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Happyending

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「類とフランスに行くと聞いたんだが。」


考え込む牧野に、俺は唐突に切り出した。
いや、正直に言えば、裏の世界のことなんて実は大して心配していなかった。
道明寺の権力を使えば、牧野一家の安全を保障することなど容易かったから。
こじれるようならあきらに頼めば一発だろう。
それよりも、俺が気になっていたのは、このことだ。

「え?類.....いえ、花沢専務がそう言ったんですか?」
「ああ。」

パーティーの時から分かっていたが、彼女はあいつを『類』と呼ぶ。それはとても親密に聞こえ、大学の先輩後輩以上の関係を想像させた。

だとしたら、どうする?
少なくとも類は、彼女をフランスに誘っている。

俺は自分を落ち着かせようと、もう一度コーヒーを口にした。
すると牧野も姿勢を正し、紅茶を一口含んだ。
ゆっくりと飲み下してから、彼女はしっかりと俺に視線を合わせた。

「誤解です。“メゾンの仕事をみるのも勉強になる”と誘われたのは事実ですが、返事はまだしていなくて。」

類の言った通りだ。
『まだ返事待ちなんだけどね。』
あいつは確かにそう言っていた。



「迷ってるのか?」
「.........はい。」
「何故?」

牧野が黙ってしまう。
答えにくい...ってことなのか?

「類と付き合ってるんじゃないのか?」

これが、一番知りたかったことかも知れない。
かといって、例え答えがYESだったとしても、俺のとるべき道は決まっていたのだが。

「......違います。そういう風に誤解されることもあるみたいですが。」
「誤解?」
「花沢専務は、英徳大学の先輩です。」
「けど、類はお前をフランスに誘った。その意味は分かるだろう?」

分からないってことは無いだろう。
あいつだって花沢の後継者だ。
無責任に女を誘う筈がない。

「.............。」
「どうした?」
「類...いえ、専務に誘われたのではなく、フランス支社から招かれたのであれば喜んで行ったと思います。でも、専務は個人的に誘ってくれた。嬉しいけど、でも....そうやって人に甘えるのはどうなんだろうって...。」

俺の中に広がる安堵。
少なくとも、牧野は類に恋愛感情を持っている訳じゃない。
フランス行きを迷っているのは、類との距離を考えてのことだ。

だが、そうなるとまた疑問が生じた。

「男に頼って生きていくのは嫌ってことか?」
「そういう訳でもなくて.....」
「類以上の男なんてなかなかいないだろ?」

俺が言うのも変な話だが、
実際類に誘われて、断る女はいるだろうか?

牧野はうつむきがちになっていた顔をパッと上げた。
俺と牧野の視線が絡んだ。

「何だ?」
「類と一緒にいれば幸せになれるんだろうなって思うんです。でも...」
「でも?」
「それでいいのかなって思う自分もいて。」


クソ真面目な女だと思った。
花沢物産の後継者、そんな男と結婚すれば、何不自由ない生活が保障されるというのに。
しかも、大学時代からずっと仲がいいのなら、尚更だ。
なのに、そのぬるま湯に浸るような関係に疑問を抱いているのか?
男に言われるがままの自分は納得できないのか?

だとすれば、彼女を手に入れるためには、やはりこれしかない。


「でも、今となっては返事をしていなくて良かったと思います。」
「どうして?」
「だって、こんなことになって......。家族をおいてフランスだなんて、ありえませんから。」

牧野が唇を噛んだ。
その姿を見れば、「本当は類と行きたいんじゃないのか?」と問い詰めそうになる。

俺はぐっと拳を握り、なんとかその感情を逃がした。


行かせない。
その代わり、俺がお前を守ってやるから。

だから・・・





「牧野つくし、お前に提案がある。」


たぶん、今夜彼女を助けた時から、
俺の中にはこのセリフがあったような気がする。

「提案ですか?」

聞き返してくる牧野は全く警戒心を抱いていない。
呆れるぐらいに無防備な女。


「取引をしないか?」

「取引......って?」

予想外だったんだろう、意味が分からないというように、牧野はきょとんと首を傾げた。
そんな姿は28という年齢よりもずっと幼く見えた。



この時なら、まだ引き返せた。
彼女がもっと警戒したら、俺を訝しげに見つめたら、
そうしたら言うのを止めたかも知れない。

けれど、彼女の瞳は純粋だったから。
俺を信用しきっているのが分かったから。

勝算が見えた。
だから、後戻りはしなかった。




「俺は、お前とお前の家族の安全を保障する。」

「.......え?」


彼女は目を丸くした。
だが、すぐにその表情を引き締め、ゴクリと息を飲んだ。


「その代わりにお前は.....」

牧野はギュッと膝の上で拳を握った。


何を言われると思ってる?
見返りに体を要求されるとでも?


