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Happyending

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『赤札よっ!赤札が貼られたわっ!!』

聞こえてきた悲鳴に近い声に、信じられない思いだった。

赤札を貼れる人間は道明寺司だけだ。
だけど、私は勝手に感じていたから。
あいつにはF3という仲間がいたけれど、その他にこの学園に心を開ける友達がいないって言う意味で私と同じだ...なんて。

だからあいつが私に赤札を貼るはずないって、どこかで勝手に思い込んでいた。
事実、私が虐めのターゲットになってからも、あいつは何事もなかったように裏庭に現れていたしね。
この虐めなんて、あいつには関係ないんだろうなって、私はそう思ってた。


だけど、誰かが勝手に開いた私のロッカーの中には、赤い張り紙が吊るされていた。

間違いなく、『赤札』だった。

もう学園中が大騒ぎで、初めは遠巻きに見ていた人たちも段々と私を蔑むような目つきになって、「だから庶民って嫌なのよ」「道明寺さんにこっそり近づいてるんですって!」「早く退学しなさいよっ!」とか、もっと酷いものは「男に体を売ってる」「中絶したんだって」とか...、ありとあらゆる暴言があっという間に広まった。

その時に気付いたの。
裏庭で、道明寺に話し掛けられているのを、誰かに見られていたんだって。

だから私は、庶民のくせに道明寺司に近づく非常識な女として、これ以上ないほど格好の標的になった。











牧野の話を聞いて改めて思った。
こいつに赤札を貼ったかどうかが問題なんじゃない。
こいつは虐めに加担した生徒自身の責任も重いと言うが、その風潮を作った俺らF4の責任の方が遥かに重い。
俺たちが赤札遊びなんてくだらねぇことをしなければ、こいつも三条も、いじめのターゲットにはならなかったはずだ。

だから、今のこの状況は自業自得。
過去の悪事のツケが回って来ただけのこと。
虐めの原因が自分にあったことにも、ニセの赤札に気づかなかったことも、俺自身の責任だ。

牧野に軽蔑されても文句なんて言えねぇ。



・・・だが、どうせ軽蔑されるなら、
文句言われついでに言いたいこともある。

赤札のことは反省しているが、俺は正直牧野以外のターゲットを一人も覚えていない。
貼った人間に興味はなく、ただイラつきのはけ口にしただけだったから。
三条桜子だって、牧野のことが無ければ記憶から消えていたはずだ。

なのに、

『ただ、好きな人に近づいただけだったんだよ。』

牧野は、この俺の目を見てそう言った。
三条は俺のことが好きだったんだと、こいつはそう言ったんだ。
“ちゃんと覚えているんでしょうね?”と、まるで三条を応援するかのように。

でもな。
どんなに軽蔑されようが、
俺はお前以外の女がどうなろうと興味ねぇんだよ。
三条が俺に近づいて奴らのターゲットになったからなんだっつーんだよ。
そんなこと、お前の口から聞きたくねぇよっ!


・・・なんてことを考えてる俺は、マジ最低なんだろう。

これが俺の本心。
お前以外の女なんて知った事じゃねぇ。
けど、もしもあの時、お前に赤札が貼られていたと知っていたら、俺は間違いなく、速攻でそのニセの赤札を貼った犯人を叩きのめしてた。

そう言ったところで、こいつは呆れるんだろうけどな。



いや・・・もう、すでに軽蔑されてるのか?

今の牧野から、俺に対する怒りは感じない。
妙にサバサバと会話しているようにも感じる、この違和感。
それは、俺なんてお前にとってどうでもいい男だからか?


実際には、こいつが虐めのターゲットになったことを知りながら、俺は表立っては何もしなかった。
影で見守るという超自己満足の男。
赤札であろうがなかろうが、こいつを正々堂々と守るべきだったのに.....そう気づいたのは8年後だ。

ねぇよな。こんな男。
俺だって情けねぇよ。


思い返せば思い返すほど、俺のしてきたことは恥ずかしいぐらいに最低だ。
そんな俺にこいつが惚れる...なんてことは99%ないだろう。
けど再会した俺は、またこいつに魅かれ、どうしたって諦められねぇ訳で。
そうなれば、俺は残りの1%に掛けるしかない。

その1%は・・・どこにある?





