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Happyending

Happyending

カラン.....

「いらっしゃいませ。つくしちゃん、道明寺さん。」
「ご無沙汰してます、オーナー、.............えっ!」

司さんのいい匂いのするハンカチで涙を拭いてもらって、なんとか見られる顔になり、彼にエスコートされてお店のドアを開けると、待っていてくれたのはオーナーだけじゃなかった。

「牧野ったら、お相手を教えてくれないと思ったら、こんなに素敵な人だったなんて、ズルイじゃないの!」
「春子さんっ!!」

優しく笑うオーナーの隣には、少し怒った風の春子さん。
アパレルHanazawaの部長で、入社以来ずっと私を可愛がって育ててくれた人。
一緒に頑張って行こうと約束していたのに、いきなり不義理な辞め方をした私を責めずに送り出してくれた、懐の深い人。

「春子さん.....なんで........?」
「オーナーから連絡を頂いたの!もぅ、水臭いんだから。私はこれでも口が堅いのよ!」
「ごめんなさい、春子さん。本当に、ごめんなさい。」

あの日、春子さんにだけは本当のことを言いたかった。
でも言えなかった。
あの時の私は、素直に祝福を受けることはできなかったから。

「バカね。花嫁が目を腫らしてどうするの?」
「だって、春子さん...っ」
「ずっと心配してたのよ。牧野がどうしてるかって。」
「ごめんなさい。ごめんなさい.....うぅっ...。」

咄嗟に春子さんの胸に飛び込んだら、春子さんがヨシヨシって頭を撫でてくれた。

「あら、旦那様の目が恐いわ。ふふっ。」

またぐしゃぐしゃな顔になってチラッと振り返ったら、司さんがムッとしてる。
でも、涙が止まらない。

「ねぇ、牧野。あなた、今、幸せ?」

その声にハッとして、もう一度春子さんを見た。
それはずっと私の胸に燻っていた言葉。退職の時に答えられなかった問いかけだった。

あの時、私は返事が出来なかった。
後ろめたい気持ちがあった。
たとえ契約だとしても私はこの結婚で幸せな気持ちだったけど、彼はそうじゃないと思ってた。
だから答えられなかった。そんな身勝手な返事をすることなんて出来なかった。
でも・・・今なら、

「はい、とても幸せです。」
「そう、それなら良かった。その言葉が聞きたかったのよ。」
「春子さん......」
「だから泣かないのっ!」

でも、胸がいっぱいなんだもの。

「さぁ、ドレス姿、見せてくれるんでしょう?」

オーナーが楽し気にパンッと手を叩いた。
司さんを振り返ると、コクッと頷いている。

そうか、全部司さんが準備してくれていたんだ。
今日、私にこのドレスを着せるために。
どうしてこのドレスのことを知ったのかはは分からないけど、オーナーがとっても喜んでくれていて、私も嬉しい。着ることはできないと思っていたから、余計に。

彼に見送られて、奥のフィッティングルームに入った。



ショーウィンドウから大切なドレスが運ばれてきた。
自分でいうのも変だけど、やっぱり素敵。
胸のと袖は上品なレースの仕様で、デコルテは広く空いてるけど清楚なイメージ。
Aラインに広がったスカートにはたっぷりとした襞がとられ、チュールレースが重ねられてる。
こんなドレスを着てみたいっていう、私の理想そのまま。

何年も前に考えたアイディアで、今の最先端のモードなんて全く反映されていない。
むしろクラシカルなドレス。
だけど、貧乏な家庭に育った私にとって、こういうドレスこそが憧れだった。

でも...あれ?

「オーナー、これ...?」
「気が付いた?これ、彼の希望よ?クスッ」

チュールレースの下のシルク生地が控えめに輝いている。
光に照らされるとキラッと輝く、そんな感じ。

「本物のダイヤモンドですって。縫い付けるの緊張したわ。」
「流石は道明寺司。やるわね。厭味ったらしくないわ。」

オーナーと春子さんが笑った。

「本当に素敵です。旦那様らしい。」

その声の方を見ると、大きな鏡の前に立っているのは、お邸で私を担当してくれている美容部員の木村さん。
若奥様だなんて柄じゃないんだけど、郷に入ったら郷に従え...でしょ?彼に相応しくなれるようにって、色々と努力しているのよ、これでも。でも、これまで努力を怠ってきたツケは大きくて、そんな私にとって木村さんは、エステだったり、ネイルだったり、メイクだったり、色々と相談に乗ってくれる頼もしい人。
もちろん、私が妊娠していることも知っている。
着付けとヘアメイクのためにお邸から呼ばれてとても光栄だと、木村さんも笑った。

