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Happyending

Happyending

「ククッ、で?司んところのロビーで弁当ぶちまけたの?」
「ぶちまけてはないの。タマさんがしっかり風呂敷で包んでくれてたから。」
「懐かしいな、タマさん。あの人まだ生きてたのか。」
「類ったら、失礼だからね。あ、ねぇ、パンもう少しもらっていい?」
「どうぞ、どうぞ。」

牧野が目の前のバゲットに手を伸ばした。
相変わらず、気持ちいいぐらいによく食べる.....リスみたいだ、クククッ。

「......また笑ってる。」
「だって、牧野とご飯食べるの久しぶりじゃん?」
「そうだねぇ。」

バターまでたっぷり付けてるけど、妊婦ってこんなんだっけ?

「妊娠したらさ。あの、オエッっていうのになるんじゃないの?」
「うん。そういうこともあるんだけど。私の場合はどちらかというと空腹がダメみたいなの。少しずつお腹に何か入っていた方が調子よくて。食べ過ぎるのもダメなんだけど。こういうの、“食べづわり”って言うんだって。」
「へぇ、面白い。牧野っぽい。」
「もぅ!それにね、私、元々はご飯が大好きなのに、今は絶対にパンなの。不思議だよね。」
「ふーん。でも司はパン派でしょ?良かったじゃん。」
「えっ!?.....あ、うん、そうなんだけどね...。」

こうやって時々司の話を振ると、はにかんで下を向く。
あぁ、本当に司のことが好きなんだなって痛感させられる瞬間だ。
牧野って昔から、これと決めたことには一途なんだよね。他が見えなくなるって言うか。大学時代は勉強とバイト、就職してからは仕事にのめり込んでた。そこには『恋愛』の二文字は無かったけど、今思えば、あの頃からずっと司のことばかり目で追ってた訳だから、やっぱり恋愛に関しても一途なんだよな。その相手が俺じゃないのは悔しいけど...。


俺たちは今、俺んちのダイニングでランチ中。
司の許可も取ったよと伝えたら、牧野は安心してついて来た。牧野の命令?で、あの林っていうSPも隣の部屋で食事中だ。
どこかのレストランも考えたけど、この状況だ。牧野にとって安全な場所を考えたら、ここしかなかった。牧野は何度もうちでご飯を食べていて、その度に毎回シェフを絶賛するから、突然の訪問でもメイドもシェフも大喜びだしね。


「貧血でふらついたこともあったけど、それもだいぶ良くなったし、つわりも酷くないし、私は至って健康体なのに、司さんは過保護で困ってるんだ。昨日もね、お義母様から大使館のパーティーは初心者向きだから出席したらどうかって言われてたのに、司さんったら妊娠中なんだからダメだって言うんだもん。そんな事言っていたら世のワーキングウーマンはどうすればいいのよねぇ。」

・・・・・・・。

牧野には悪いけど、これに関しては、俺は司の気持ちも分かる。
弁当事件や迷子事件の話を聞くと、いくら本人が大丈夫だって言ったって、今度は何をやらかすかって心配にもなるだろ?
牧野って、頑張り屋で一生懸命なんだけど、融通が利かないって言うか...。苦労を苦と思わないようなところもあって、逆に見ているこっちがハラハラするんだよね。それは大学の時からずっと思ってた。だからこそ俺は、牧野からずっと目が離せなくて、気づけばいつも一生懸命な彼女に惹かれていた。

「パーティーって常に牧野をエスコートしてる訳にもいかないから、司は心配だったんでしょ。」
「あのねぇ、私だってもう30近いのよ?高校生や大学生じゃないんだから、何かあったって自分で対処できるわよ。私は世間知らずなご令嬢じゃないんだからね!」

牧野って、ホント分かってない。
ご令嬢じゃないからこそ心配なんだよ。余計に無垢で純粋だから。
何かが起きてお前が傷付くんじゃないかって、司も俺も気が気じゃないんだ。
今回のことだって.....そうだ。


「自分の妻を守ろうとするのは、夫として当然でしょ?」

今頃になって、俺はどうして司のフォローなんてしているのかと苦笑いだ。
そんな俺に、牧野が言った。

「そうかも知れないけど。でも、私だって妻として、何か役に立ちたいって思うんだよ。守られてばかりいたら、何も学べないし成長しないじゃない。」

なるぼど、牧野らしい・・と思った。
結婚したんだから司に甘えてればいいじゃんって思うけど、牧野はやっぱり牧野だ。何にでも全力投球で、男の俺たちとも対等でいたいって考えてる。
俺は、司にちょっとだけ同情する。
こんな妻だったら、なかなか苦労するな、あいつも。まぁ、今のところは大人しく司の指示に従ってるみたいだけど、牧野は元々そんなにしおらしい女なんかじゃないんだから、いつか爆発しそうだ。でも、そんな牧野に、司はあーだこーだ言いながらも、色々やらせてやるのかな、陰からこっそり見守りながら......、なんて思ったらやっぱり羨ましい。

