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Happyending

Happyending

長い睫毛だなぁ。
初めて出会った時から凄い美形だとは思ってたけど、クールな見た目とは裏腹に、怖いぐらい熱い愛情の持ち主。
どうしてあたしなの?っていう思いは変わらないけど、この愛情が偽りだなんて思わない...そう確信できた夜だった。
今までのあたしは、どんなに桜子たちにバカにされたって、男の人とそういうこと...って考えられなかったのに、こいつとはそう言う関係になりたいと素直に思えた。
あたしだけの男でいて欲しいって願うぐらい。

あのパーティーで再会してからもうすぐ1か月。
こんな短期間でこんなにも好きになるなんて、自分で自分が信じられない。
それでも全く後悔なんてしていない自分を、つくしは幸せだと思った。


鈍く疼く下腹部をそっと抑えた。
これってやり過ぎじゃないの?普通?
『すげぇ、可愛い』とか繋がったまま言うし、『イキそう?』とか色気駄々洩れで聞くし、『俺を幸せにするって言えよ』とかすっごく甘い声で囁くんだもん。
もう頭が沸騰しちゃって、何にも考えられなくて、流されるがままで。
そうそう、ワンワンプレイって何よ。そんなこと言うわけないのに!
でも、あんなに嬉しそうな顔なんてされたら嫌だなんて言えないし、それに.....あんなセリフ面と向かって言われたら心臓止まったかも知れないから、あれはあれで良かったのかも...?

・・・・なんて、キャーッ!!!

ダメだ...思い出しただけで頭がおかしくなりそう...。

そうだ。
・・・・先に起きよう。
そうしよう!


つくしは、スヤスヤと眠る司を残して、そっとベッドを下りた。

・・・あれぇ、浴衣がない。どこだろ?

キョロキョロと辺りを見渡しても、昨日脱いだ浴衣が見つからない。
帯もないし、そう言えば彼のスーツもない。

もしかして、道明寺が洗ったのかな?
どうしよう、羽織るものがないや。

その時目についたのはクローゼットで、そーっと扉を開くとクリーニング済みのワイシャツがたくさん収まっている。その中の真っ白なシャツを一枚取り出して自分の体に当ててみると丁度ミニ丈のシャツワンピになりそうだったから、つくしはササッとそれを羽織りボタンを閉めてほっと一息ついた。


昨日は気づけばベッドの上だったから、ここがどんなところか分からない。
道明寺のマンション...だよね?
いつも、どんな生活してるんだろ?
興味津々になったつくしは、そのままベッドルームを後にした。


「うわぁ...!何これ、ここって何階?」

ベッドルームから続く部屋は、天井から床まで総ガラス張りの窓が備えられた広いリビングダイニング。
そこからの眺めは遠く富士山まで見渡せる。

パタパタと窓際に走り寄ろうとした時に、ぷーんといい匂いがした。
そちらを見るとスタイリッシュなキッチンがあって、手前のダイニングテーブルには、まるでミニパーティーでもするかのように、サラダやハムやチーズが上品な皿に盛りつけられ、バターの香りが漂う焼きたてのロワッサンが籠にこんもりと入っている。近づいて保温鍋の蓋を開けると、つくしが大好きなコーンスープがたっぷり入っていた。

「うそぉ、いつの間に?」

取り皿もフォークもナイフも準備されているから、すぐにでも食べられそうだ。
クロワッサンサンドにしたら美味しそう~っ、ふふっ!