でも・・そっとドレスに触れた途端に一抹の不安が過る。
それは、

「私、入るかな。」
「大丈夫よ。」
「でも、最近ちょっと太っちゃって...。」

ううん、ウエストはまだ大丈夫だと思う。
けど、バストが....ね。少しずつ大きくなっていて、以前よりちょっとだけどサイズアップしてると思うんだ。

するとオーナーがまたクスッと笑った。

「本当に大丈夫だと思うわ。道明寺さん、お忙しいでしょうに、何度も足を運んでくださったのよ?ふふっ、彼の方がデザイナーみたいだったわね。デコルテのカッティングから、ドレス丈の数ミリまで、つくしちゃんが一番綺麗に見えるようにって、ギリギリまで調整したのよ?で、バストもね、ちょっと大きくなったって逐一報告をくれてね。ふふっ!バッチリ合わせてるからきっとピッタリよ。」

「うそっ!」

・・・恥ずかしすぎるよっ。
もしかして、ここ最近、夜になると司さんが両手で私の胸の重さをチェックしてたのはこのためだった?
毎日大きくなってるって真剣に触るから、男の人はやっぱりたわわな胸が好きなんだなぁ、どこまで大きくなるのかな.....なんて、そんなことを考えてたのにっ。
信じられないっ!!

「牧野、愛され過ぎてるわね!あははっ!!」
「そこまでサプライズに拘らなくてもいいのにね。くふっ。」
「旦那様の愛情はいつもとても深いですものね。」

真っ赤になる私の前で、もう堪えきれないと三人が一斉に笑い出した。


一通り笑い終わると、ヘアセットとメイクが始まった。

「お化粧、いつもより濃くないですか?」
「ドレスに負けないように、これぐらいでちょうどいいと思います。それに、旦那様のお顔立ちがはっきりされていますから、写真に写ることを考えてもこのぐらいがベストです。」

うっ・・・・・なるほど。
あの彫の深さとかとても日本人とは思えないものね。

「若奥様、ヘアスタイルのご希望はおありですか?」
「えっと...、私、シンプルなアップスタイルが好きなんです...。」
「王道のプリンセススタイルですね。お任せください!」

プリンセススタイルって・・・照れちゃう・・。
でも、後ろはふんわりと盛るようなアップスタイルも理想通りで嬉しい。
補正の下着はキツクなり過ぎないように着けてもらい、
オーナーと春子さんにも手伝ってもらってドレスに袖を通した。


正面の大きな鏡に映る私。

ほぅ...とみんなから感嘆の溜息が聞こえた。


「ぴったりね。とても似合ってる。流石はご主人様だわ。」
「素敵よ、牧野.....やだごめん。私が泣いてどうするのよ、ねぇ?」
「若奥様、よくお似合いです。」

「ありがとう......ございます。こんなに素敵なドレス...。それから、準備まで。」

鏡に映る自分は、別人のように綺麗だった。
ドレスとお化粧のおかげもあるけど、似合ってる...と思う。
だって、これは自分がデザインした夢のドレスで、オーナーが時間を惜しんで縫って下さったもの。
それに司さんまでが、私に似合う様にって細かいところまでチェックして...。だから似合わない訳がない。
どこに出ても恥ずかしくない、私らしい、素敵なドレス。

「牧野は泣いちゃだめよ?せっかくのメイクが崩れるわ。」

そんな春子さんの一言に、みんながクスッと笑った時、

___コンコンコン とノックの音。

オーナーが「どうぞ」と答えると、すぐにドアが開いた。




「うっわ.....ぁ.....」
「素敵だわ。」
「これは.....牧野が紹介したくないはずだわ。」

これは私に対する賛辞じゃない。

入って来たのは司さんで、
彼は濃紺のフロックコート姿だった。
バーガンディーのネクタイはアクセントになっていてとってもお洒落。

はぁ・・・・なんてカッコいいんだろう。
この人が私の夫だなんて・・・・。

その場にいる全員が彼に見惚れてるけど、これはしょうがないわ。
見惚れずにはいられない。
道明寺司のウエディングスタイル。


誰もが注目する中、私だけを見つめて近づいてきた彼は、
誰にも見せたくないぐらいの微笑みを私に向けてくれた。

「綺麗だ。」

「司さんこそ、素敵。」


素敵すぎて、視線が逸らせない。
だけど、

「着替えるところから見たかったのに、全員に反対された。」

だなんて、彼がちょっとだけ拗ねた様子で言うから、
その場は笑いの渦に包まれた。


初めて出会った時から、言葉は少ないけど優しい人だと思っていた。
それは間違いじゃなかった。
そしてこうして言葉にしてもらえる関係になると、もう幸せ過ぎて胸が痛いぐらいだ。