あいつの役に立ちたい......か。
男って、好きな女が傍にいるだけでパワー貰えるもんなんだけど、きっと牧野にはそういうことは理解できないだろうな。


「司さんだけじゃないわ。類だって、私のことすぐに甘やかすでしょ?」
「好きな女に優しくするのって普通じゃないの?」
「すっ...好き...っ!?」
「当たり前でしょ。何を今更。」
「うっ...。で、でもね?私は雑草のつくしだよ?踏まれたってちゃんと立ち上がれる女なんだから。だから、過度な心配はご無用です!」
「ふーん。」

過度な心配.....ね。
俺たちが牧野を心配するのって、彼女にとってはお節介なのかもな。
彼女が自分の力で乗り越えるべき事柄なら尚更。
でも、今回の記事関しては、牧野が努力したからってどうにかなることじゃないよね。
司の疑惑は、司が晴らさなきゃどうにもなんない。

しかし、司も本当に迂闊だ。
女とスイートに入るって、普通しないでしょ?
ん?それなら、あいつは、どうして大河原とスイートに行ったんだろう。
それに、セキュリティーチェックの高いホテルのエグゼクティブフロア内で、どうしてあんな写真は撮れたんだろう。

「類?」
「あ、ごめん。」
「ねぇ、さっきから携帯気にしてるね。もしかして、まだ仕事が残ってる?」
「いや、違う。仕事じゃないんだけど、連絡待ちってだけ。」
「そう?」

牧野がいつもの愛くるしい大きな瞳で俺を見上げた時、タイミング良く俺の携帯が鳴った。

すぐにディスプレイを確認して、
「ちょっと待ってて」
と牧野に言い残し、ダイニングを後にする。
そして、早足に自室へ向かいながら通話ボタンををタップした。









「ご無沙汰しております」
「久しぶりだね、西田。あんたから連絡がくるってことは、司、手こずってる?」

司かと思われた着信はあいつの秘書、西田からだった。

「いえ、出版社への訴訟も含め、すでに動いております。2時間後にメープルで緊急会見となりますので、そちらをご覧になって頂ければと思います。」

俺は、流石に耳を疑った。
メープルで緊急会見だってっ!?

「どういうこと?まさか、司が謝罪するんじゃないよね?」
「花沢様、御冗談を。潔白を明らかにするためでございます。」
「会見までする必要ある?記事を取り下げて、出版側に謝罪文を出させればいい話でしょ?」
「本人の口からはっきりと否定しなければ、いつまでもマスコミが騒ぎます。司様はこの騒ぎを一気に収束させるおつもりです。」

それはその通りだ。
会見で司が昨日の事実を語れば、司の潔白が証明される。
でも........

「ねぇ、実際のところ、司は誰と会ってた訳?スイートで。」
「それは、今は申し上げられません。」
「今は?」
「会見ではっきりさせますので。」

簡単には言えない人物ってことか.....。
けど、それを会見で明らかにするって?
それって、司にとってかなりリスキーな話なんじゃないだろうか...。
西田が俺に電話を掛けてくるなんて、何か変だ。

「あのさ、西田は何で俺に連絡してきたの?」
「どうしてだと思われますか?」
「......牧野でしょ?」

嫌な予感がする。
西田は頭のキレる男だ。
あの司をコントロールできるのは西田しかいない。
その西田が、恐らく司の指示ではなく俺に連絡をよこしたってことは、絶対に何か意図がある。

「奥様は、昨日司様が本当は誰と会っておられたのかご存知のはずです。」
「そうなの?」
「はい。ですが、会見でその人物を公にすることで、今後司様とその人物との交渉は困難になるでしょう。」
「昨日は密会だったっていうこと?」
「左様でございます。」
「司の口から密会を公にするってことは、つまりK国の反対派がリークしたってことだね。」
「流石でございます、類様。」

嫌味な奴。
けど、これで、複雑なパズルがパチパチと組み合わさっていく。
これは単純なスキャンダルじゃなかったらしい。
司の身の潔白を証明することは、司のビジネスが暗礁に乗り上げるということ。
会見を開くということは、事実上、K国との交渉失敗ということになる。
司はビジネスより牧野が大事なんだから、それでいいんだろうけど...。もしこれが俺だったとしても、きっとそうしてる。

........ん?