「あー、でも、道明寺も起こさなきゃだし、シャワーもしなきゃっ。って、待って?今って何時?」

見上げた壁の掛け時計は、すでに朝9時を回ってる。

「たっ、大変っ!道明寺、仕事じゃないのっ!?」

つくしは日曜日で休みだが、司はこれまで休みがあったことは無いことを知っている。
起こさなきゃっ、と寝室へ戻ろうとした時に、

「先に起きてんじゃねーよ。」

と背後から抱きしめられた。
少し拗ねた声。
それが誰であるかは見なくても分かるから、つくしはクスッと笑った。

「起きたの?」
「お前がいなくなったから起きた。」
「何言ってんのよ。ぐっすりだったくせに。ねぇ、仕事は?急がなくて大丈夫?」
「あー、今日は夕方まで休み。」
「うそっ!」
「ほんと」

かなり無理をしてもぎ取った週末のオフ。
昨日の夕方からと考えれば丸一日。今晩にはNYに発たないといけないが、それまではつくしと一緒にいられる。こういう関係になることは焦らないと思いながらも、半分以上は期待していたから、司は今、腕の中に彼女がいることがとても嬉しくて幸せだ。しかも、本当はつくしがベッドを下りた時から目覚めていた。裸のままコソコソと歩く姿に吹き出しそうになるし、下着も付けずに自分のシャツを羽織った彼女がシャツの匂いを嗅いでふふっと笑っていたのも知っている。その姿のままひょこひょこと歩くつくしの姿を、ベッドで薄目を開けながら追いかけていたのだ。


「そのカッコ、誘ってんのか?」
「え?ひゃっ!?」

司がシャツの上から胸を弄るから、つくしは飛び跳ねた。

「違うっ、あ!ダメだからね。もうダメ、絶対ダメっ!」
「チッ」

司にしてみれば、恐らくは数カ月ぶりのオフ。休みの間中、ずっとベッドで過ごしても構わないのだが、つくしはささっと体を捻じって司から離れてしまう。
昨日は結構積極的だったくせに...と司は独り言ちるが、つくしの興味はもうすっかりテーブルの食べ物に移ってしまったようだ。

「ねぇ、これ、ご飯だよね。いつの間に?」
「あー、お前が寝てる間に邸から持って来させた。」
「お邸から...?」
「あと、浴衣もクリーニング頼んだから。」
「えっ!?なんでっ!??」
「何でって、あれ.....俺たちの体液でドロドロ......」
「やっ!バカっ!何てことするのっ!!」

起きたらシーツと一緒にこっそり洗濯しようと思っていたのに...

「洗うったって、どうやるんだよ。」
「洗濯機?」
「んなもんねーし。」
「嘘でしょ?」

当然コンシェルジュ付きのマンションではあるが、この部屋の掃除などは世田谷の邸からの身元のしっかりしたメイドに任せている。だから、当然司は洗濯も料理もしたことはない。司が唯一することと言えば、コーヒーカップや、ワインやウイスキーを飲むためのグラスを準備するぐらいだ。

「ねぇ、そのメイドさん.....呆れてないかな?」
「何がだよ。」
「だって...その....」

ぐちゃぐちゃの浴衣...だよ?

「俺も部屋から出しといただけだから会ってねぇけど、俺が部屋にいる時に出入りするのは男の執事か、婆さんかどっちかだから心配すんな。」
「もぅーっ、絶対ハシタナイって思われてるからね!」
「どうだかな。俺が女連れ込むなんて初めてだから驚いてるかも知んねーけどな。」

サラリと言い切る司の一言が、つくしの心を温めてくれた。
別に過去の女性を詮索するつもりはないし、つくしが初めての恋人だと言ってくれた言葉も信じてる。
けれど、もう24にもなる男が、これまでに何もなかったとは思わない。
それでも、今はつくしだけだということは、すんなりと信じられた。

これからはずっとあたしだけの人でいて欲しいけど。


「なぁ、いつまでそんなカッコしてんの?」
「.....え?」

つくしは、ぼーっとしていたらしい。

「襲ってくれって言ってると思っていいのか?」

司がニヤリと笑った。

「やっ、違う!シャワーしなきゃっ!」

アタフタとする彼女を見て、仕方ねぇな...と司が苦笑した。

「その奥の部屋のクローゼットに、お前の服入れさせてる。」
「ええっ!?」
「浴衣の代わりに持って来させた。」
「何てこと.....」
「そのままノーパンでいいのかよ。それってつまり...」

