花より男子の二次小説。CPはつかつくonlyです。

With a Happy Ending

私は、大手広告代理店に勤めている。
社会人1年目。
大学3年の時から、インターン制度でお世話になって、そのまま就職をした。

現在は、雑誌に織り込む広告業務が私の仕事だ。
まだ暑い夏だけど、すでにこの秋冬の広告を作っている現状で、なんとも季節感のない仕事。

毎日仕事に追われている。
朝から晩まで仕事。
一人で住んでいるワンルームマンションに帰宅して、食事も適当に済ませてしまう、そんな生活。

社会人1年目の暑い夏。
5年ぶりに道明寺に再会したあの日からも、私の日常は変わらなかった。
これからも淡々と毎日が過ぎていく・・そう思っていた。


あの夜から3日目のこと・・

「おはようございます。」
いつも通りの朝。
自分のデスクに鞄を置いて、私は仕事に取り掛かった。

すると程なくして、内線電話が鳴った。
それは、社長秘書からで、今すぐ社長室へ来いとのこと。
どうして・・私が?という疑問が湧くのは当然のこと。
社長室になんて、呼び出されるような理由は思い浮かばない。
係長に事情を話すと、係長にも連絡が入ったようで、すぐに社長室に行くようい言い渡された。

首をひねりながら、初めて向かう会社の上層階。
一応、髪を手ぐしで整えて、ネームプレートの位置を確認し、社長室のドアをノックした。


「牧野さん、ご苦労様。」
「いえ・・・・あっ・・。」

思わず出てしまった声に、手のひらで口を塞ぐ。

だって・・。
だって、目の前に、道明寺が立っていたの。
相変わらず、完璧な出で立ち。
無表情な横顔にドキッとする。
私はすぐに自分の視線を逸らした。

「牧野さん、こちらは道明寺ホールディングスの道明寺司専務だ。英徳学園高等部で友人だったとか、存じ上げているだろう?」

友人・・・。
もう一度ちらっと道明寺を見たけれど、彼は何も言おうとしない。
つまり、友人というのは道明寺がうちの社長に伝えたことなんだ。

「はい・・。」

「道明寺専務は、先日帰国されて間もない。それで、社内外へのPRとして道明寺ホールディングスのHP内に、御自身の紹介などを定期的に上げたいんだそうだ。」
「はい・・。」
「それを、君にお願いしたいと仰られてね。」
「・・え?」

何それ?
そんなの絶対に、嘘だ。
だって、道明寺ホールディングスの広報部なんて、仕事を外注しなくても優秀な人材が集まっているはず。
それなのに、そんな個人的な内容のPRを他社に頼むなんて絶対におかしい。
社長だって、そう思っているはずだよね。
何で・・?

「あの。私はまだ、1年目で右も左もわかりません。」
「いや、君ができなくてもいいんだよ。」
「え?」

できなくていいって、そんなこと・・

「道明寺専務は、君を道明寺ホールディングスへ引き抜きたいと、そう仰っている。業務は先方が君に指導するということだ。HPは道明寺ホールディングスが管理しているから、うちが請け負うわけじゃないからね。」

どういうことなの?
私が道明寺ホールディングスへ行く?
仕事は向こうで覚えるから、今できなくてもいいってこと?

何を考えてるのよ・・
道明寺をじっと見つめると、今日初めて彼と目があった。
あの日、ホテルで抱き合って以来初めて。
どうしてか、道明寺が口角を上げた。

「牧野、一緒に働かないか?道明寺で。」

突然目の前に現れた道明寺。
本当に何を考えているの?
私とは、あの夜で終わりだったんじゃ無いの?
私を道明寺ホールディングスに入れてどうしようというのよ。

だけど、私に選択肢なんて残されていないことはすぐに分かった。
これは、決定事項。
私が駄々をこねたところで、何も変わらない。

この人は、一体何がしたいの?
私をどうしようとしているの?