「お前も、ターゲットになったよな?」
「........うん。まぁ...ね。」

牧野の苦笑いが胸に刺さる。

「庇ってやれなくてごめん。」
「.........え?」

赤札貼っておいて、何を今更謝ってんだと思ってるんだろう。
牧野はキョトンと目を丸くした。
それが、俺を忌み嫌う視線でないことだけが俺の救い。


「知らなかったんだ。」

「......何を?」

「お前に赤札が貼られたこと。」

責任逃れをしようって訳じゃねぇし、信じてもらえなくてもいい。
でも、どうしても言わずにはいられなかった。

「えっ?」

「俺はお前に赤札を貼ってない。だからって、俺がしてきたことが許される訳じゃねぇけど。俺は、お前に謝りたかった。ごめんな。」

お前に興味を抱いてた。もっと知りたい、近づきたいと思ってた。
それが恋だと気付いていたら、俺は堂々とお前を守れたと思う。
それは今更もう、どうしようもないことだが...

傷つけたいだなんて思ってなかった。
それだけは分かって欲しい。



..............................。


二人の間に流れる沈黙。
牧野は、目をまん丸にして、
しばらくの間、目をぱちぱちを瞬かせていた。



「知らなかった......の?」

唐突に、牧野がポツンと呟いたのはそんな言葉。

「ああ。」

「あんなに騒ぎになっていたのに?」
「悪い。」

牧野は、またぱちぱちとと瞬きをして、
それから、ゆっくりと頷いた。

「そっか...」

「俺が貼ったんじゃねぇってこと、信じてくれるのか?」


こんなにも、何かに縋りたくなったことは無い。
誰かに許されたいと思ったことも。

そんな俺に、
次の瞬間、牧野はふわりと微笑んだんだ。



「私、あの赤札をあんたが貼ったなんて思ってなかったよ。」


「....................は?」



それは、本当に.............思いがけない言葉だった。


「もしかして、ずっと気にしてくれてたの?」

クスクスッと笑う牧野。


ちょっと待ってくれ。
どういうことだ?
意味が分かんねぇ。



「赤札は本当に貼られたんだよな?」
「うん、それは本当。もう学園中大騒ぎでさ。あっという間に全校に広まったよ。」

「それで虐めがエスカレートしたんだよな?」
「そうだね。トイレに入ってる時に水かけられたり、生卵当てられたり、あれを経験した人はそうそういないと思う。」

あっけらかんと言うこいつ。

そうじゃねぇ....
そうじゃねぇだろっ!


「なんで、俺が貼った赤札じゃねぇって分かった?」

赤札が本物かどうかを知っているのはF4だけだ。
俺以外の3人のうちの誰か?

いや...
あの当時、牧野の近くにあいつらはいなかった。

じゃあ、どうして?


「それはねぇ.........まぁ、色々あったんだよ。」
「......話せよ。」

何故か話を逸らそうとしているようだが、そうはさせねぇ。
俺が睨むと、牧野はうーん...と少し困った顔をしながらも、再び話し出した。

「一つは、赤札が貼られてからも、あんたの態度が全く変わらなかったこと。相変わらず裏庭にやって来てさ、お弁当覗いて“なんだそのイソギンチャク”とか、私の髪を見て“そのビンボくさいヘアスタイルは何とかなんねぇのか”とか、ほんと失礼極まりなかったけど、あんたのそんな態度は赤札を貼った人間には見えなかった。」

その意味が分からず、無言で首を傾げると、

「私、あんたが赤札を貼ったの2回見たことあるの。本物の赤札ね?その時のあんたには何の表情も無くて、かと思ったら時々不気味にニヤニヤしたりして、本当に悪魔みたいだった。だけど、私に対してはそんなことはなかったでしょ?」

牧野が大真面目に説明する。
これは喜んでいいのか悪いのか...

