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Happyending

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「ケイトー!」

ロス郊外の通い慣れた公園に着くと、優は勢いよく走り出した。

「優、危ないよっ、気を付けて!」
「平気だよー。ママはゆっくり来て!」

振り向きもせずブランコへ一直線。
そこにはブロンドの女の子が揺れていて、優に気付いたとたんにブランコから飛び降りた。

「ユウ?ほんとうにユウ!?」
「うんっ!」
「うわぁーん!もう、あえないかとおもったー!!」

抱き合う幼いふたりの姿に思わず微笑んでしまう。
司に似たのか、優は小さい頃から女の子が苦手だった。プリスクールで『東洋のイケメン』と園児のみならず母親たちにまで騒がれたのがトラウマらしい。けれど、この公園で出会ったケイトは少し違った。初めてここで会った時、おませなケイトは優にこう言ったのだ。

『ユウのくろいめはママとおなじね。そのヘアスタイルはパパでしょ?とってもすてき。』

大好きなママに似ている瞳を褒められて、まだ会ったことのないパパと同じ髪型も好きだと言われた。そのことが優はとっても嬉しかったらしい。プリスクールでは男の子としか遊ばないのに、ケイトとは二人きりで時間の許す限り遊んでいた。とにかく、ふたりはとても仲がよかったのだ。


「ごめんね。ぼく、ニューヨークにおひっこししたんだ。」

NYでの生活が始まって半年が過ぎた。
つくしはずっとロスでお世話になった人々に挨拶をして回りたい考えていたが、怪我を負った司の看病やNYでの生活に慣れることに必死でなかなか時間は取れなかった。そうこうしているうちに妊娠が分かり、過保護な夫は飛行機に乗ることも許さなかった。

けれど、やっと安定期に入り、司も3日間ほどの出張だと聞きつけて、優を連れロスにやってきたのはは昨日のこと。昨日もこの公園に立ち寄ったがケイトには会えず、がっかりしたが、椿の邸に盛大に迎えられ賑やかな一夜を過ごしたところだ。

今日はお世話になったホテルとプリスクールに挨拶に行った後、もう一度この公園に来ていた。
ケイトの母親リサとは顔なじみだが敢えて連絡先の交換はしていなかった。つくしはシングルでホテルウーマンであることはそれとなく伝わっていたはずだが、リサの方も敢えてつくしの事情を根掘り葉掘り聞き出そうとするような人ではなかった。公園友達、まさにそれだけの関係だ。だから、今日もケイトがいるかどうかは分からなかったけど。会えてよかった...とつくしは微笑んだ。


「ニューヨーク?それならあたしのおじいちゃまのおうちもあるわ。あたしもおひっこしする!」

そんなことを言い出すケイトにつくしが慌てると、

「こらこらケイト、パパとママはどうするんだい?」

と声が掛かり、ケイトが「パパっ!」と振り返った。
少し離れたところからこちらに向かってくる男性。
スラリとした高身長でブラウンの瞳をした短髪の男性がにこやかに笑った。

「初めまして。ケイトの父アレンです。」
「優の母ツクシです。今日はリサさんは?」
「まだ下の子が2カ月なので自宅にいます。最近は僕がケイトの公園担当なんです。」
「そうだったんですか!」

そうだった。リサは待望の第二子を妊娠中だった。

そっか...無事生まれたんだ。
可愛いだろうなぁ。

ふふっと自然と笑みが漏れた時、

「もしかして、ツクシさんも妊娠していらっしゃる?あ、セクハラかな、これって...」

つくしは薄手のロングワンピースをふんわりと身に着けていたが、奥さんのリサの妊娠姿をしっかりと覚えているアレンはピンと来た。
ユウがクルクルの髪をした東洋人であることは何度もケイトから聞いていた。リサからもツクシの話も聞いて、確かシングルマザーだという話だったが。そうか、結婚をして、今はNY。優には新しいパパができたんだな...とアレンは一人納得した。

