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Happyending

Happyending

『つくしちゃん辛くならないかなぁ...
だって、道明寺君は海のことが好きだったから』


息がうまく吸えない。
どうしよう、また.....


「顔色悪いよ。大丈夫?」
「う...ん。へい...き。」
「そぉ?良かったぁ。余計な事かなって思ったんだけど、一応伝えておいた方がつくしちゃんの為かなって。」
「あたしの......ため?」
「それに、道明寺君も思い出した時に困るかなって。」
「道明寺が?」

道明寺が何を困るの?
記憶が戻ったら、あたしと別れるみたいないい方。

『道明寺君、つくしちゃんのこと、ウザイって言ってた。』

・・・本当にそうなの?
そんなにこの人と道明寺の関係は深いの?
あたしは、別れる覚悟をしておいた方がいいってこと?

・・・ううん、気にしちゃダメ。

気にしない。
だって、今のあいつはあたしのことが好きなんだから。
あたしも、あいつが好きなんだから。
だから、大丈夫。

でもっ・・・

つくしの中で堂々巡りが続く。
徐々に呼吸が荒くなり、なんとか落ち着こうと肩で息を繰り返した。


「つくしちゃん、本当に大丈夫?」

いきなり現れた人にこんなことを言われて平気な女がいるはずないのは明らかなのに、海はどこまでも鈍感だ。天然という名の悪意...。彼女は昔から変わっていない。

つくしの様子がおかしいことで、海は自分が優位になっていることを無意識に感じた。
そうなると俄然お節介になるのが彼女の特徴だ。

「救急車、呼ぼうか?」

夏祭りの時にはその場を立ち去ろうとしたのに、今回は優しく声を掛ける。
親切とお節介は紙一重だということを、海は知らない。

・・・つくしちゃん、この間から体の具合が悪いみたい。海は看護師だから、道明寺君の相談に乗ってあげようかな。道明寺君もきっと困ってると思うし。つくしちゃんの為にもその方がいいよね。


救急車を呼ぼうと、海が携帯を手にした時、




Pururururu......Pururururu.......Pururururu........



と電話が鳴る音がする。
確認すると、どうやらつくしの鞄から聞こえるようだ。
司が事務所に直接かけてきては堪らないと、つくしは着信をオンにしていた。

「つくしちゃん、電話みたい。」
「あ...うん.....」
「出られる?」

とにかく、海との会話を切りたくて、つくしはコクンと頷いた。

「えっと、じゃあ、私はお手洗いに行ってるね。」

流石に気を遣ったのか、海が席を外した。


つくしは震える手で鞄の中を探り、携帯と掴んだ。
仕事がこの時間に終わることを彼は知っている。
画面には『道明寺』の文字が見えた。

躊躇は一瞬だった。
次の瞬間には、答えを求めるように携帯画面をタップしていた。


『牧野、俺』
「......うん」

聞こえてくる声はいつもと変わらない。
その声を聞いただけで、パニック寸前だった呼吸が楽になる。
ふぅっと吐きだし、すぅっと吸うことができた。
手の震えも徐々に治まっていく。

『どうした、何かあったのか?』
「......ううん、何にもない。そっちこそ、どうしたの?」
『いや、声が聞きたかっただけ。』

司の声がと胸に染み、涙がこぼれそうになる。

そして、つくしは思い知る。

ああ...
この声が聞こえないところになんて行ける訳がない。

あたしはやっぱり、こいつが好き。
離れられない。
誰に何と言われても、この気持ちは変わらない。

それなら、あたしは、どうしたらいいの?
この答えはあるの?


「あのね、もしも...、もしも、あんたがあたし以外の人を好きになったら......」

『はぁ?何言ってんだ。そんなこと絶対にありえねぇっ!』

切羽詰まったつくしの質問を、司は最後まで聞いてはくれなかった。
そう言ってくれるのは嬉しい。
だけど、今、すぐ近くに海という女性がいるのだ。


「だから、もしも.....」

『お前、そんなこと考えてんのかよっ。ったく、相変わらずしょーがねー女だな。あのなぁ、もしもだぞ?もしもそんなことがあったら、お前が俺を奪い返せばいいだろ。』

「奪い...返す...?」

思いがけない一言に、堂々巡りをしていたつくしの思考がピタッとリセットされた。
こぼれそうだった涙も、途端に引いていく。


『俺ならそうする。お前が類のところに行くって言ったって絶対に行かせねぇ。絶対、俺に振り向かせてみせる。』

「類って...あんた、何言ってんの!?」

『あっ、お前、まさか、昨日の今日で、やっぱ類がいいとか言うんじゃねーだろなっ!!』

「ち、違うからっ!あんたこそ、あたしが知らないうちに他の女と・・」

『ありえねぇって言ってんだよっ!!いい加減、俺を信じろっ!!』



俺を・・信じろ。


目が、覚める気がした。
あたし・・・


答えなんて決まってた。
選択肢なんてなかった。
こいつのことが好きだから、あたしはこの手を離さない。
どこまでも追いかけて、絶対にこいつの隣を離れない。


過去が何だって言うんだろう。
過去にこだわって、今を信じなくてどうするの?