私はその日のうちに、道明寺ホールディングスへの異動を命じられた。
出向ではなくて、完全なる移籍という形で。
私はあっという間に、道明寺ホールディングス広報部の社員になっていた。



***



あの日、目が覚めた時には、もう牧野の姿が無かった。
不覚にも、俺はぐっすりと眠っていたらしい。
ニューヨーク時代から今まで、高校時代と違って深く眠ることなどできなかったというのにだ。
牧野が腕の中にいる。
そして、俺の告白に答えないまでも幸せそうにに眠っているのを見て、安心感しちまった。

牧野はまだ、俺のもんになった訳じゃねぇのにな。
指輪も外していない。
まだ、何も変わっていない。

だが、これからだ。
容赦しないと決めたのだから。
これから一気に追い詰めるしかない。
同じ日本にいるということは、これ程に心が浮き立つもんなんだな。
アメリカにいては偶然に出会うこともなかっただろう。
あいつは俺の近くにいる。
俺が手を伸ばせば、掴めるところにいるんだ。
___やってやる。


この5年は、一度も牧野の消息を調べなかった。
だが、もう、それも終わりだ。

ここからは遠慮も容赦もしない。
俺の本領発揮だ。


俺は、すぐに牧野の現状を調べた。
牧野は、大手広告代理店に勤めていた。
去年、日本の経済誌に牧野が紹介されていた、その企業だった。

人間関係についての報告も受けた。
あいつは、5年前の雨の日に俺と別れた後、地方の高校に編入していた。
それから、奨学金を得て東京の国立大学を卒業し、現在に至る。
親しい交友関係に、牧野の恋人と思われる男はいなかった。
ただ一人、俺の知る人物以外には。

____花沢類。


俺の幼馴染である3人は、時折ニューヨークを訪れることがあった。
だが、誰一人として、俺の前で『牧野』のことを口にする奴はいなかった。
類とは、確か2年前に会ったのが最後だ。

3週間前に日本に帰国してから、俺はあいつらに一度も会っていない。

類か・・。


いや、しかし・・
俺はあの指輪から類は想像できなかった。
類と牧野が付き合っていたとしても、あいつは俺にそんなことは言わないだろう。
だとしても、あの指輪の贈り主は類じゃないと断言してもいい。
類という男は、繊細な男だ。
恐らく、女に贈るものには拘りを見せ、芸術品並みのものを用意するに違いない。もちろん、俺も負けはしないが・・。
しかし、あの牧野の指輪は、一粒づつの小さなダイヤが単に寄せ集められたような、そんな計算性のない並び方をしていた。
だから、俺はあれを類がオーダーするとは思えなかった。

じゃあ、誰だ?


そう考えた俺は、いっそのこと、牧野を俺の手元に置こうと決めた。
あいつを側におけば、あいつの私生活を知ることができるだろう。
あの指輪の贈り主も自ずと明らかになる。
何より、俺が牧野の側にいたかった。
あいつの体を知った今、もう離れていることは出来ない。

過去は必要ないんだ。
今、現在を手に入れようとしてるのだから。
少しずつ、あいつを追い詰める。
あいつの体はすでに俺のものだ。
後は、心を取り戻すだけ。
少なくとも一年前までは、俺が贈ったあのネックレスを身に着けていたはずなんだ。

今、誰を想っていようとも関係ない。
もう一度、俺のことを好きになれ。
そして、体にも覚えこませてやる。
お前も、俺から離れなれないように。



すぐに俺は行動に移った。
牧野を道明寺ホールディングスの広報部に呼び込んだ。
出向ではなく、完全なるヘッドハンティングだ。
悪いが、優秀かどうかは関係ない。
だが、経済誌に乗るほどの学生だ。
無能ということはないだろう。
それに、俺のPRをするなら、あいつが一番適任だ。
俺の全てを知っているのは、あいつしかいねぇんだからな。

牧野が断るという選択肢はないはずだ。
断れば、広告代理店に圧力をかけるつもりだった。
それが分かっていたであろう牧野が、俺の提案に頷くしかなかったのは、当然のことだった。



