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Happyending

Happyending

「おはよ。」

目が覚めると、司さんはもう起きていて、相変わらず甘い目つきで私を見つめていた。
早起きなんだから。今日ぐらいゆっくりしていたらいいのに。
だって今日は・・・

「お誕生日、おめでとう。司さん。」
「サンキュ。」

司さんの30回目のお誕生日だ。

「今日はお休みでしょ?もう少しゆっくり寝てて。」
「お前も寝るか?」
「や...私は今夜の準備で忙しいから...。」
「何日も前から張り切ってるんだから十分だろ?」
「ダメだったら!」
「ちっ。昨日だって明日があるからって言ってただろ。俺の誕生日ってだけなのに、どうしてお前が張り切るんだ。」

司さんは二人きりで誕生日パーティーがしたかったみたい。
来年は家族が増えているから二人きりなんてこれが最後だからって。
そう言われてみればそうだなぁって思うんだけど、でもやっぱりご両親はお誘いしたかった。
だって私、お義父様にはご挨拶もまだなんだよ?そういうの分かってるのかしら。

むぅっと膨れてる司さんの髪にちょっとだけ寝ぐせが付いてて可愛い。
ご機嫌斜めなんだけど、本気で怒ってるんじゃないことは分かる。
あの記事の一件から、お互いに伝えたいことは伝えるようにしてる。
以前より遠慮が無くなったなぁと思う、二人とも。
どんなことがあっても、私は彼を嫌いにならないし、彼もそうだと信じてる。

「機嫌直して?あっ、ねぇ、プレゼントがあるの!」
「ん?」

ふくれっ面のままチラリと私を横目で見る司さん。
大きな体をしてるのに仔犬みたいな仕草をする、そのギャップが堪らない。

私がベッドを下りると、彼は仕方なく体を起こした。

「はい、これ。ハッピーバースデー!」

奥の部屋に隠していたプレゼントを彼に渡す。

「プッ、それさっきも聞いたって。それに、欲しいものは自分で言うって言っただろ?」
「だけど結局何も言ってくれなかったじゃない。」
「色々考えてる。例えば、今夜....」
「そっ、そーいうのはダメだから!」
「何だよ。誕生日は特別だろ?」

彼がニヤッと笑った。
もぅっ。でも、嫌じゃないから困っちゃう。
何もいらないとか言ったくせに、彼は嬉しそうにプレゼントの包み紙を外し始めた。
中に入っていたのは写真立て。
だってこの部屋には写真が一枚もない。
これから赤ちゃんが生まれて、家族はどんどん大きくなる。
その時々の写真を残しておきたいと思ったから、今年のプレゼントはこれに決めた。

「写真....か。」
「うん。私たちまだ1枚も写真撮ってない...でしょ?赤ちゃんも生まれるし、実はカメラも買っちゃったの!」
「カメラ?」
「そう、司さんと赤ちゃんの写真が欲しいなぁと思って。」

これまでスクラップしていた写真は司さんがどこか知らないところを見ている写真ばっかり。
それだってカッコいいんだけど、やっぱり欲しいでしょ?私が構えるファインダー越しの彼の写真!

でも、......あれ?司さんが黙っちゃった。

「どうかした?」
「写真は嫌いだったな、ずっと。」
「えっ!うそっ、ごめんっ!!」

慌てて彼の手にある写真立てを取り戻そうとしたの。
でも、差し出した腕を掴まれて、ギュッと彼の胸に抱きしめられた。

「でも、今は欲しい。俺は、お前の写真が欲しい。」
「...え?」
「部屋中にお前と子供の写真が溢れてるっていいな。」

うん。そうだね。
家族写真はたくさん欲しいな。
司さんの仕事はきっとこれからも忙しくて、私や子供と過ごせる時間は限られるに違いない。
もしかしたら、私も子供も寂しいって思うかも知れない。かつての司さんや椿さんがそうだったように。
でも、写真を見れば分かると思うの。司さんがどんなに家族を大切に思ってくれているかっていうことが。ちゃんと伝わると思う。
だからこれからの毎日は、一瞬一瞬を大切にしよう、
その大切な時間を写真に収めたいなって、そう思ったんだ。