司が意地悪そうな顔をすると、危険を察したつくしがフルフルと首を横に振った。

「シャワー行ってきます。ありがたく着替えもお借りします。」
「結構元気そうだな。なんならもう一回位イっとくか?」
「ぎゃっ!ケダモノーっ!!」

つくしは一目散に奥の部屋に消えていく。
半分本気な司だったが、昨日は頭痛に襲われたり、涙目になったりする彼女を見ていたからか、黒髪を揺らして走り去って行く元気な彼女を見て、ほっと安堵の息を漏らした。





***




「おいしーっ!ね、あんたももっと食べて。前から思ってたんだけど、飲み物ばっかりで全然食べないじゃん。」
「俺はお前のその食いっぷり見てるだけで腹いっぱい。」
「何よそれー!!」

和やかな朝食。
先日のメープルでは人目もあったから、つくしも緊張していたのだが、今は二人きりだ。
クロワッサンにハムやチーズを挟み、大きな口を開けてパクリと食いついている。
あれも美味しい、これも美味しいといちいち解説する彼女を見ているだけで、何故だか胸がいっぱいになる。こんなに幸せな朝食はいつ以来なのか?もしかしたら初めてかも知れなかった。

朝起きたら彼女がいて、毎日一緒に朝メシを食って、『もっと食べろ』とガミガミ怒られて、仕方なく一口食ったら、『ね、美味しいでしょ?』と微笑まれる。
行きたくねぇ仕事も、彼女が行けって言うから仕方なく行って、クタクタになって帰ってきたら彼女が『お帰り』と迎え入れてくれる。
夜は時間が許す限り抱き合って、また一緒に朝を迎える。
そんな毎日だったらどんなにいいか.....。


「どうしたの?」
「いや?」

恋人同士の初めての朝だ。
本気の付き合いをしていればその先を考えて当たり前。

けれど、モグモグと口を動かすつくしを見れば、とてもプロポーズを待っているようには思えないのだが、司は今伝えたい衝動を抑えられなくなっていた。

それに、こいつははっきり言わねぇと分かんねぇ鈍感女だからな。

何て伝える?
ってか、分かってるよな、俺の気持ち。
ずっと一緒にいる約束もしたし、両親に会いに行くと言ってるんだ。


カチャン.....

司はコーヒーカップを置いた。
いつも優雅な仕草をする男が、珍しく音を立ててカップを戻すから、つくしはクロワッサンを頬張りながら司を見た。


「牧野」
「ん?......ゴックン」

口に入れていたパンを飲み込んだ。
司の深刻そうな顔つきが心配になって、つくしもクロワッサンをお皿に置いた。

「...っ...こん.....」

結婚してくれませんか?
そう言うつもりだったのに、まさかの緊張で言葉が出ねぇ!
この俺がだぜ?有り得ねぇっ!!
けど、何億というビジネス契約を結ぶ時だってこんなに緊張しねーんだよっ!

「........?」
「っこんして...あー、くそっ、ちげぇ!」
「どうしたの?あ、ベーコンがいい?あったよー、ベーコン。温めてこようか?」

・・・・ち、違うっつーの!!

こともあろうか、ベーコンと勘違いされた。
つくしは立ち上がり、トタトタとキッチンに向かってしまう。

だぁっ!!
そうじゃねーだろっ!!

