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Happyending

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1月に入って1週間が過ぎた。
司さんの誕生日パーティーの準備はシェフやタマさんと相談しながら少しずつ進めてるところ。


「あ...そうだ、司さん。今週末って大使館主催のパーティーがあるの?」

今日も11時過ぎに帰宅した彼がシャワーから出てきたところで、そう言えば.....と思い出したことを聞いてみた。

去年からお義母様に言われていたの。『年が明けたらパーティーが増えるから、頑張りなさい』って。特に年始の各大使館主催のパーティーはマスコミが入らないことがほとんどらしくて、私が初参加するには丁度いいんじゃないかってアドバイスを下さった。その中でもK国のパーティーは司さんのビジネスの上で重要で、それが今週末だったんじゃないかと記憶していた。淑女教育は始まったばかりだけど、とりあえずパーティーを見据えてマナーを第一に叩き込んでるから、私もそろそろ彼の妻らしいことができたらいいのに.....なんて思ったりするんだ。

なのに、

「は?パーティー?」
「うん。お義母様から、少しずつ慣れていきなさいって言われたから。」
「それいつの話だ?」
「年末だったかな。」

ふぅ・・って、彼は呆れたように溜息を吐いた。

「それって、妊娠のこと知らなかった時だろ?」
「そうだけど.....」
「今は具合が悪いんだし、パーティーなんて出る必要ねぇよ。」
「でも...、私、結婚してから妻らしいこと何もしてない。」
「そんなこと気にすんな。ただでさえお前は危なっかしいんだから、パーティーで何かあったらと思うと俺の心臓が持たねぇ。」
「そんなこと言わなくたって...。」

つわりで気分が悪いこともあるけど、どっちかというと貧血の症状の方が強いんだと思う。
ふらつくことがあって心配かけちゃったのは申し訳ないけど、彼はいろんなことを過度に心配して、あれはダメこれはダメって言うんだ。そんなことを言っていたら、妊娠しながら働いている女性はどうするのよって言いたい。
でも、パーティーに関しては、私も彼の足手まといにならないとは言えなくて、強気で『行きたい!』だなんて言えないんだけど。


「ほら、もう寝るぞ。」
「.........うん。」

「おやすみ」
「おやすみなさい」

いつもと同じ、彼からのキス。
そして、温かい胸の中で眠りにつく。
しばらくすると、彼の寝息が聞こえてきた。




でも......

最近よく眠れないんだ。
自分の妊娠の事実に、実は私が一番戸惑っているのかも知れない。


両想いになったからなのかな?
私、ちょっと我儘になってるのかも。
もっと彼と一緒にいたい......そんなことばかり考えちゃう。

もっと彼のことが知りたくて、
もっと彼と触れ合いたい。
これまで我慢していた分も、もっと。
そんな気持ちが日に日に強くなる。

赤ちゃんが来てくれたから...
夜の営みも控えるようになった。

それは赤ちゃんのためにはそうすべきだって分かってるの。でも、これまで本当に毎晩触れ合っていて、抱き合うことで彼を独占しているっていう安心感があったみたい。だから今、その触れ合いが無くなると、両想いだと分かっているのに、急に不安になる私がいる。

こんなこと、絶対に司さんには言えないけど。


たぶん.....
私の恋愛経験が、圧倒的に少ないんだ。
この年になるまで、恋愛をしたことがなかったから。
だから、彼が好きだっていうこの気持ちを持て余しているんだと思う。
司さんと知り合ったのも数カ月前で、まともに話をしたのはあの雨の日だった。
本当はもっと色んな話をしたり、デートをしたり、触れ合ったり、そんな濃密な時間過ごしてから結婚するんだよね。赤ちゃんだってその結果として来てくれるはずなのに、私たちは出会ってすぐに結婚して、両想いだと分かった途端に赤ちゃんができたから、私の恋愛期間は極端に短い。
お見合い結婚みたいなもの?そう考えれば割り切れるのかも知れないけれど、彼と両想いだと知ってしまったから割り切れない。

どんどん好きになって、どんどん独占したくなる。
パーティーなんて興味もなかったはずなのに、彼と少しでも一緒にいられるのなら行ってみたい。
昼間のデートなんて、あの1時間のデートしかしたことが無いんだよ。
例え仕事でも、彼の傍で、彼を見ていたい。
それに、きっと彼の周りには素敵なドレスを着た綺麗な女性がいっぱいいるんだろうな......なんて思ったら不安で仕方がなくなるの。それはたぶん、嫉妬だ...。

司さんは違うのかな?
もちろん赤ちゃんは大切だけど、
少しでも私と一緒にいたいって、
思ってくれないのかな・・・?