「あ...実はそうなんです。」

ほんのりと頬を染めるツクシは確かリサと同じぐらいの年齢だと聞いた筈だが、東洋人だからなのか、まだ30過ぎにしか見えない。白い肌に大きな目。恥じらう姿は何とも言えず、可愛い人だな...とアレンは素直にそう思う。

「おめでとうございます。」
「ありがとうございます。結婚して、今はNYで暮らしているんです。急なことでリサさんにご挨拶もできなくて。今日お会いできたら良かったんですけど.....。」

残念そうに呟いたつくしの腕をケイトが掴んだ。

「それなら、いまからうちにきて!」
「行ってもいいのっ!?」

するとすぐに優までその気になるから困ってしまう。

これまで椿に用意してもらった別荘には人を招いたことが無かった。それは自分たちの存在を目立たないようにするため。だから、今までホームパーティーに誘われたことはたくさんあったが、二人はお友達のお家にお邪魔したことも無かった。そろそろ優も視野を広げていかなくてはいけない時期だとは考えていたけれど、NYでは司があれこれ煩いし...。

「うちはここから近いんです。どうですか?その方が、僕もゆっくりできるし。」
「でも....」

これから先、たぶんなかなか会うことはできない二人。
だから今日は出来る限り遊ばせてあげたい。
けど......

実は、ヨーロッパ出張中の司には黙ってロスに来ていた。
もちろんSPは連れていて、今も木陰に潜んでいる。司には帰ってから説明するから黙っていてとお願いはしているが、知らない人の自宅へお邪魔するのは流石にNGよね。

「ママ、行こうよー。いいでしょ?」
「でも、パパが.....ね?」
「パパはママを困らせなければ何をしてもいいっていってるじゃん!」

.......困った。
司と優の関係は5年間会っていなかったとは思えないほどに良好で、今ではつくしが羨まししい位に仲良しだ。そして司の教育方針はただ一つ。

『ママがダメだと言ったらダメだ。』

これだけ。
それ以外は自由。
それだけつくしの教育方針を尊重しているということでもあるが、これを言われる度になんだか恥ずかしいのも事実。まるで、自分が夫と息子を尻に敷いているみたいに聞こえるが、実際のところ、つくしにあれはだめこれはだめと言いまくるのだから、自由ばかりではないのに。このロスへの小旅行だってお邸を出るまでいつバレるかと緊張の連続だったんだから!だから、出発まで優にも内緒にしていたぐらいだ。

つくしが頭を悩ませていると、
「リサもあなたに会いたいそうです。是非」
といつの間にか電話をしていたらしいアレンが、携帯を耳に当てながらウインクした。










「これぜんぶおじさんの車?」
「ああ。好きなシートに座っていいよ。」
「ユウ、こっちにのりましょっ!」

優とつくしをつれて、自宅へ帰ったアレン。
つくしとリサは再会を喜び、リビングでおしゃべりに花を咲かせている。
アレンは優とケイトを連れて庭遊びをしていたが、あちこち走り回っているうちに所有する車がズラリと並ぶ車庫まで来ていた。

流石は一流自動車メーカーのリード社の副社長。
所有する車は自社のものから、各国の一流メーカーのものまでさまざま。

「これ、ぼくのうちにもある」
「ん?」

優が指さしたのはリード社の最高級ライン。
これを所有するのは、相当な富豪ばかりだ。

..........あ、ミニカーか。
たしか、限定のミニカーが先月発売になり、即完売だったと広報から連絡を受けた。

「そうか、じゃあお揃いだね。」
「うんっ!ぼくのうちのはレッドだけど。」

ん?とまたしても首をひねるアレン。
この車種はブラックとホワイト、シルバーの三色展開だ。
落ち着いた大人エレガンスを売りにしているのに、レッドとは...。
しかも特注のボディーペイントカスタマイズは相当高額になる。
そもそも、そんなミニカー出してたか?