「ちょっと待って!牧野は密会の相手を知っているって?」
「はい。司様がこのプロジェクトに意気込んでいらしたこともご存知です。」

はぁ・・・なんてことだ。

思わず漏れる溜息。
西田が言いたいのは、司のビジネスのことなんかじゃない。
ビジネスに関しては、西田は司の判断に従うだけだ。
けど、司のビジネスが失敗したと知った牧野はどう思う?
それが自分のせいだなんて知ってしまったら、あいつの役に立ちたいんだと言っていたあいつは、自分を責めるに決まってる。

「なんて厄介な.....」
「本当に。」

それでも、いきなりあの記事を牧野が見てしまうよりは良かったけど。
俺はあの記事から牧野を守るナイトだったはずなのに・・・

「西田、お前って流石だね。嫌な奴。」
「恐れ入ります。」

俺の役目は、牧野のナイトには収まらないらしい。
この複雑な事実を、彼女にショックを与えることなく伝えられるか。
そしてそれを知った彼女をどうするのか。

ああ、もうっ!
久しぶりに牧野とゆっくりできると思ってたのに。
司の奴、この貸しはデカいぞ。


「.........分かったよ。でも、あんまり期待しないでよね。」
「よろしくお願いいたします。」
「難しかったら、全部ぶっちぎって牧野とフランスに逃げるから。」
「大丈夫です。司様が出国を阻止しますから。」

あいつには、マジでそういう権力があるから怖いんだけど!

ふぅ...


「会見は2時間後だね。」
「東京メープル 扇の間でございます。」
「分かった。」


あーあ、俺って、本当に損な役回りだ。




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いつもたくさんの応援をありがとうございます(*^^*)
長くなってしまい途中で切りましたが、続きだいぶかけているので、明日には投稿できそうです('◇')ゞ
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Comments 7

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(訂)こっそりお返事 ②

こっそりとお返事 ②
みみまま様
本当に!西田さんは人を使う天才!だと思います。
類君も西田さんに言われたらやらなきゃですよね(;^_^A
西田さん、流石です(*^^*)

Po●様
ワクワクしてもらえてますか?それは嬉しい!!
この先の展開は皆さんの予想通りなのかな~とか、こちらもドキドキしています( *´艸`)
どうでしょうかね??(笑)

拍手コメ あやまま様
うーむ、このコメントを読んでしまうとどこまで書くか迷っちゃうなぁ(;^_^A
とにかく一度はFinを打ちたいんですが...(;・∀・)
私の気分次第?? 最後まで楽しんでいただけますように(*^^*)

拍手コメ ココリン様
はじめまして(*^^*)
イメージと同じですか?嬉しいです\(//∇//)\
わくわくして頂けるのも書いている甲斐があります(笑)
最後まで楽しんで頂けるといいな〜(*^^*)

拍手コメ vi●様
そうなんですよ~。ワンパターンで終わるのもなぁ...と思って穴を掘ったらこんな展開に...(;・∀・)
なんだこれ?サスペンス??(笑)始めの雰囲気はどこ行ってんだ?と自分に突っ込んでます(笑)

2020/02/02 (Sun) 08:20 | EDIT | REPLY |   
Happyending  
こっそりとお返事 ①

いつもたくさんの応援をありがとうございます。
気付く人がいるか分かりませんが、今更お返事を(笑)

花●様
えへへ、西田×つくし??(笑) ナイナイ!司が許しません(笑)。
今回のお話では西田さんも初めはびっくりしたと思うんですよね~。
どこかで西田さん目線も書きたい気もしますが...番外編かな?(;^ω^)

チェ●様
本当は、このお話のピークをBDに持ち込みたかったのですが...気力的にも間に合わず(;'∀')
なので、BDは深く考えずにラブラブな短編になりました(笑)。
このお話ではこれから司BDになりますね。そこでもう一度お祝いしようかな(*^^*)

スリ●様
今回は西田さんの独断で類君にTELしましたが、これって、司はどう思うのかな~とか書きながら考えていました。司って、つくしちゃんに相談とかしないと思うんですよね~。つくしちゃんにはいい所見せたいし、自分で解決する力を持っているから。でも、きっとつくしちゃんは一緒に頑張りたいんじゃないのかな~なんて...そんなことを考えながら書きました(*^^*) それにせっかく登場させた類君にも活躍してもらわなきゃですしね~(笑)。

2020/02/01 (Sat) 23:21 | EDIT | REPLY |   
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2020/01/30 (Thu) 11:53 | EDIT | REPLY |   
みみまま  

サスガ、世界一の秘書!

ルイ王子なら謎解き出来ると見込んで
その後の処理まで王子にして貰っちゃう
とは恐れ入ります。

人を使う天才ですね。

どんな展開かソワソワします!

でも、まだ終わらないで〜!
もっと読ませて頂きたいです。

2020/01/29 (Wed) 23:39 | EDIT | REPLY |   
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2020/01/29 (Wed) 22:26 | EDIT | REPLY |   
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2020/01/29 (Wed) 21:00 | EDIT | REPLY |   
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2020/01/29 (Wed) 19:58 | EDIT | REPLY |   

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