***



抱きしめたつくしの体から完全に力が抜け、スースーと寝息に変わったのを確認して、俺はホッと息を吐き出した。

狸寝入りってわけじゃねぇ......けど、気を抜くとヤバイ。
妻は妊娠の初期で、そーいうことは控えなきゃなねぇのに、
俺の体は彼女とベッドに入ると完全に反応しちまうし、無意識に彼女のパジャマの中に手を突っ込みたくなる。その衝動を抑えるには、早々に寝たフリをするしかねぇ。そうして俺は、体に溜まる熱を持て余しながら、彼女の寝息が聞こえるのを待つ。

はぁ.....自分が情けねぇ。

これはたぶん......
圧倒的に恋愛経験の足りない俺のせいだ。
総二郎たちみたいに女慣れしていたら、30間近にもなって、今更夜に妻を抱かなきゃ眠れねぇなんてことはないんだろう。
けど、俺の場合、つくしに出会うまでは抱きたい女なんていなかったし、女の体に嵌ったこともなくて、30歳目前になってがっつり目覚めちまったもんだから、結婚してからはもう毎晩のように彼女を貪ってた。それが彼女との唯一の繋がりだったってのも理由かもしれねぇけど。その結果、つくしが妊娠するのは当然で、それが分かっていなかった訳じゃない。彼女の妊娠は本当に嬉しくて、つくしの中に俺たちの子供がいるってことに感動してる。ただ、自分の体は正直で、愛する女にもっと濃厚に触れたいって欲望を抑えるのはなかなかキツイ。

それが、つい先日両想いだったと分かったばかりの、自分の妻だとなれば尚更で...。

彼女に溺れたい。
彼女が乱れる姿を見たい。
両想いだと分かって、余計にそんな風に思うなんて。

あー、くそっ。
俺ってヤツは何でこうなんだっ。
彼女を幸せにするって何度も誓っただろーがっ!
彼女のハジメテをあんな形で奪ったくせに、まだ自分勝手な考えに陥るなんて。


愛し合いたい。
抱きしめて、抱き合いたい。
今からすでに安定期って時を心待ちにしているなんて、
彼女に知られたら、マジで呆れられるよな。


大使館のパーティー.....か。
確かにババァも言っていたが、今年は彼女を連れて公の場に出ようと考えていた。
けど、あの状態だ。
ちょっと気を抜くとふらついたり、迷子になったり...。



そうそう、迷子と言えば、彼女の誕生日の翌日。
朝起きると腕の中にいたはずの妻がいないと気づいた時には心臓が凍るかと思った。
室内を歩き回り、全ての部屋を確認して、どこにも彼女がいないと分かった時、俺はみっともねぇことにすぐにはどうしたらいいのか分からず、西田に電話しちまってた。

『つくしがいなくなった!』
『は?落ち着いて下さい。携帯電話は?SPはどうしていますか?』

それで慌てて、つくしの携帯を鳴らしてみると、ソファーの方から振動が聞こえた。
見ればつくしのバッグはそのままで、中で携帯が震えていた。開けてみると携帯はあるが、財布がない。
それで、俺はもう一度西田に電話した。

『つくしの財布がねぇっ!』
『SPは地下駐車場で待機していたそうですが、奥様を見ていません。もしかすると買い物に出かけられたのでは?』
『買い物は昨日行ったんだよっ!!』

財布だけ持って出て行っちまったと思った俺は、スエットパンツにコートを羽織り、マンションを飛び出した。その頃にはSPたちも方々に散らばりつくしの捜索が開始されていた。マンションの防犯カメラの画像から、つくしは朝7時前にマンションの正面玄関から出て行ったらしい。それは俺が気づく40分以上前だった。

どこをどう走ったのか、手掛かりらしきものは見つからない。
仕方ねぇ、つくしの実家に電話を入れようとしたその時、反対の歩道に白いダウンコートを着た女が見えた。きょろききょろとしながら片手にビニール袋を持って歩いている。

『つくしっ!!』
『へっ・・・えぇっ!?』

俺は車の流れが切れたタイミングで反対の歩道へダッシュ。
そこでようやく妻を確保した。

で、・・・・・・結局何だったのかというと、
雑炊に使う卵の買い忘れに気付いて、財布だけを持ちコンビニに出かけたんだそうだ。
でも近くにコンビニが見つからず、だいぶ探してコンビニで卵を買ったら、今度は帰る方向が分からなくなったんだと。携帯も持ち歩くのを忘れたもんだから、俺に連絡も出来ずにマンションを探してうろついていたらしい。

コートとブーツは身に着けていたけど、手袋も帽子もしてねぇし。
こんなことになるとは思わなかったんだと苦笑いするつくしに俺が激怒したのは言うまでもない。

俺は、彼女が俺をおいて出て行ったのかと思って、もういてもたってもいられねぇぐらい焦ったってのに。

『心配かけてごめんね。けど、どうして私が出て行くの?』
『置手紙も無かったら心配すんのは当然だろ。』
『すぐに戻るつもりだったから...。』

直ぐ戻るつもりだったじゃねーよっ。
どうしてこうもボケてんだ。
これで万が一、その辺で倒れたりしてたらどうするつもりだったんだっ!!