...........あ、単なる勘違いか。
正確な車種なんて5歳児に分かる訳ない。
なにを本気になって推測してるんだよ、俺は。

..........。

だが、なんとなく気になるのだ。
アレンは今日初めて優に会ったのだが、何か引っかかるような気がしてならない。
それは何なのか。
だんだんとその疑問がクリアになりつつあるような.....。


まず、初めて会ったが5歳児とは思えないほどに落ち着いている。
つい先ほどアレンのオープンカーに乗り込んだ時も、何となく違和感を感じた。
この自宅に入った時も。

そう、落ち着きすぎなんだ。
アレンが乗ってきていたオープンカーは世界に三台しかない限定のもの。そのエクステリアは男の子なら大はしゃぎしそうなものなのに、「このタイヤはどこの?」なんて真面に言うから驚いた。
それに、アレンの自宅はこのあたりでは一番の豪邸だ。なのに、少しも驚くことなく、ごく普通に「おじゃましまーす」と入ってきて、ジュースを飲み、慣れたように庭で遊んでいた。

子供なら、少しは驚いだり、はしゃいだりするものじゃないのか?
いやいや、俺が大人げないのか?
うーん.....

ツクシは最近までシングルマザーだったはずだし、通っていたプリスクールは自然派で知られるが特別敷居の高い所ではない。なのに、何というのか...。そう、ガッツいてこないのだ。


............似てるんだよな。
見た目だけじゃなく、そのちょっとムカツクぐらいのスカシ具合が。
それがまた自然で、男の俺から見てもクールなところが。

あいつと...


そうだ、あいつだ。



「ユウ、君のパパって...」
君のパパって何をしている人?
そう聞こうとしたが、娘の勢いに遮られる。

「ユウーっ!どれに乗る?」
「これ、乗ってもいいですか?」
「あ、ああ。いいよ。」

ケイトと優が乗り込んだのは、ポルシェのボクスター。
この車庫の中では一番手ごろなもので、妻のリサも乗りこなす車だ。
ここでフェラーリやブガティーに乗りたいと言わなかったところにアレンは少しだけホッとした。

気にし過ぎだ。
車の価値が分かっている訳じゃない。


やはり普通の子供だ...と、アレンが一人苦笑した時、

「ぼく、この車うんてんしたことあるよ。」

なんてことを優が言う。


.......聞き間違いか?

「すごーい!ユウ、うんてんできるの?」
「パパがいっしょのときだけだけど。パパが、これがいちばん乗りやすいからって買ってくれたんだ。」

・・・・・・・・・
乗りやすいから.....買う?


___はぁっ!??

そんな簡単な車じゃねーし!
だいたい足が届かねぇだろっ!
一体ツクシはどんなバカ男と結婚したんだよっ!!


「ユ...ユウ?」

ツクシは悪い男に色々騙されているのか...?
それなら、ここは俺が目を覚ましてやるべきなのか?
いやいや、子供にとっては酷だろ?せっかくできたパパなんだ。

「あ、おじさん。ママにはないしょね?パパにぜったい言っちゃダメだっていわれてるんだ。おこられちゃう。」
「い、いや.....」

やっぱり、ツクシは騙されてるんじゃねーかっ!
絶対におかしいぞっ!

フツフツを沸く怒りを覚えた時、アレンの携帯が鳴った。
何故か、執事からだ。
わざわざ、携帯に。


「どうした?」
『だ、旦那様。急なお客様がっ、ゼイゼイッ』
「客?今日は無理だ。ちゃんとアポを取るように伝えてくれ。」
『し、しかしっ。ハァッ、ハァッ!す、すでに、そちらに向かわれました!』
「はぁっ!?.....なんか、お前大丈夫か?なんでそんなことになるんだ.........よ.....」

電話の声が妙に近いと気付き視線を上げ、息を呑んだ。

慌てて追いかける執事を無視して、長いストライドで歩いてくる男。


「よぅ、久しぶり」

これまで一度だって見たことも無い程穏やかな笑顔で。
チノパンにポロシャツという爽やかな出で立ちで。

その男が右手を上げた。


アレンは驚きすぎて声がでない。
勝手に人のうちに入ってくるその強引さも。
人が変わったかのように明るい表情も。

現われたのは大学時代の同級生だ。
前に会ったのは2年前のパーティーだったか。
あの時は暗い顔をしていて、俺は、確かにロスに来いと言った気がするが。


...........ん?

