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Happyending

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俺の頭を悩ませるのはあきらの存在だけじゃない。


伏兵その二、『高橋涼』
裕伯父さんの息子で、俺にとっては従兄弟に当たる存在だ。
イケメンで頭もよく、幼少時から続けているテニスは日本ランキング一桁に入ったこともある程の腕前。中高の成績は学年トップで、国立大学の医学部にストレートで合格。そのまま外科医になったと聞いている。
そんな情報は全部俺の姉ちゃんからで、涼兄と姉ちゃんは今でも仲がいいらしい。



あの朝、保健室でのまさかの展開を知り唖然としたが、
そこでババァの言葉を思い出した。

どんなに過酷な道のりであろうと、
『勝負は最後にサインを貰ったものが勝ち』。
諦めるなんて選択肢がない以上、俺は押して押して押しまくるしかない。
そう腹を括った。


朝食を食べ終え、牧野の前にも最後のコーヒーが運ばれてきたが、このままさよならって訳にはいかねぇ。
最低でも連絡先を交換しなきゃ、攻めるに攻められねぇから。


「とりあえず、携帯の番号教えろよ。」
「え?何で?」

女の個人的な電話番号を聞くなんて初めてのことで、平静を装いつつも心臓バクバクだったのによ。
牧野からはすっとぼけた反応が返って来た。
鈍感にも程があるだろ。
番号を聞くってことは、お前に近づきたいってことだろーが。
それぐらい分かれよ...とがっかりする気持ちもあるが、この鈍感も俺のツボだったりするからめんどくせぇ。

「.......なんかあった時に連絡取れねぇとマズいだろ?」

何とかそれらしい理由を引き出してみるが、

「何かって?大丈夫だよ。楓さんのことは秘書さんから連絡もらうことになってるし。大抵は裕先生に直接連絡があるし。あ、でも、明日から先生はパリの学会に参加されるから、代理は涼先生だけど。」

.............なんだと?

すっとぼけているくせに、ポロっと爆弾を落としやがった。
好きな女の口から、またしても俺以外の男の名前を聞くことになるとは。

怒り狂いそうになる自分を何とか抑える。
俺も成長したもんだ。

「涼兄.....が?」
「あ、知ってる?そうか、道明寺にとっては従兄弟になるのか。」
「お前、涼兄とは連絡とってるのか?」
「うん。私は楓さんの専属を任されてるし、今、救急部のチーフは涼先生だから。」
「それって、同じ部署って意味か?」
「部署?まぁ、そういうことかな?」
「一緒に働いてるってことかよ。」
「涼先生が救急当番の時は一緒になるかな。」

...........マジか。

まさか、涼兄がこれほど牧野に近い位置にいたとは。
けど、涼兄だってバリバリの外科医で、暇なんかねぇだろうし。
個人的な付き合いがあるわけじゃねぇ...よな?

「ン........ゴホッ」
「大丈夫?風邪?晩くまで飲み歩くから...」
「ちげぇよっ。お前、あれだよな?涼兄とはプライベートで会ったりはしてねぇよな?涼兄も忙しいもんな。外科医ってのは、病院に住み込みしてるようなもんだって話も聞くし。」

急に饒舌になる俺に、牧野は「へ?」と首を傾げた。

「うん、確かに忙しいよね、涼先生。」
「だよな。」

ババァからの情報でも、涼兄はこいつに相手にされてねぇって話だったし。
さすがに多忙で、そうそう牧野にちょっかい出す暇もねぇだろうとホッと息を吐きかけた時、またしてもこいつの口からポロッと爆弾。

「でも、マンション同じだから。」
「.........は?」

ポロっとだが、かなりでかい爆弾だった。

聞いてねぇ...
こいつと涼兄が同じとこに住んでるなんて。

「当直明けが重なった土日なんかは一緒にご飯食べに行ったりするよ。他のスタッフも一緒の時もあるし。うちの病院、スタッフ同士仲いいんだ~。」

そしてあっさりと、俺の希望的観測は打ち砕かれる。

スタッフ同士仲がいいじゃねぇだろ。
狙われてんだよっ!

「....お前、寮に住んでるんじゃなかったのか?」
「うん。病院がマンションの部屋を借りてくれてるの。」
「いいとこなのかよ。」
「かなりいいよ~。1LDKで、病院から徒歩2分の好立地!」
「・・・・・・・・・。」

開いた口が塞がらねぇ。
1LDKって、こいつはともかく、そんなとこに高橋家の長男である涼兄が住むか?
ぜってー、牧野狙いだろっ!!

ただし、この牧野の鈍感さが俺の救いでもあった。
この態度から察するに、涼兄に特別な感情を持ってるってわけじゃねぇんだろう。
100歩譲って、あきらにはなんらかの気持ちがあるとしてもだ。(恋愛感情だなんて、俺は認めねぇけどなっ!)

だがこの8年、あきらから牧野の話なんて聞いたことねぇし、ということはこいつにとってあきらは過去の存在で、今は涼兄が現実的に一番身近な男...ってことになるのか?