・・・・・って、そんなこともあって、
つくし曰く、俺の『過保護』っぷりに拍車が掛かったらしい。

でも、心配にもなるだろ?
パーティーだって、常に俺が付き添っていられる訳じゃない。
なのにこんな無防備な女を連れ回るなんて、俺の心臓がいくつあっても足りねぇだろ?









「............ハァーッ」

「寝不足ですか?副社長。」


会社の執務室で、俺が大きく欠伸をすると、それを見た西田が速攻で痛い所を突いてきた。
そんなこんなで、夜は忍の一字を強いられている俺は、決して短くはない睡眠時間をとっているというのに寝不足だ。
そんなこともこの優秀な秘書に見透かされてるのかと思うと頭が痛ぇ。


「K国大使館主催のパーティーの件ですが、本当に奥様は同伴されませんか?奥様も御病気というわけではありませんから、表に出た方が気分転換になるのでは?あれこれ規制されては息も詰まるでしょうし。」

・・・・・・・・・。


流石は西田。
それは俺だって分かってる。
危ないことはするな、家事なんてメイドに任せろ、外出は控えろ、外に出るならSPを連れて行け......等々言われて、つくしだって面白くないだろう。

K国は石油輸入の直接契約を結ぶため、今交渉を詰めている国だ。
だから、ここのパーティーは外せない。
俺だって、夜だけじゃなく昼間にあいつに堂々と会えるのなら、何度でもパーティーに連れ出してぇけど、危なっかしいあいつを今外に出すのは心配だ。それに巷ではインフルエンザも流行っているらしいし.....どう考えても無理だ。


「今は無理だろ。安定期に入ったら考える。」

「そうですか。ではそのように手配致します。」


もしこのパーティーがパートナー同伴必須だったら.....
俺は、つくしを連れて行ったに違いない。
でも、このパーティーはそうじゃなかった。

つくしのお披露目は落ち着いてからでいい。
ババァだってそれで納得してる。
だから、こう決めたんだが......


このことを後から悔やむことになるだなんて、
この時の俺は、露ほども思っていなかった。




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ちょっとだけドキドキモードへ...(;^_^A
いつも応援、ありがとうございます(*^^*)
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Comments 9

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Happyending  
こんばんは~(;´・ω・)

いつもたくさんの応援をありがとうございます(*^^*)
いや~、両想いになってもジレジレさせたくなって...。
...、落とし穴、ちょっと大きく掘り過ぎたかも~(>_<)!!

32話は、皆さまから石や槍が飛んでくるかもです...。
できるだけ早くサクサクと通り過ぎたい部分です(;^_^A

そんなわけで、今日も纏めてのお返事ですみません。
見直しして、朝にセットするつもりです。

あ、ふに●様。時々、同じ間違いの方がいらっしゃいます(笑)。
お気になさらずに...です~。


しばらくドキドキモードが続きますが、こっそりのぞいて頂けると嬉しいです。
ではまた、続きで(*^^*)

2020/01/20 (Mon) 00:38 | EDIT | REPLY |   
みみまま  

つくしちゃん、なかなかの
ドジっ子ちゃんですね(笑)

そりゃ連れて行けない!なんて同意してたら
コレが火種!?

今更ですが坊ちゃんが「妻」って言うの
大好きなんです💕


トラブル?楽しみにしてます!

2020/01/19 (Sun) 23:03 | EDIT | REPLY |   
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2020/01/19 (Sun) 19:48 | EDIT | REPLY |   
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2020/01/19 (Sun) 19:16 | EDIT | REPLY |   
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2020/01/19 (Sun) 08:46 | EDIT | REPLY |   
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2020/01/19 (Sun) 00:36 | EDIT | REPLY |   
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2020/01/18 (Sat) 21:50 | EDIT | REPLY |   
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2020/01/18 (Sat) 20:44 | EDIT | REPLY |   
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2020/01/18 (Sat) 19:46 | EDIT | REPLY |   

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