アレンの頭をかすめる既視感。



「あっ、ユウのパパっ!」
「パパっ!!どうしたの?お仕事は?」

「終わらせてきたに決まってんだろ。」


颯爽と現れた男は、優の頭を一撫でしてからアレンを振り返った。


「息子の優だ。世話になったみたいだな。」

そしてニヤリと笑う。



「マジかよ....、ツカサ」




全て合点がいった。
半年前、目まぐるしく放送されたニュースの数々。

道明寺司の社長就任。
その直後に起きた交通事故。
副社長の犯罪と逮捕。
何より一番驚いたのは、事故翌日にもかかわらず発表された道明寺司の入籍。

詳しくは報道されなかったから知らなかった。
ツクシだったんだ。
学生時代から、ツカサが大切にしていた女性は彼女で、ツカサは長年の夢を実現したのだ。
新しいパパなんじゃない。
冷静になれば似すぎていた。
ドウミョウジツカサは正真正銘、ユウの父親だ。



「連絡ぐらいしろよ。」

呆れ果て、司の胸をど突こうとした拳が、パチンと片手一本で掴まれた。

「すげぇ、忙しくてよ。」
「だろうな。」

少し前までは死神に憑りつかれていた男は、
温かい、春のような優しいオーラを纏っていた。


「お前こそ、どんな子育てしてんだよ。」
「あ?」
「ユウだよ。ボクスター買い与えて運転させてるのか?ママには内緒だってよ。」
「うちの中でだけだ。俺が膝に乗せてだな...。つくしには言うなよ。贅沢させるなってうるせーんだよ。」


やれやれ...
そんな幸せそうな顔しやがって。


「......愛してるくせに。」


「まぁな。」



少しばかり疑ったことは許して欲しい。
柔らかい日差しを浴びながらはにかむ司に、アレンは心の中で小さく謝っておいた。




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終わろうかと思ったのですが、再会は?とリクを頂いたので、こんな感じで( *´艸`)
いつもたくさんの応援をありがとうございます。
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Comments 10

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Happyending  
コメントありがとうございます(*^^*)

いつもたくさんの応援をありがとうございます(*^^*)
今、後編を書き進めていまして…纏めてのお返事になりごめんなさい。

初めましての方も、コメントありがとうございます。
このお話、そんなに喜んでもらえるとは...びっくりです(@_@;)
私としては、F3やT3以外の友人とつかつくのお話、つまりはオリキャラのお話っていうのは、パラレルだといいのですが、原作の流れだとすっごく難しくて...。でも、こんなにたくさん反応頂けるということは、OKってことなのかな?とホッとしています。

後編書いているのですが、やっぱり会話が多くて(笑)。
難しいーっ!!
現時点でまた長いな。
後編で収まるか心配ですが、ぼちぼち頑張ります('◇')ゞ

それから、550000拍手になったと教えていただきました。
本当だっ!有難うございます。
もしかして、踏んで下さったのでしょうか?
拍手コメ プン●様 何かリクエストあれば是非。
とはいえ、頂いているリクに全部応えきれていないので、いつになるか分からないのですが(;^_^A
短編ネタだと嬉しいです(笑)。

もう週末が終わってしまいました。
朝晩と涼しくなってきましたね。
体調崩しませんように。

ではではまた、続きで!

2020/09/13 (Sun) 23:41 | EDIT | REPLY |   
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2020/09/12 (Sat) 21:56 | EDIT | REPLY |   
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2020/09/12 (Sat) 00:48 | EDIT | REPLY |   
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2020/09/11 (Fri) 20:56 | EDIT | REPLY |   
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2020/09/11 (Fri) 20:16 | EDIT | REPLY |   
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2020/09/11 (Fri) 19:31 | EDIT | REPLY |   
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2020/09/11 (Fri) 17:21 | EDIT | REPLY |   
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2020/09/11 (Fri) 14:51 | EDIT | REPLY |   
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2020/09/11 (Fri) 13:25 | EDIT | REPLY |   
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2020/09/11 (Fri) 12:37 | EDIT | REPLY |   

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