慌てて彼女を捕まえようと追いかけていくと、
突然彼女の足が止まった。


彼女の視線の先には、観葉植物。
お洒落な鉢植えに飢えられた背の高い木には、細長い葉っぱがツンツンしていて、この部屋の雰囲気にマッチしてる。

それなのに.....何かおかしい。


「これ......?」


つくしの目に入ったのは、その場にはそぐわない鉄の風鈴。
細い葉に無理矢理引っかけられたようで、その場に半端ない違和感を醸し出している。
どう考えてもこの部屋のものとは思えなくて、思わず司を振り返った。


「もらってきた。」

司が彼女の隣に立ち、少しムッとした感じで言う。

「もらって?」

「本当は欲しかったんだろ?つーか、欲しかったって言えよ。福を呼ぶ風鈴だって?なんでも新婚家庭に置くと子宝に恵まれるって話だ。」

つくしは言葉もなく司を見上げた。

驚いて・・・ただ、驚いて。

それにどうしてそのことを知ってるの?
いつもらってきたの?

欲しかったよ。でもね。
そういうものは簡単に欲しがっていいものじゃないでしょ?
だって、あたしたちはまだ.....



「ここで一緒に暮らそう。牧野、俺と結婚して?」


司の熱い視線がつくしを射貫いた。



こんな素敵なマンションに住んで、洗濯なんてしたことも無くて、恐ろしいぐらいにセンスだって良くて、いつも完璧。
なのに、彼には似合いもしないこの風鈴を、この部屋のどこに吊るそうかと首を捻っている姿が想像できた。

観葉植物に吊るしちゃうところがこいつらしい。
だって、この部屋にはカーテンレールなんてないもんね。
道明寺が風鈴なんて信じてるわけないだろうし、この完全に洋風のリビングには明らかに合ってない。
それでも、きっとあたしのために風鈴を飾ってくれた。


そんな彼の不器用な優しさが心の底から愛おしくて、
つくしはそっと司の腕に触れた。


「よろしくお願いします」



答えはこれ以外にない。
自然とそう思えた。




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Comments 6

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Happyending  
こんばんは~(*^^*) 

いつもたくさんの応援をありがとうございます(*^^*)
3連休ですね。私はこどもの行事に振り回されております(;^_^A
本当は0時投稿を目指したかったけど...間に合わず...( ;∀;)
早く終わらせたいのに!ブラックバカラ!!

さてさて、
花●様
眠気吹っ飛びました??(笑) 司、ムッツリ(←死後?笑)ですよね(笑)。プロポーズは伝わったみたいです(*^^*) さて、ここからまたお話を展開していきます(^^)v

みみまま様
私も、素直なつくしちゃん好きです(笑)。天邪鬼なところが彼女の魅力でもあるけれど、でも、こういうところは覚悟を決めて欲しいかな?なーんて。どっちかというと司第一主義なもので..(´艸`*)アハ

ゆ●様
お久しぶりです~(*^^*) コメントありがとうございます!ブラックバカラ、もう少し続きます。最後まで楽しんでいただけるといいな~( *´艸`)

スリ●様
彼シャツ(≧◇≦)!!そんな風に言うのかぁ...知らなかった(;^_^A アセアセ・・・ っていうか、スリ●様、そっち系読むんでしたね!!私には未知の領域です(笑) もっと幸せにするための最後の仕事が待ってます(笑)。頑張りまーす('◇')ゞ

二次●様
そうそう、風鈴をどう使うか迷ってですね~、こうなりました(´艸`*) おっ..。前からかなりいい線を突かれている気がするんですが...(笑)。でも、何とも言えない!!(笑) 一緒にドキドキしてくださいね(*^^*)


ブラックバカラはまた舵を切っていきます。
ラストに向けて、すこしずつがんばります(*^^*)
*あ、でもまだすぐには終われないデス(;・∀・)

2019/09/16 (Mon) 01:48 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/14 (Sat) 10:41 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/14 (Sat) 09:49 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/14 (Sat) 07:53 | EDIT | REPLY |   
みみまま  

司のストレートなプロポーズ素敵!

でも、素直に応じたつくしちゃんの方にグッと来ちゃいました。

こんなつくしちゃん大好き❤

2019/09/14 (Sat) 00:51 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/14 (Sat) 00:42 | EDIT | REPLY |   

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