勘違いするなよ。
俺が欲しいのは体じゃない。
それは欲しいものの一つではあるが、それだけじゃない。

俺が欲しいものは・・・

朝も、昼も、夜も、俺の傍にいてくれる存在。



「俺の妻にならないか?」






牧野には選択肢はないと分かっていた。
自分に厳しく、他人に優しい。
家族や会社のことを考えれば、こいつは俺の手を取るしかない。
それに、今聞いた牧野の話も、俺にそう確信させていた。
類の誘いに迷うような真面目な女は、簡単に結婚を決めることは無いだろう。
けれど、自分以外の誰かのためなら...?
きっと、自分の人生を犠牲にすることも厭わない。
そんな、純粋で優しい彼女の心に付け込んだ。



___契約結婚


こいつが他の誰かにものになるのは許せない。
だから、こいつがどう思おうが、俺が手に入れる。


彼女を手に入れるタイミングは、類がいないこの時以外になかった。





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いつもたくさんの応援をありがとうございます(*^^*)
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Comments 6

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Happyending  
こんばんは(*^^*) ②

みみまま様
どんな司でも大丈夫ですか?愛があれば。
良かった...大丈夫!愛はたっぷり..でも、不器用なんです(;^_^A
最後まで応援してあげてくださいね(*^^*)

拍手コメ まぁ●様
ぎゃっ!! 設定被っちゃってますか?? 申し訳ない(;・∀・)
でもでも、花男の二次って設定同じで違うお話っていーっぱいあるので、大丈夫...かな?(;´・ω・)
大丈夫だと信じたいですが...。
お子様体調いかがですか?
二次は仕事ではないですし、余裕のある時に。
まぁ●様のお話をのんびりとお待ちしています(*^^*)


さて、充電終了。
眠くなるまで続き頑張ります!
ではでは、また~(*^^*)

2019/11/07 (Thu) 22:34 | EDIT | REPLY |   
Happyending  
こんばんは(*^^*) ①

いつもたくさんの応援をありがとうございます。
はー、一日があっという間です。もう夜だ...。
続き書かなきゃと思いつつ、頭が回りません...(;´・ω・)

司の提案...予想通りでしたか?ww
どうでしょうか?お話がゆっくりと進んでいるので、ジレジレしちゃってるかな?ごめんなさいです。
気長にお付き合い頂けると嬉しいです~(*^^*)

スリ●様
つくしちゃんサイド気になりますか?
一応次はつくしちゃんサイドで書こうと思っています。
『ブラックバカラ』は三人称で書いていたので、どっちサイド...とかそんなに気にしていなかったのですが、久しぶりに一人称表記に戻ると、どっちで書こうかな~とか悩んじゃいます。
でも、ここはつくしちゃん...ですね!スリ●さんの頭の中と繋がるでしょうか...?

花●様
不器用なアラサー司(≧▽≦)!! 笑ってしまった...。そうなんです。ブラックなようで、本気のブラックでもない...かな?高校時代につくしちゃんに出会っていないから、初恋ってことになるはずですww アラサーの初恋...どうなるでしょうか?一緒にジレジレして可愛がってあげてください( *´艸`)

2019/11/07 (Thu) 22:28 | EDIT | REPLY |   
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2019/11/07 (Thu) 09:31 | EDIT | REPLY |   
みみまま  

お話の続きありがとうございます。

Go Go 坊ちゃん!
愛があるなら、どんな坊ちゃんでも大好きです。

2019/11/07 (Thu) 08:23 | EDIT | REPLY |   
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2019/11/07 (Thu) 08:22 | EDIT | REPLY |   
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2019/11/07 (Thu) 06:00 | EDIT | REPLY |   

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