「さっきも言ったでしょ?集団虐めは常態化してた。だから、これは新たな虐めで、偽物の赤札だって分かってたよ。」
「じゃあ何でそう言わねぇんだよっ!」
「違うって騒いだよ。でも、誰も信じてくれなかった。」
「くそっ!!」
「仕方ないよ。」

こいつは諦めたように溜息を吐いた。

ますます腹が立った。
誰かが、俺の名を使ってこいつを陥れようとしてたってことに。
もう戻れねぇ過去だが、許せねぇ。


「あんたは、いつ知ったの?」
「最近、偶然だ。それ聞いて、あの当時お前が俺のことをどう思ってたのか、気になってた。」
「やだなぁ。あんたを恨んだりしてないって。」

「そっか...」
「うん。」

良かった...と思う。
けど、何かが足りないような気がする。

それは何だ?


「あのさ。こんな風に謝ってくれたりするから、調子に乗って言っちゃうけどね。」

笑いながらも、ふっと遠い目をするたこいつ。
少しだけ、寂しそうに。
その表情に一抹の不安が過る。

「私、あの頃、ちょっとだけ期待してたんだよね。
 もしかしたら、あんたが私を助けてくれるんじゃないか......なぁんて、ね。」


その言葉に、俺は心臓が抉られる思いがした。

ああっ
過去の自分を殴りてぇ!!


好きな女にこんな思いさせてたなんて。
少しでも、俺のことを頼ってくれてたのに、その期待を裏切ってたなんてよ。

こっそり見張ってたんだよ。
お前のナイトになりたくて、ずっとお前を見守ってた。
そんなこと、今更言えるはずもねぇけど。

泣きそうだ........俺。




「でも、あれからしばらくして虐めは無くなったからホッとしたな。」


はっと顔を上げた。
俺にも一筋の光が差し込んだ気がして。

それは、お前を階段から突き落とした男たちを、俺が屋上から吊り下げの刑に処したからだろ?
そのことをお前は知っているのか?

それからもう一つ。
階段から落ちたお前を抱き留めたのは、この俺だってことを、お前は気付いているのか?

俺は、ずっとお前を見てたんだ。


バクン・・バクン・・・
心臓がうるせぇ。


「虐めはどうして無くなった?」
「えっ...?」

つい伺う様に牧野を見てしまう。
すると、牧野の頬がほんのりと染まって見えて...

期待すんな、俺。
けど、やっぱ少しは期待するだろ。

鎮まれ心臓っ。


「えっと...」
「な、なんだよ...」

二人とも俯いたりして...
ますます期待しちまうじゃねぇか。


「私、誰かに階段から突き落とされてね。」
「そうなの....か...?」

「その時意識が無くなっちゃって、気が付いたら保健室にいてね。」
「へ...ぇ...」

知ってるよ。
俺が運んだんだからよ。
それで?


「目が覚めたら、もう大丈夫だよって言われたの。」

「・・・は?」

何だ。
急に話が見えなくなった。
それは俺のセリフじゃねぇ。


「誰から?」

声が掠れる。

「え.....?」

ちらちらっと俺を見て、耳まで赤くする牧野。
恥ずかしそうに...。

こいつに、こんな顔をさせる男がいる。


嫌な予感がした。


「誰だよ。」

思わず強い口調になった俺に、
聞こえて来たのは思いがけない名前だった。




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Comments 11

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Happyending  

拍手コメもありがとうございます。
拍手コメ欄に書くかどうかとか、未だ迷っていて、本日はこちらへ..

つく●様
さすがでございます( *´艸`)
そして、司超LOVEの私が選ぶのは...(笑)
リフレッシュしたら、またお話読みたいです(*^^*)

澪ちゃん様
おおっ!怒りの絵文字がww
いいとこどりっ(笑)
ふふふ..、もしかしして?もしかする?
どうぞ、次回をお楽しみに(*^^*)


さて、今日は午後からお仕事なので、
もう少し頑張って続きを書こう!
どんな風に書こうかなぁ。
あらすじはできたけど、まだ迷うなぁ...(;^_^A
もう少し捻りたいような...?


