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Happyending

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「誰だよ。」

思わずきつい言い方になったと少しだけ反省するも、
牧野が頬を染める男に殺意に近い感情を抱く。

あの時、保健室で牧野に優しい声を掛けた男。
バカな俺は、犯人への復讐に走ったばかりにその大役を逃した。

誰なんだ、牧野にこんな顔させる男は。


「えっとね...」

「ん?」

燃える怒りを何とか抑え、なるべく優しく続きを促す。
決して聞きたい訳じゃねぇが、
『彼を知り己を知れば百戦殆うからず』
.........合ってるだろ?




「........美作........あきらさん。」


俺の秘めた怒りに全く気付いていない牧野が、
俯きがちにポツンと呟いたのは、知り過ぎてる名前。


「あき......ら?」


思いがけない人物の登場に、頭が一瞬真っ白になった。



......が、そこは俺もNY仕込みの男だ。
その場で崩れそうになる自分を立て直し、
すぐに頭をフル回転させる。


そうだ。
あの時、何事かと保健室に駆け付けたあきらに牧野を託した。
俺だって、牧野の傍に付いていたいって気持ちもあったが、こいつはきちんと呼吸ができていたし、無事にキャッチできた自信もあって、脳震盪くらいかと予想もつけていた。目を閉じたままの牧野を見るのも恥ずかしくて、それよりも犯人への怒りのほうが強くて、俺は保健室を飛び出した。

だから、あの後、牧野に付いていたのは......あきらだ。



「目が覚めたらね、美作さんがいて、
 犯人はとっちめたからもう心配はいらないよって。
 何かあったら俺に言いなって....言ってくれて。」

「あきらが?」

頬を染めた牧野がコクンと頷く。


そして俺はまた思い出した。
あの時のことを。




『司、どこ行くんだよっ!』
『犯人取っ捕まえてやるっ!総二郎が追ってるはずだ。ウクッ.....痛ってぇ...』
『おまっ、大丈夫かよ!怪我してんじゃね?』
『.....肋骨イッタかも知んねぇ。あ、けどこいつには絶ってぇ言うなよ?カッコ悪ぃからなっ。』
『しかし、なんでまぁ、お前が...』
『うっせぇ!いいか、余計な事言うんじゃねーぞ。じゃあなっ!』
『待てって!司っ!』


・・・・『絶対言うなよ』
確かに、俺はこう言った.....気がする。
当時の俺は、女を助けるなんてありえねぇって思ってたし、それで怪我したなんて知られたくなかった。
それに牧野には、暴力的な俺の姿を知られたくなかったってのもあったと思う。こいつはあからさまに俺を避けるようになってたし、これ以上悪い印象を与えたくなかったから。




いや、だからってよ。
...................違うだろ。

報復の時に肋骨がズレたらしくてすげぇ痛みで、それでもなんとか保健室に足を運んでみれば、こいつはもう家族が迎えに来た後だった。
冷や汗をかきながら邸に帰ると、肋骨二本骨折の診断で安静を言い渡され、その3日後に親父が倒れた。
すぐに渡米を強いられた俺は、その後の展開を知らずじまいだった訳だが、そう言えば、あの後虐めは落ち着いたと聞いたのは、確かにあきらからの電話だった。


『ほら、覚えてるか?お前が助けた牧野つくしって女。元気にしてるぜ。流石に道明寺司にとばっちりがいったとなっちゃ、みんなビビって虐めもなくなったらしい。ククッ!珍しくお前が熱くなってたから、教えといてやろうと思ってよ。で?お前は、肋骨くっついたかよ?』



・・・・くそっ!!!
割に合わねぇぞっ!!


『俺』が、
ダイレクトキャッチで骨折までして助けたことも、
取っ捕まえた犯人を制裁したことも、
おかげで虐めが無くなったことも、

牧野は何も知らねぇなんて。


けど、そんなこと、
今更『俺だ』なんて言えるかよっ!!!







**






牧野との再会から3日が経った。

極秘療養中の社長の代役として、俺の仕事は倍増した。
ババァは右腕を怪我したとかいう適当な理由をつけ、邸で対応できる仕事やオンライン会議には出席しているが、しばらく海外を飛び回るのは控える方向だ。
その分、俺が動かなきゃなんねぇ訳で。

牧野に再会た翌日から、俺は香港に飛んでいた。
そのままシンガポールを経由して、今日やっと東京だ。
せっかく牧野に再会できたのに、
俺にはプライベートの時間が全くといってない。
ある程度予想はしていたこととはいえ、自分の境遇を呪いそうだ。


しかも、俺の頭を悩ませているのは仕事のことばかりじゃねぇ。
今、俺の頭の中の大半をしめるのは、牧野つくしにおける俺の立ち位置。

俺が8年間ずっと心の中に大切にしまっていた牧野つくし。
再会して、やっぱこいつしかいねぇと思い知った。
警戒していたババァの反対もなく、牧野も未だ独り身だと知って舞い上がっていた俺に、突如現れた『伏兵』たち。