道明寺ホールディングス日本支社。
道明寺グループの専務である俺は、事実上、ここのトップだ。
俺の指示は絶対だ。
逆らうことは許されない。

俺は、内線を押した。

「広報の牧野つくしを俺の部屋に。」


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いつもたくさんの応援をありがとうございます。
コメントにお返事を書く時間が取れずにすみません。
楽しく読ませていただいています。
  1. Eternal(完)
  2. / comment:2
  3. [ edit ]

牧野が広報部に出社したと連絡を受けた俺は、直ぐに彼女を呼び出した。
この専務室に一年目の社員を呼びつけるという時点であり得ないことだ。
だが、そんなことはどうでもいい。
牧野に会うために、彼女を異動させたんだからな。

控えめなノックの後、牧野がゆっくりと姿を見せた。
その小動物のような動きに笑いたくなる。
いつでも逃げ出そうというその態度。
だが、逃さねぇ。

「道明寺・・専務。あの・・何か?」
「牧野、まぁ、座れ。」

何か言いたげな牧野を革張りのソファーに促した。
仕方ない・・といった様子で腰を下ろしたこいつの右隣に俺も身を寄せる。

「ちょっと・・近い・・」
「いいだろ?何か、問題あんのか?」

お前は俺のもんなのに、何か問題あんのかよ。
牧野が左にずれれば、俺も左へ詰めて行く。
ソファーの左端まで移動して、牧野はどうやら諦めたらしい。
俺の方に向き直った。

「う・・ううんっ。ゴホッ。で、ですね。私は、どうしてここにいるんでしょう?」
「仕事の説明だ。」
「仕事って・・。PRのこと?本気なの?私が役に立つ訳ないでしょう?」
「俺のことを一番知っているのはお前だろ?お前以外の誰が、俺のPRをするんだよ。」
「知ってるって・・何も知らないわよ。この5年間のことは何も知らないし。PRって、会社のためのPRでしょ。悪いけど、私、道明寺ホールディングスの仕事内容とか全然理解してないよ・・・。」

「お前にしてもらいたいのは、俺の個人的なPR。うちのHPにアップしていきたい。月に一度ぐらいの頻度で、現状報告とかな。」
「ねぇ、道明寺・・。じゃなくて、道明寺専務。それは、私でなくても出来ますよね。むしろ、私では責任が重すぎます。どうして・・」
「どうして・・か?」

懐かしいな。
こいつが噛み付いてくる感じ。
俺が何を言ったところで、素直に受けるような奴じゃないんだよな。
変わってねぇ・・

だが、俺もあの頃と大して変わってはいない。
こいつが欲しいだけの男だ。
こんなに軽口叩ける女は牧野だけだしな。
あの頃言っただろ?
何処まででも、追いかけてやるって。
それが例え、地獄だとしてもな。

「お前を側に置くために決まってんだろ?」
「え?」
「この指輪の贈り主から、お前を取り戻すため。」
「はい・・?」

こいつには回りくどいことは通用しねぇから、直球勝負だ。
俺の告白をスルーした女を取り戻すって言ったんだ。

どうだ?

牧野がキョトンとして俺を見上げる。
それから、怪訝そうに眉をひそめた。

「あんたこそ、何言ってるの?」
「は?」
「聞いたよ。アメリカのなんとかっていう大企業のご令嬢と婚約したんでしょ?広報も大変だって言ってた。あんたのPRって、まずそのこと?」

はぁ?こいつは何を勘違いしてんだ?

「お前は、何を言ってんだ?」
「それは、こっちのセリフっ!」
「何がだよ。」
「あんた、私を愛人にでもするつもりなの?」

牧野が俺を睨みつけている。


訳わかんねぇ。
愛人だ?
あの夜、ベッドで告白しただろ?
聞いてなかったのか?
お前のことが今でも好きだ、忘れたことなんて一度もねぇ。
だから抱いた。
俺は、本気の女じゃなきゃ抱かねぇよ。
それなのに、愛人って何だ。

