ』
『うん.....』
あたしたち、そう誓ったね。
なのに.....
ねぇ、それならどうして、あたしはあんたのことを忘れていたの?
どうして、あんたはあたしのことを覚えていないの?
あたしたち、どうして離れ離れだったの?
いつの間にか、ゆらゆらと揺れる感覚は無くなり、締め付けられるような圧迫感からも解放されていく。
と同時に、せっかく思い出した幸せな過去が消えそうになる。
嫌だっ、忘れたくないっ!
行かないで、道明寺!!
目覚めた時、つくしは過去と現実の間を彷徨っていた。
目の前に愛する男がいることが分かると、自然と涙が溢れた。
「どこにも行かねぇよ。お前がいれば、他には何もいらない。」
ああ...良かった。
あたしもだよ、あたしも......
つくしは司を引き寄せた。
「あたしもあんたが好き」
ずっと前から、あんたのことが好きだった。

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いつもたくさんの応援をありがとうございます。
ゆらゆらと揺られながら、つくしは懐かしい感覚に陥っていた。
以前にも、こんな風に大切に抱き上げられたことがある。
あれは...いつだった?
花沢類?
ううん、違う。
あの時も、香水の香りがして、大切に、庇う様に...まるでどこかのお嬢様のように抱きかかえられて......あれは、誰だった?
リムジンに乗り込んだ時には、つくしはすでに夢の中だった。
心地よい振動を感じながら、夢の中にまで香水の香りが漂ってくる。
すると夢の中に、男の声が聞こえてきた。
『顔の傷が残ったら、俺が責任取ってやるよ』
何バカなこと言ってんの?
クスクスクスッ、あたしにそんなこと言う男は誰?
そんなこと言ったって、何にも出ないからね。
『相手の男、ブッ殺してやりたいぐらい、お前が好きだ』
ああ、そんなことあったっけ?
あれは、学校中からいじめにあってさ。
ホント酷かった。
そうよ、赤札とか貼られて、騙されて、車で校庭を引きずられたんだからっ。
本当にありえないっ!
・・・それで、あんたは誰?
どうしてそんなこと言うのよ。私のことが好きだ…なんて。
ふわふわ.....ふわふわ.....夢の中を漂っているみたいだ。
・・・・・あれ?
あたし、浴衣を着てる。
そうだ、美作さんちでやった浴衣パーティー。
『うまこにも衣装だな』
ぷっ、そんな真面目な声でギャクとか言わないで。
でも、いい声だね。
あれ、でも聞いたことある!この声。
誰.....だっけ?
『あたし、道明寺が好きなのっ』
・・・・え?・・・・・ええっ!?
『それでっ、あたしたち、こないだから付き合ってます!』
その場を立ち去ろうとしていた男が振り返った。
つくしは息を飲んだ。
____道明寺.....
なんだ、あんたあの時いたんじゃない。
えっ......!?
次の瞬間、道明寺が、おかっぱ頭の女を抱き締めた。
その横顔はとても嬉しそう。
待って。あれは......
..................あぁ.................そうだった........
そうだったんだ.............
これは夢じゃない。
・・・・・記憶だ。
幸せな、あたしの記憶。
バカで、高慢で、どうしようもない男なのに、大財閥の御曹司で超がつくお金持ち。
そんな厄介な男を、あたしはいつの間にか好きになっていた。
たかが高校生の恋愛。
それでも現実は甘くなかった。
でも、あたしたちは一緒にいようって決めたね。
あんたが道明寺を捨てるっていうから、あたしがあんたを養おうと思ったんだよ。
今思えば本当に子供だったけど、でもあの時は本気だった。
あの時、あの島で、あんたが言ってくれた。
『お前がいれば、他には何もいらない』
それにあたしがいるからもう寂しくないんだって言ったよね。
あたし、あの言葉嬉しかった。
あの後、あたし、初めてあんたと.....
怖かったけど、嫌じゃなかったよ。
『力抜け、じゃねぇとお前がキツイ』
『そんなに痛いの?痛くしないで』
ぷっ、あたしってば、何言ってんのよね。
今思えば、あの時、あんた相当困った顔してたね。
『痛くしねぇから力抜いてくれ』
『ほんとに?ほんと?』
『ホントだ』
あたしったら、覚悟を決めたはずなのにガチガチで。
だって、初めてだったんだもん...。
いつもはせっかちなあんたが、根気強くあたしを説得してたっけ。
『やだっ、痛いっ、痛ーいっ!!』
『悪ぃっ、けどもう少しだから、頑張れ!』
『が...頑張れって...もう無理っ!道明寺、あたし死んじゃうっ!!』
『いや、死なねぇから...くっ!!』
『きゃあっ』
ぷくくくっ、あたし、なんて恥ずかしいの。
ムードもへったくれも無かったね。
ごめんね、道明寺。
あたし、ガキで.....
でもね、あの時、あんたがあんまり真剣だったから、あたし、最後まで頑張ったんだからね。
それにね、最後までできて嬉しかったの。
『俺、すげぇ幸せ』
あんた、すっごく嬉しそうに笑ったでしょ?
あたし、あんたのあんな顔、初めて見たんだ。
あの日、あたしたちは間違いなく幸せだった。
あんなに痛かったのにね、それ以上に幸せの方が大きかったの。
『俺がお前を幸せにしてやるから、お前も俺を幸せにしろ』
『うん.....』
あたしたち、そう誓ったね。
なのに.....
ねぇ、それならどうして、あたしはあんたのことを忘れていたの?
どうして、あんたはあたしのことを覚えていないの?
あたしたち、どうして離れ離れだったの?
いつの間にか、ゆらゆらと揺れる感覚は無くなり、締め付けられるような圧迫感からも解放されていく。
と同時に、せっかく思い出した幸せな過去が消えそうになる。
嫌だっ、忘れたくないっ!
行かないで、道明寺!!
目覚めた時、つくしは過去と現実の間を彷徨っていた。
目の前に愛する男がいることが分かると、自然と涙が溢れた。
「どこにも行かねぇよ。お前がいれば、他には何もいらない。」
ああ...良かった。
あたしもだよ、あたしも......
つくしは司を引き寄せた。
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