「司さんも、一緒じゃなきゃダメだよ?」
「おぅ。」
「絶対だよ?」

写真立てを見つめる彼の口元が崩れてホッとした。
私は、彼のこういう少し照れたような笑い方が好きだ。


「じゃあ、早速出掛けるか?」
「えっ?出掛ける?どこに?」

司さんは写真立てを丁寧にベッドサイドに立てて、私の顔を覗き込んだ。

「デートに決まってんだろ?俺の誕生日なんだ。俺のやりたいことをする。」
「でもっ。今日はお義父様たちがいらっしゃるのよ?」
「どうせ夕方だろ?」
「だから、粗相が無いように最終チェックしなきゃ。」
「そんなのどうでもいい。写真撮りに行こうぜ。カメラはどこだ?」

クシャッと私の髪を撫でると、彼はさっさとベッドから下りてシャワールームに向かっちゃう。

「司さんってば!」

止めようとしたら、振り返った。

「まともなデート。したことないだろ?俺たち。」
「まともな....デート?」

そう言われてみればそうなんだ。
強いて言えば、手袋と帽子を買ってもらったあの1時間のデートぐらい?
あとは司さんが忙しかったし、妊娠が分かったりで、二人きりでゆっくり出かけるなんて出来なかった。

デート・・・かぁ。
これを逃したら次はいつになることやら...だよね?

「ほら、行くぞ!」
「うん。じゃあ、準備のことはタマさんとシェフの小林さんに頼んでくるね。」
「もう十分だろ、準備は。」

司さんは呆れ顔だけど。そうはいかないのよ。
だって今日はパーティーのホストなんだもの。

パタパタと走り出したらいつものように『走るなっ』って怒られて、思わず笑ったらまた怒られた。
司さんの過保護っぷりは相変わらずなんだ。






***



「ねぇ、どこに行くか決めてる?」
「まぁ、なんとなくは?」
「どこどこ?」

軽く朝メシを食った後、つくしとリムジンに乗り込んだ。
なんだかんだ言ってワクワクして落ち着かない妻が可愛い。
彼女の膝の上には一眼レフカメラ。ちゃんとファインダーも付いてるが、こいつが使いこなせるのかは疑問だ。

「カメラ貸せよ。」
「司さんが撮るの?」
「俺の方が上手いと思うぜ?」
「大丈夫だよ。女性でも使いこなせますって書いてあったもん。」
「ククッ、どうだかなぁ。」

彼女がピンボケ写真を撮りまくってる様子が目に浮かぶ。
それにファインダーにばかり集中して足元の段差にも気づかなさそうで、なんなら専属のカメラマンを雇った方がいいかとも思ったが、カメラを大事に抱えている彼女を見ると言い出せなかった。

写真が欲しい・・・か。
言われるまでは考えたことも無かった。
こそこそと盗み撮りをされるのには嫌気がさしてたし、取られた写真が勝手にゴシップ紙に使われるのもうんざりだった。写真にはいい思い出なんて一つもねぇし。
けど、彼女が覗くファインダーに俺が映るってのはいい。
それに、俺も今の彼女を残したい。
いや、写真になんか残さなくても、俺の記憶から彼女の姿も彼女が言った言葉も消えることなんて絶対に無いと誓えるんだが、それでも何年か経った後で、互いに撮った写真を見合いながら、あの時はこうだった...と言い合える日が来るのなら、それはすげぇ幸せな事なんじゃねーかと思う。



「この辺で降りようぜ?」
「ここ?」

俺が指定したのは、2カ月近く前に、彼女に手袋と帽子を買った店の近く。

「あの時、1時間しかデートできなかっただろ?あの日のやり直し。」
「あっ、そっかぁ!ふふっ、嬉しい!」

素直に喜ぶこいつは何も気づいてない。
まあ、それでいい。

彼女からカメラを奪い、肩にぶら下げた。
反対の腕をスッと横へ出すと、つくしは嬉しそうにしがみ付いて来た。

「あの時ね、たった1時間だったけど、すっごく嬉しかったんだぁ。」
「俺も。仕事行かなきゃなんなくてすげぇムカついた。」
「うそだぁ。そんな風に見えなかったけどなぁ。」

互いに片思いだと思ってた。
彼女にいい男だと思われたくて、必死だったっけ。
それは今でも変わらないが、少しは自信が付いたと思う。
彼女は、きっとどんな俺でも受け入れてくれるに違いない。
情けない時も、イラついた時も、どんな時でも、きっと。


金曜日の昼間だが、そこそこの人出だ。
すれ違う奴が、チラチラと俺とつくしを見て驚いている。
あの記者会見があったから、つくしの顔はもう世間に知られてる。

「結構見られてるね。」
「仕方ねぇな。」
「司さんはいっつもこんな感じだよね。女の人がジロジロジロジロ...。」

つくしが口を尖らせた。

「何?妬いてんの?」
「・・・うん。」

素直に頷く妻に笑いながら言ってやる。

「お前が可愛すぎるから、俺の方が心配。」
「へぇ?」
「ほら、あの男とかお前のこと厭らしい目で見てやがる。」
「いや...それは違うと思う。」
「気づいてないところが始末に負えねぇ。」
「ん?何が?」