そうだ...と、
司さんが手に持っていた箱から、キラキラ光る髪飾りを取り出した。

ダイヤが散りばめられたティアラ。
それを私の頭に着けてくれた。
一度で、すぱっと。司さんらしい。

ティアラなんて一生着けることは無いと思っていたけど、

「生花っていうのもいいかと思ったけど、やっぱりこれだろ?」
司さんが自慢げに言うからまた笑う。

「......うん。」
鏡に映る自分には、そのティアラが似合っていた。
このドレスが、私に自信をくれたみたい。

「仕上げはこれ。着けねぇとババァがキレるからな。」
「お義母様が?」

えっ?と疑問を抱くよりも早く、
司さんは私の首に、会見の時にも着けたパールのネックレスを回した。



それからね、あのカメラで写真を撮ったの。
みんなで。
思い出が一つできた。
とっても幸せな思い出。
こんな写真が、これからもっともっと増えていくはずだよね?


「行こう。
 ご協力に感謝します。」

あっちこっちと写真撮影が終わると、司さんは私の肩に真っ白なコートを羽織らせた。
それからいきなり頭を下げ、私の手を取って歩き出す。

「えっ?司さん?どこに行くの!?ちょっと待って!」

手を引かれながら何度も振り返るけど、みんな笑っているだけだ。


「オーナー、春子さん、木村さん!ありがとうございます!!」
「こちらこそありがとう。この姿が見たかったのよ。」
「牧野っ、お幸せに!」
「若奥様、今日が一番お綺麗です!」

三人が手を振って、私たちを見送ってくれた。







「司さんったら、これからどうする...」

彼を見上げながらそう言いかけた時、

__わぁっ!!綺麗~!!
__ご結婚、おめでとうございます!!
__カッコいいっ!!

私の言葉は、盛大な歓声に一瞬にして呑み込まれた。


お店に入った時から噂になっていたのかも知れない。
ドアから出た途端に人だかり。

街の小さな生地屋さんから出てきたフロックコート姿の司さんとウエディングドレス姿の私は、きっと誰が見てもこれから結婚式を挙げる新郎新婦に見えたと思う。

私たちは、顔を見合わせて笑った。


どこからか出てきたSPさんたちが、道を作ってくれた。

その道を、まるで映画のワンシーンのように、
手を繋ぎ、笑い合いながら、
私たちは、リムジンへ乗り込んだ。




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もう先は見えそうなのになかなか進まず...ごめんなさい。
でも、どのストーリーも幸せいっぱいで終わりたいので( *´艸`)
あと少しだけお付き合いください(*^^*)
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コメントありがとうございました(*^^*)

いつもたくさんの応援をありがとうございます。
43話投稿して参りました('◇')ゞ
今週は、まず、子供の習い事が休みになり、同時に私のホッと一息タイムも無くなり...。
そして来週からは小学校も休校。息子はお友達に会えなくなると沈んじゃうし。お留守番はできる子ですが、学校も習い事もなく、仕事が終わればつきっきりの毎日になりそう...。休校になっているのにフラフラ遊びに出かける訳にもいかないし、かといってママ友の少ない私は、仲良しのお友達の連絡先も知らず...。これから1か月以上どうしたらいいのか頭を抱えています。
そうそう、本気でトイレットペーパーを買いに行ったら、売り切れてました。オイルショック並みかと。デマということなので、買い占め内で欲しなぁ。うちみたいに本気で困っている家もあります..。あ、でも結局割高の見つけて買いました(^^;)


そんなこんなで、お返事まとめてで申し訳ありません。
お話は、あと1話?で終わる予定です。

そうそう、今日って、あきら君のBDだったんですね!
あちゃー、あきら君ネタで書きたいお話あったのに~。残念。
でも、次のお話にしようかなぁ?

では、たぶん、あと1話。
子供たちがいるのでどうなることやらですが、頑張りますね~(*^^*)
もう幸せいっぱいで、うぇってなりそうですが・・・
最後まで是非是非お付き合いください(*^^*)

2020/02/28 (Fri) 23:17 | EDIT | REPLY |   
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2020/02/26 (Wed) 08:26 | EDIT | REPLY |   
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2020/02/26 (Wed) 07:36 | EDIT | REPLY |   
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2020/02/26 (Wed) 00:01 | EDIT | REPLY |   
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2020/02/25 (Tue) 22:01 | EDIT | REPLY |   
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2020/02/25 (Tue) 21:28 | EDIT | REPLY |   

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