『お前が俺を好きでいる限り、俺は全力でお前を愛す。だから、心配すんな。お前は俺を全力で愛せ。』

「あんたって.....凄い。」

『あ?何を今更。類のところには行かせねぇぞ。』

「バカ、違うから。」


あんたって凄いよ。
いつだって、大切なものが見えてる。
あたしはいつもグルグル悩んで、大切なものを見失いそうになってばかり。


ごめんね。
あんたの気持ちを疑いそうになったの。
あんたが他の人を好きになるんなら、あたしはもういいって逃げようとした。

だけど、あんたは一言もそんなこと言ってないし、そうなると決まった訳じゃない。
何より、あんたはあたしだけだってずっと伝えてくれてるね。
海ちゃんのことがなくたって、これから他にも不安はあるかも知れない。
その度に悩んでどうするのよ。
あんたの言葉を信じなくて、他に何を信じるって言うのよ。



___司のこと、信じてあげて?

あの時の類の言葉、本当にその通りだ。
良く知りもしない人の言葉より、信じなきゃいけない人がいる。
大好きな人の言葉、それから大切な友人の言葉。



あぁ、もう.......

あたしは本当にダメだ。
こんなんじゃダメだ。
こいつを不安にさせるなんて恋人失格だ。

もっと強くならなきゃ。
どんなことがあってもあたしは道明寺から離れない。
あんたがよそ見しそうになったら奪い返す。
ううん...よそ見出来ないぐらいに愛せばいい。
それぐらいの覚悟をしなきゃ、あたしたちはこれから先、ずっと一緒になんていられない。


どうして、もっと早くそう思えなかったんだろう。
あたしは雑草のつくし。
どんなに踏まれても起き上がる強さを持っていたはずなのに。




「ごめんね。あたし、いつも臆病で。」

『俺は弱いお前も好きだ。』

「嫌だよ、あたしは。」


確かにあたしは何にも持ってない。
あんたにあげられる物は、何もない。
だけど、あんたのことが好きだっていう、この気持ちは誰にも負けない。
その気持ちすらも揺らいだら、あたしはあんたの隣にいる資格がない。

あんたを不安になんてさせない。
あたしもあんたを守りたい。
大切にしたいよ。



『牧野、俺はお前を信じてるから。』

「........うん」

『誰が何を言ったとしても、俺はお前を信じる。
 お前の言葉しか信じねぇから。』

「........うん」


『だから、お前も俺を信じろ。』

「......うんっ!」



もう、迷わない。

あたしは道明寺の言葉を信じる。

そして、自分の気持ちにも、絶対に嘘はつかない。
だって、こいつが好きだって言うこの気持ちは絶対に消せない。

絶対に.....消えない。





..................

...................................あっ・・





携帯を持つつくしの手が小刻みに震えた。
大きく目を見開く。

その先に映る何か。



道明寺だ・・・


記憶の中に、道明寺が見える。
今と同じクルクルの頭だけど、なんだか顔つきは幼い。
高校生の道明寺。


自分のTシャツを脱いで、あたしに着せてくれた。
ボロボロになったあたしをあんたが抱きしめてくれた。
あんたの香りが広がって、
あの時、あたしは世界中から守られている気がした。

そうだ、あの時も言ってくれたね。


『俺はお前を信じる』


あの時、あたしも、あんただけに真実が伝わればいいって思ったの。
誰に何て言われても、あんたにだけに信じてもらえたらそれでいいって。

そうだよ、あの時から、あんたはあたしのこと・・・


そうだ。
あの島で、あたしは誓ったんだ。

失いたくないものがあった。
それを守るための強さを取り戻そうって。

あたしは、もう二度と道明寺と離れたくないから。



___あんたが好きだって言ってるじゃない!!


ああ・・・
こんなに大切なことを、どうして忘れていたんだろう。

どんなに冷たくされても忘れられない、
絶対に消せない、大切な気持ちだったのに・・・




つくしはゆっくりと目を閉じた。
電話越しにしっかりと司の存在を感じながら、
今、もう一度伝えたい。



「道明寺.....」

『ん?』

思い出したよ、あたし。


「ありがとう。」

もう一度、あたしを好きになってくれてありがとう。
あたし、もう、逃げないよ。強くなるから。


「道明寺.....」

『だからどうしたんだよ。』


少し呆れたような、だけど優しいあいつの声。
安心するのは当たり前だ。
だって、ずっと待ってた。



「好きだよ。」


ずっと前から。ずっと、ずーっと前から。



『知ってる。』


心地よい司の声が、つくしの胸の奥深くに響いた。




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いつもたくさんの応援をありがとうございます。
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Comments 5

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おはようございます(*^^*) 

いつもたくさんの応援をありがとうございます!
先ほど34話投稿してきました。
日曜日に壊れた洗濯機...昨日業者さんが直してくれました。
感謝~(#^^#)!!
今でも停電が続く家庭もあると聞きます。この2日でもフラフラだった私。何か応援できることは無いのかなぁ...と考えながら、ただただ、当たり前の日常を送れることに感謝しなければと改めて思います。
世の中が便利になり過ぎて、不便になったものも確実にあるようにも思うのですが、もういい年齢ですし、そのなかで自分に必要なものを取捨選択しなければなりませんね(;^_^A

さてさて、海ちゃん...
やりやがったーっ!!です(>_<)!!

本当に書いている自分も気分悪くなる...
人間だれしも自分が可愛いものだとは思うのですが、ここまでとは...

けれど、司を信じると決めたつくしちゃんも無敵です!
そして、そう決めた時、封印された記憶も彼女に戻ってきました。

34話先ほどアップしましたが、皆さんの想像とはちょっと違かったかな?どうでしょうか?
35話以降も.....お楽しみに( *´艸`)


今日も纏めてのお返事でごめんなさい。
今から仕事行ってきまーす('◇')ゞ

2019/10/02 (Wed) 10:26 | EDIT | REPLY |   
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2019/10/01 (Tue) 21:12 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/30 (Mon) 07:58 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/30 (Mon) 06:03 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/30 (Mon) 05:39 | EDIT | REPLY |   

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