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Happyending

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気付けば腕をとり引き寄せていた。
無防備な牧野の体はそのまま俺の胸に倒れ込む。
ギュッと抱きしめるとビクンッと震え、一瞬で固くなった。


.........だよな。
けど、嫌じゃねぇ。
こうやって身を固くしてるってことは、俺を男として意識してるってことだから。
そう思うと、俺は少しだけ冷静になれた。


俺がこいつに与えられるものは何もない。
その事実に絶望して、それでも諦めらんなくて無意識にこいつを抱きしめていた。

でも、そうでもないのかも知れねぇ。

俺が道明寺家の御曹司で、こいつは普通の家庭に育った優しい看護師。
けど、その前に俺たちはただの男と女だ。
腕の中の牧野の横顔が火照りを帯びてる。
こうして抱き合えばドキドキして、体が熱くなる。
それは自然な事。


互いの付属物なんて関係ねぇよ。
俺はこいつに俺という男を捧げてやれる。

そう、8年も前からずっと、お前しか好きになれねぇ俺って男をだ。


もっとドキドキさせればいい。
もっと俺を意識させればいい。
そうして、俺を好きにさせればいい。





「みすぼらしいなんて思ったことねーよ。」

「.................え?」


牧野はモゾモゾと動くと、鳩が豆鉄砲を食ったような顔を俺に向けた。
彼女の表情にあった怒りは消えていて、それにホッとした俺はたぶん優しく微笑んでいたはずだ。

さっきは言葉が足りなかったから、今度こそ俺はゆっくりと言い聞かせるように伝える。


「お前んちが貧乏で海外研修に行けなかろうが、見たことねぇ弁当食っていようが、みすぼらしいなんて思ったことねぇよ。むしろ、あの時、あのカフェテリアで、全校生徒の前で啖呵を切ったお前をすげぇかっこいいと思った。すげぇ女だって。あの英徳で、俺が唯一認めた女がお前だ。」

「.......道明...寺?」

意味が分からないのか、何度も瞬きをしている牧野。


「お前は、俺が唯一認めた女だ。自信持て。」

「えっと...なに、急に...?」

「それに、俺はお前をすげぇ綺麗だと思うし、看護師って仕事もあの頃から正義感が強くてお人好しなお前にピッタリだと思うし、ド根性据わってるところも、全部自慢して歩きてぇ。」

「えっ!?ええっ!!?あっ.....あの.....ちょっ.....」


アタフタと慌て出すこいつに、澱みなく言ってやる。


「迷惑なんかじゃねぇよ。」


お前にとって俺は相当迷惑な男なんだろうが、俺にとってのお前は女神なんだよ。
そこにいるだけで俺を幸せにしてくれる、幸運の女神。
だから、


「お前を連れて行きたい。」


牧野が小さく息を呑んだ。
困惑したようなこいつは、たぶん俺の恋心になんて気付いてねぇ。
でも今はまだ、それでいい。


「ダメか?」

「ダメって言うか...」

「お前を馬鹿にする奴がいたら、俺がぶん殴ってやる。」

「.....バカ。それはダメでしょ。」

「本気だぞ。」

「楓さんに怒られるからね。」

「ババァには怒られ慣れてる。」

俺が自慢げに言うと、
腕の中の牧野がクスクスッと笑った。


本気も本気だ。
高校の時、堂々とお前を守れなかったことを、俺が今どれだけ悔やんでいるか。
だから、これからは絶対にお前を守ってやる。

それが出来なきゃ、好きになる資格もねぇだろ?

なぁ。だから、牧野。


「行くよな?」

「.................」

「行くだろ?」

「...............っ」


こいつの顔を正面から覗き込んだ。


「逃げねぇよな?」


うっすらと火照っていた牧野の頬が、ピンクを通り越して真っ赤になっていく。
唇がプルプルっと少し震えて。

それは怒ってるわけじゃない。


「~~~~っ!!もぅっ!!
 行けばいいんでしょっ。
 恥かいても知らないからっ!!」


すげぇ照れたみたいにテンパって、
こいつがくれた返事はYes。



そう、俺はこの強さが好きだ。





俺だけがこいつに与えてやれるもの。
本当はこの愛情だって言いてぇところだが、それはまだ早い。

それはもっと俺を知ってもらってから。
俺って男が欲しいと思わせてから。
そうじゃねぇとこの女は、あっさりと俺から逃げ出すだろう。
こいつは逃げ足の速い女だからな。


だから、その代わりに、

『俺が認めた女』
その自信をお前にやる。
俺の隣で、お前がお前らしくいられるように。






牧野がチラチラと俺を見上げながら、なんとか腕を解こうとしてる。
本当はキスの一つでもしたいところだけど、それも仕方ねぇ。
俺にはまだその権利がないからな。
名残惜しく手を離した。

あからさまにほっとする牧野に思う所はたくさんあるが、耳まで真っ赤になっているから許してやる。

もっともっと俺を意識しろ。
男として。


「あのさ...、道明寺って。」
「ん?」

「女は信用しないんじゃないの?」
「......は?」

「楓さんがそう言ってたから。女嫌いだって。なのに...」

牧野が気まずそうに聞いてくる。
女嫌いなのにこんな風に抱きしめたりするのか...と、そう言いてぇのか?