さて、充電完了!
皆様のポチやコメから元気を頂いています。
いつも応援ありがとうございます。
頑張りまーす('◇')ゞ

2020/06/24 (Wed) 09:54 | EDIT | REPLY |   
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Re:

スリ●様

お忙しい中コメありがとうございます(*^^*)
大変参考になりました_(._.)_

そうそう、「助けてくれるかと思ってた...」
私的には、こう言われるのが一番ダメージ強いと思っていて、
司超LOVEな私としては司可哀想すぎる..と思って悩んだのですが、書いちゃいましたww
こんなことを言っちゃうつくしもレアだな~なんて思いながら...
色んな意味で、このお話は今までの作品と少し違うんです(;´・ω・)

つくしちゃんはヒーローをどう考えているのか..
そのあたりを書くのが難しいですね~。
う~ん。ここは慎重に...
なんといってもまだ序盤なので(^^;)

試練なんですが、私の司愛溢れるお話にするつもりですよ!!
潜らないでくださいね~(*^^*)

2020/06/24 (Wed) 09:45 | EDIT | REPLY |   
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Re:

すず●様

そうでしょう?珍しい展開でしょう??
だから、今回の展開は好みが分かれると思っているんです。
まぁ、それも致し方なし...(;^_^A

そして、分かります。
司はそうであって欲しい!!
(お話を考える上では、幅が狭くてこまるのですが...汗)
つくしちゃんも、なんだかんだ言って...ですからね(笑)

そして、そして・・・
読み返しありがとうございます。鋭いっ!!
そこに辿り着きましたか(笑)
どうでしょうか??

下書きっぽいのは書いたのですが、投稿いつできるかな?
答えは・・・お待ちくださいませ!!

2020/06/24 (Wed) 09:40 | EDIT | REPLY |   
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Re:

まぁ●様

えへへへ...こんなところで切ってスミマセン(;^_^A
誰かな?誰でしょう~??( *´艸`)
私にしては珍しくドキドキ展開ですww

わぁっ、びっくり。
いやいや、そんな、わざわざご報告ありがとうございます。
イメージなんて、いくらでも...(;^_^A
懐かしいなぁ...と思って、自分でも驚いちゃいました(笑)。
その続編もあるのかな?
まぁ、私はどっちかというとパンツが...(笑)なーんて。

私なんていつもストック無しですし(自慢にもなりませんが)、
どうぞマイペースで、無理なく。
楽しくやりましょう(*^^*)

2020/06/24 (Wed) 09:36 | EDIT | REPLY |   
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Re:

ka●様

本当に!
過去は変えられなくても、未来は変えられます!!
そして、書き手は司LOVEなので大丈夫(*^^*)

誰?誰?
ふふふっ( *´艸`)

インスタ見ました~。
ヤキモチ焼き焼きでしたね(≧◇≦)
ミニ漫画でも二人は海に行ってたし...司は知っているのか分からないけど...(;^_^A
海は司にとってトラウマですよね(>_<)

2020/06/24 (Wed) 09:32 | EDIT | REPLY |   
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Re:

花●様

ふふふっ( *´艸`)
そう思います??誰でしょう??
ヒントはだいぶ前に出してるかな??ww

司も生きた心地はしなかったでしょう...(;^_^A
司LOVEの私には超珍しい奈落展開(笑)。
がんばれ~司!!
今日は仕事午後からなので、少し続き頑張りマス('◇')ゞ

2020/06/24 (Wed) 09:30 | EDIT | REPLY |   
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2020/06/22 (Mon) 18:03 | EDIT | REPLY |   
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2020/06/22 (Mon) 07:11 | EDIT | REPLY |   
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2020/06/21 (Sun) 22:55 | EDIT | REPLY |   
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2020/06/21 (Sun) 22:52 | EDIT | REPLY |   
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2020/06/21 (Sun) 22:49 | EDIT | REPLY |   

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