あの赤札は俺が貼ったんじゃねぇとあいつが気づいていてくれたことに、俺は心底ほっとしたし、すげぇ嬉しかった。それって、俺のこと少しは信用してくれてたってことだろ?
それに、牧野が高校2年の終わりに転校したのは、父方の婆さんの具合が悪くなったからだと言うことも分かった。実際、本当に虐めはあの階段事件直後から無くなったようで、牧野の引っ越しとは関係が無かった。


はぁー・・・

しかし、ここで大きな誤算があった。




一人目の伏兵は、『美作あきら』

言わずと知れた俺の悪友で、つい最近も会ったばかり。
そいつが、『牧野のナイト』という立ち位置をかっさらっていたと知った時の衝撃は半端じゃなかった。

........別によ。
感謝されてぇとかそんなんじゃねーんだよ。
いや、ちょっと期待はしたけどよ。
けど、あいつを救ったという事実は俺の誇りでもあったから。

それが、よりにもよって、あきらだなんてよ。

しかも.....だ。
あきらの名前を口にした時の牧野の表情に、嫌な予感がしてならねぇ。
まるで、あきらに落ちたような...
あきらに惚れてるかのような...

違うよな?違うだろ!?

考えたくねぇ...
けど、あのはにかんだ表情はYesだと言っているようで気が焦る。
あきらなんて、未だにマダムと火遊びしてるような最低男だぞ。
ある意味では赤札よりタチ悪くねぇか?そんな不毛な男だって知らねぇんだろ、あいつは。


だいたい、なんで俺だって気づかねぇんだ。
つーか、誰か教えろよっ。
......そう思ったが、確かあれは午後の授業が始まる直前のことで、牧野を救った俺の姿を目撃したのは犯人と総二郎だけだった。だから、どこからも俺の暗躍を漏れ聞くことがなかったのも頷けちまうから余計に悔しい。
それにしても、あのまま保健室に残っていたら......、ナイトの称号は俺のものだったはずなんだ。



牧野は、あの事件の真実をどこまで知っているんだろう。

あきらが俺の名前を出さなかったのは仕方ないとしても、自分が助けたと嘘を吐くとも思えない。
牧野に突っ込んで聞こうかとも思ったが、ショックがデカすぎてすぐには言葉になんなかった。
とても俺の名前が出て来そうには思えなかったしよ。
自分でネタバレなんてカッコ悪ぃことができない以上、何を言われても反論は出来ねぇ。


くっそ!あきらのヤロー、あの後牧野と何を話した?
なんで、テメーが牧野のヒーローになってんだよっ!!

あきらを呼び出そうにも、あいつはあれからずっとロンドンだ。
英国王室を巻き込んだデカいプロジェクトのリーダーになったのは知ってるから、忙しいのも分かってる。電話しても当然つながらねぇし、俺だって暇じゃねぇし。



__バキッ!!


あー、ちくしょっ!
また、ペン折っちまった。これで何本目だよっ!!




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いつもより短いですが、長いと見直しも大変で余計に投稿が遅くなるので、今日はここで(*^^*)
伏兵その二は次回に...( *´艸`)
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Comments 4

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Re:

スリ●様

あきらは深くは考えてなかったかもですね。
F4はスマートぶってましたからね~、当時は。
むしろ、黙っておけと言った司に、「そりゃそうだな」と思ったかな?
だって、司の恋心なんて知らないですからね~( *´艸`)ププッ

そんなあきらはロンドンだそうです(;・∀・)
使えませんっ!

そして、伏兵の二人目も登場させねばです(笑)。
何と言っても、頑張る司の物語なので...←え?ww

本当に、これでもだいぶマイルドにしたんですよ~。
司LOVEですから!本当ですよ(*^^*)
なので、安心して頂いて大丈夫なのですが、お話はまだまだ続きます。
最後まで付いて来て下さると嬉しいです!(*^^*)

2020/06/26 (Fri) 00:54 | EDIT | REPLY |   
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Re:

花●様

あはっ、読み直しちゃいましたか?ww
そんなヒントって訳じゃないんですが、あきらくんが保健室に駆け付けてたんです..(;´・ω・)
司ってば、若かったです( ;∀;)

バッチこい!って、すっごく懐かしい響きっ!(笑)
ホントね。この可哀想な坊ちゃんを全力で応援したくなります。

そして...
むむむっ、するどいっ!
なぜに赤くなっているんでしょう??
実はここはすっごく大事な伏線だったりしますよ~。
むふふ。

いつもコメありがとうございます(*^^*)
早く救ってあげたいけど...
連載はまだまだ続きそうです(;´・ω・)エヘ

2020/06/26 (Fri) 00:46 | EDIT | REPLY |   
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2020/06/24 (Wed) 20:45 | EDIT | REPLY |   
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2020/06/24 (Wed) 14:00 | EDIT | REPLY |   

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