キョトンと俺を見上げてくるその瞳。
その瞳が男を魅了するんだ。
俺とか、類とか...。きっとこいつが鈍感なだけで、これまで多くの男を虜にしてきたに違いない。

俺たちがこうして今一緒にいる奇跡。
この奇跡はもしかするとこの鈍感のおかげなのかも知れねぇ。

「あっ、また一人で笑ってる!スケベ!」
「はぁ?お前こそどうなんだよ。すぐに俺のこと煽りやがって。昨日だって、本当はヤりたかったんだろ...って、痛ってぇ!!」

絡めた手と反対の手でグーパンチだ。
見られてるとか言ってこれだもんな。ほんと飽きねぇ。
すげぇ・・・好きだ。


初めての1時間デートの時は二人ほとんど無言だったが、今はこうして笑い合って歩いてる。
バカップルだと言われたっていいんだ。
もっともっと幸せにしたい、彼女のことを。




「あっ...」

彼女の足が突然止まった。
俺にとっては予想通り。

あの生地屋の、あのショーウィンドウの前。
彼女の視線の先には、あの時と同じウエディングドレスが飾られている。


「これが気に入ってるんだろ?」
「え.....?」
「お前が初めてデザインしたドレスだって聞いた。」
「司.....さん?」

大きく見開かれた妻の瞳。目の玉が落ちそうだ。


「誕生日プレゼント。これを着たお前が見たい。」


彼女がサプライズの誕生日パーティーを考えていたように、
俺だってずっと考えていた。

妻にウエディングドレスを着せたい。
その姿で俺の隣で笑って欲しい。
そんな誕生日を過ごせたらって。

ドレスは俺が買うと申し出たがオーナーに断られた。
金なんか要らないから、ドレスを着たつくしの姿が見たい、そう言われた。

あの日から大切に保管してもらっていたドレスを、今日また飾ってもらった。
あのデートの続きだ。
遅くなったけど、今日、ここで彼女にこれを着せるために。



「バカ、泣くな。」

「.....だって、凄く嬉しい。」


妻が俺のコートを握り、俺の胸に顔を埋めた。




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Comments 3

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Happyending  
こんばんは(*^^*)

いつもたくさんの応援をありがとうございます。
いつもラストが見えてくるとモチベーションがダウンすると言いますか...
もう書かなくても幸せじゃんっ!!とか思ったりするんですけど(笑)
でも、やっぱり手を抜いちゃうのは嫌なので、ラストに向けてあと少し、頑張ります(*^^*)
でも、そう思えるようになるとちゃんと妄想が降ってくるので、どこかからか司とつくしが「最後までちゃんと書けよー」って見てるのかな?( *´艸`)

花●様
司に抱き付いたら、きっとすっごくいい匂いがするんですよね~(*´▽`*)
クンクンクン...あのコロンの香りが嗅ぎたいわぁ...。私も司の胸に抱かれたいです(笑)。
司の寝ぐせが見れるのは、つくしちゃんとタマさんだけですねww。
コメントありがとうございます(≧▽≦)!!

スリ●様
ふふっ。写真嫌いの司も、つくしちゃんとの未来を思うと嬉しかったでしょうね!
自分の写真っていうより、つくしちゃんと子供の写真にデレデレしていそう!(笑)。
そうですよね。これからもずっと一緒っていう意味も込められていますね。尚更嬉しいですね!
さて、ドレスはどうなるでしょうか・・?
今回もコメントありがとうございます(*^^*)

拍手コメ he●様
つくしちゃんのドレス姿。次です!
コロナウイルス...もう恐怖しかないですね。不用意な外出は避けたくても、仕事は避けられませんし。子供も学校はあるし。その学校だって、安全とは言えませんし。どうしてもっと早く対策をとらなかったのか...。とにかく免疫力を上げて凌がねばですね(>_<)!!


さて、続き、大体書けているので、1時間半後の21時にアップの予定です(*^^*)
気付いてもらえるかな~( *´艸`)

2020/02/25 (Tue) 19:24 | EDIT | REPLY |   
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2020/02/25 (Tue) 07:31 | EDIT | REPLY |   
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2020/02/24 (Mon) 20:29 | EDIT | REPLY |   

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