ったく、ババァと何の話をしてんだよ。
それにどこまで鈍感なんだ。
好きだからに決まってんだろ。
こんな風に触れるのはおまえにだけだ。


「特別な女にしか優しくしねぇよ、俺は。」
「特別?」

「俺が認めた女。」
「それって...」

目を見開いたこいつに、自信たっぷりに言ってやる。

「今のところ一人しかいねぇ。」


しっかりと牧野を見つめて。

その瞬間、牧野がふわりと笑った。
だから、少なくとも、俺のその気持ちは拒絶されてはいない。


牧野は何度もウンウンと頷いて、
それから、

「分かった。じゃあ、私もあんたを信じるね。
 だから、とびきり似合うスーツを選んでください。」

ペコリと俺に頭を下げた。



・・・・・・・・。


あーあ。
流石は鈍感女。
なんかまた違った方向に勘違いされたようだ。
俺はビジネスパートナーとしてお前を指名したんじゃねぇよ。

たった一人しかいない『特別な女』

その意味はさっぱり伝わってないらしい。


けど、こいつが嬉しそうだから、まぁいい。
ここからがスタートだ。


「任せろ。」

「うんっ!」



いつか・・・
この熱い愛情を嫌って程分からせてやるから、
覚悟しとけよ。



食事の続きを促すと、牧野が嬉しそうに頷くから俺も笑う。

彼女の背に手を当て、テーブルへとエスコートしながら、
その黒髪に、そっと触れるだけのキスをした。




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被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
まだまだ続く雨。
私も命を守る行動を心がけていきます。
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Comments 10

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Re:

シュガ●様

『俺が惚れた女』
くぅ~ww
そりゃ、そう言いたいところですけど...
それ言ったらお話終わっちゃうから(笑)。

このお話はひたすら片思いを頑張る司を書きたかったんです(笑)。

私、司が長いこと片思いしているとしんどくなるからすぐ両想いにしちゃうところがあるんですよね。
だけど、今回は心を鬼にしてww
原作のように、片思いから頑張って、つくしちゃんをゲットしてもらいます!!

2020/07/10 (Fri) 22:24 | EDIT | REPLY |   
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Re:

花●様

スペシャル!いい言葉ですね~ww
どこかで使おうかな?メモメモ...('◇')

動きだしたかな~?
いや、ドキドキしているのはいつも司?ww
でも確実につくしちゃんの気持ちも動いるはずです!

もう17話目なんですが、あんまり進んでいない関係。
果てしなく書いているような気がしますが...まだ3日目なんですよ~。
ですので、まだまだ応援よろしくお願いいたします(*^^*)

2020/07/10 (Fri) 22:19 | EDIT | REPLY |   
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Re:

スリ●様

言葉の選び方・・
いや、あんまり考えていませんでしたが...雰囲気で。
いつもとは違って、司が甘えてる感じでしょうか?相葉ちゃんみたい?ww

今日はとんでもなく雨が降っていました。怖いぐらいに。
地盤がユルユルな感じでこわいです。
明日も天気が悪いみたいです。

そういえば、このお話、まだ再会して3日目なんですよ。
なのにもう17話なんですが...(笑)。
司の肩思いっぷりをあれこれ書くのに文字を使い過ぎてまだ3日しか経っていないってことなんです(;^_^A

そろそろ時計を巻きたいんですけれど、もう一つエピが思い浮かんで、そこを挟むかどうか。
いや、挟んだ方が先々のことを考えるといいのかな...。
今夜は考えながら書いてみます(*^^*)

いつもコメありがとうございます(*^^*)

2020/07/10 (Fri) 22:15 | EDIT | REPLY |   
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Re:

きな●様

初めまして!コメありがとうございます(*^^*)

ね~、初心初心過ぎる坊っちゃん( *´艸`)ププッ
もう、がんばれ~って応援しまくりたくなります(*^^*)

こういう司だと、無理強いとかできないんだろうな~とか考えつつ...
坊っちゃんの幸せに向かって頑張りたいと思います('◇')ゞ

また是非覗いてくださいね(*^^*)

2020/07/10 (Fri) 22:09 | EDIT | REPLY |   
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Re:

ka●様

へへっ、コメありがとうございます(*^^*)
一途ですよね~。8年も動かずにいるところが純粋過ぎるけど..(;´・ω・)

このお話は、とことん司の片思いっていうのを書いてみたくて始めたので、
読み手の皆さまにしてみるとモヤモヤ...ジレジレ...と鳴ると思うのですが(;^_^A

一緒に応援して頂けて嬉しいです(*^^*)

続き、2パターンが頭に浮かんで迷っています。
どうしようかなぁ...
書いてみて...かな?

2020/07/10 (Fri) 22:07 | EDIT | REPLY |   
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2020/07/10 (Fri) 10:27 | EDIT | REPLY |   
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2020/07/09 (Thu) 08:03 | EDIT | REPLY |   
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2020/07/09 (Thu) 06:34 | EDIT | REPLY |   
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2020/07/09 (Thu) 06:30 | EDIT | REPLY |   
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2020/07/08 (Wed) 22:52 | EDIT | REPLY |   

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