ゴクッ

念のため、確認はしといてやる。
もちろん、涼兄はそんな存在じゃねぇって否定の言葉を聞くためだ。

「涼兄と付き合ってるのか?」
「.....へ?」

ほら、相変わらずの間抜け面。
その表情に安堵して、俺が余裕を見せた時だった。

「同じマンションだなんて言うから、そういう事かと思うじゃねーか。」
「えぇっ?何言ってんの?そんな訳ないじゃんっ。もうっ、みんな何でそう言うかなぁ。」
「.....みんな?」

なんかヤバイ予感がした。

「裕先生も、奥様も、すぐそういう事言って揶揄うんだよ?涼先生の不規則な生活が心配だから一緒に住んで健康管理して欲しいだなんて言われるし。涼先生も笑ってるだけだし、恥ずかしいったら!」

そしてまた、自ら墓穴を掘ったことを知る。

牧野の周囲では、裕伯父さんとその妻でやり手の美香子伯母さんが強烈なプッシュしているという現実を突きつけられた。

すげぇ強力な布陣じゃねぇかよっ。
揶揄われてるんじゃねぇよ、マジだぞっ。





8年という歳月は、俺が思ってた以上に長かったようだ。

牧野はすげぇ綺麗になってるし。
この鈍感だがサバサバした性格は男心をくすぐるに違いない。
少なくとも俺はくすぐられまくりだ。

つまり、こいつは絶対にモテる。
ただ、自分じゃ全く分かってねぇみたいだが。
その証拠に、

「付き合ってる男は...いるのか?」

と恐る恐る聞いた俺に、

「なんでそんな事聞くかなぁ。いる訳ないじゃん、モテたことないのに。別にいいけどさ。」

と口を尖らせながら呑気な返事をくれた。
その返事に俺はどんだけ安心したことか。




しかしだ。

未だかつて、俺がこんな窮地に陥ったことがあっただろうか?
どう考えても俺が一番不利だろ。

現時点での相関図を書くならば、俺ははっきり言って牧野の圏外。
高校時代は虐めを見過ごし、手も差し伸べなかったガッカリな男。
自分で言って泣けてくる。


俺に吹いてた風はどこ行ったんだ?
どうすんだよっ、俺!










道明寺HD日本支社、36階の専務室。
腕時計を見れば18時過ぎだ。

ハァ...
溜息しか出ねぇ。

牧野は朝と夕方に邸に顔を出しているとタマから聞いている。
すぐに仕事をしたがるババァを制止するのは大変らしい。
とはいえ、年中海外を飛び回ってることを考えれば、邸に留まってるだけでもすげぇと思うんだが。

もうじき牧野は邸に来てババァの体調チェックをする。
その後しばらくババァの部屋にいるらしいが、19時を過ぎれば帰っちまう。
せっかく東京にいたってすれ違いだ。
くそっ、いっそのことあのコネクティングルームに住み着いてりゃいいのに。
マンションなんて危険地帯じゃねぇかっ!


今日も会えねぇ。
明日だって会えねぇよ。
このままじゃ。



握り締めた携帯に、無理やり聞き出したあいつの番号は入ってる。
けどよ、ババァの状態は向こうの秘書から西田に伝わって来るし、そうなると俺があいつに電話する理由もねぇんだよっ。

タマに連絡して、あいつを引き留めるか?
......つっても、何時に上がれるか分かんねぇし。

八方塞がりだ.....



仕方なく、手元の書類に取り掛かった、その時だった。

今デスクに置いたばかりの携帯が光り出した。

プライベート携帯に登録されいる人間は限られている。


咄嗟に視線を走らせると、
飛び込んできたのは、

『牧野つくし』の文字。


あいつからの着信だった。


思わず頬が緩む。

微かな追い風を感じた。




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Comments 7

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拍手コメ Ar●様

そうなんです。
可愛い司なんです。
恋愛に関してはホントに初心( *´艸`)
応援してあげてください(*^^*)


拍手コメ つく●様

あははっ。
そこっ、司LOVEの私も『ごめんよ...』と心の中で泣きながら書きました(笑)。
なんていうか、若いってこういう事だよね~なんて。
本人には幸せな思い出だったんですけどね(;^_^A
ここから巻き返し頑張ってもらいます('◇')ゞ


さて、
なんか体が重いし、なかなか疲れが取れないなぁ。

続き、もう少しお待ちください。
いつも応援ありがとうございます(*^^*)

2020/06/28 (Sun) 17:39 | EDIT | REPLY |   
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Re:

シュガ●様

ね?可愛いでしょ?(笑)

そうなんですよ。涼君。
類君が出てこないと思ったら、こんな人がっ!?(笑)

この司は本当に幼い...26歳なのに。
初心初心です( *´艸`)
いいこいいこしてあげたい(≧▽≦)

風...
吹かせてあげねば(*^^*)

コメントありがとうございます!

2020/06/28 (Sun) 17:35 | EDIT | REPLY |   
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Re:

花●様

本当に、つくし大丈夫か‥?
私もちょっと心配です(;^_^A

でもでもっ、
高橋家に負けない助っ人...楓さんがいます...(;・∀・)コワッ?

もちろんつかつくですから~。
頑張ってもらいましょっ(*^^*)

コメントありがとうございました!

2020/06/28 (Sun) 17:33 | EDIT | REPLY |   
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Re:

スリ●様

忘れてました?(笑)
むしろあきら君より手強そうな伏兵です(;・∀・)
このつくししゃん、25歳ではありますが、司と張るぐらいに幼い...(笑)

つくしちゃんからのコール。
3日振りに会えるかな?

土日全然書けなかった...
書かねば...です。

2020/06/28 (Sun) 17:28 | EDIT | REPLY |   
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2020/06/27 (Sat) 18:45 | EDIT | REPLY |   
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2020/06/26 (Fri) 08:59 | EDIT | REPLY |   
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2020/06/26 (Fri) 07:45 | EDIT | REPLY |   

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