どっかの令嬢との婚約?
どこから仕入れた噂話だよ。
そんなことある訳ねぇし。
俺は、5年前からお前以外考えられねーんだから。



だが、この時の俺もやっぱりどうかしてた。
愛人だって、何だって、構わねぇ。
こいつを俺の側に置く。
指輪の男へは返さない。

もちろん、こいつは愛人なんかじゃねぇけど。
お前が、その男と別れるまでは、俺がお前の愛人になってやる。


「愛人・・ね。いいんじゃね。じゃあ、契約な。」
「ちょっとっ!冗談でしょっ。・・・っ、あっ・・!」

そのまま、牧野の唇を塞いだ。
両手でこいつの頭を抱え、絶対に逃さない。

ドンドンと胸を叩かれるが、気にしねぇ。
愛人だか、何だかしらねぇけど、つまりは、お前が俺から離れなければいい。
もちろん一生だ。
俺には、お前しか必要ねぇんだから。

しばらく柔らかい唇を堪能した。
牧野も途中からは抵抗しなかった。
俺のシャツを握りしめたまま、硬直している。
俺はここぞとばかりに舌を絡め、徐々に満たされていく。
牧野とでなきゃ味わえない満足感に浸っていく。


体の硬直も解けた頃にゆっくりと唇を離せば、苦しそうに、だけど濡れた瞳で俺を睨みつけてくる牧野。
ホント、懐かしいな・・この目。
こいつに睨まれて、それでもこいつに近づきたくて仕方がなかったあの頃が、昨日の事のようだ。

だが、俺は5年前の俺じゃない。
お前を手に入れるためなら、何だってする。
何だってできる。
そういう男になった。


「今夜、メープルのスイートに21時な。俺も必ず行く。」
「なっ!」
「来なきゃ、俺がお前のマンションに行く。」
「ちょっとっ!あんたっ。」
「お前が来るか、俺が行くか・・。」

俺は、胸ポケットからメープルのカードキーを取り出した。

「専用のエレベーターに乗れ。」
「乗れる訳ないでしょ。叩き出されるよ。」
「お前にSPをつける。」
「はぁ?何言ってんの?」
「24時間監視するから。」
「ちょっとっ、本当にいい加減にして!」

俺はソファーから立ち上がった。
21時メープルに入るなら、今から仕事を詰め込まないと間に合わない。


「こんなこと・・だめだよ・・。」
小さく、牧野が呟いた。

「ダメなもんか。いいか、俺は婚約なんかしてねぇぞ。あとは、お前次第だ。お前が覚悟を決めるまでは、俺がお前の愛人になってやるって言ってんだ。」

お前が、そのリングを外すだけだ。

そう言った俺に、牧野はこれ以上はないという程に驚いた顔をしていた。


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しばらく更新できなくてごめんなさい。
元気に旅行に出かけたはずが、食中毒?食当たり?になったりして、とんだ旅行になってしまいました。
今は、少し早く帰ってきた帰りの新幹線です。
またぼちぼちと更新していきますので、よろしくお願いします。
  1. Eternal(完)
  2. / comment:6
  3. [ edit ]

私が道明寺ホールディングスに移籍して1か月以上が過ぎた。

初めて出社した日から、私と道明寺との関係は続いている。
勝手に調べたらしい私の携帯番号に連絡が入り、メープルで落ち合う。
私にSPを付けるというのは冗談じゃなかった。
一応は配慮したのか、小さめの、だけど誰が見ても高級だとわかる車が迎えに来て、ホテルの地下駐車場からはスイート階直通のエレベーターに乗せられる。
誰にも見られていない・・言わば、秘密の関係。

会えば、当然体の関係になる。
仕事の会話なんて少しだけ、後はひたすらに抱き合う。
初めての時とは違って、優しく抱かれていると思う。
だけど、私は道明寺の熱を受け止めるので精一杯で、あいつが何を考えているのかは全く分かっていなかった。ううん。分かろうとしていなかったのかな。

初めこそ、明け方には帰ろうとベッドを出ていたけど、今では腕一本で引きとめられて、朝まで一緒に過ごすようになった。

「もう1ラウンドするのと、このまま俺の腕の中で眠るのとどっちがいい?」

心地よいバリトンヴォイスが、右耳に聞こえる。
なのにそう囁く道明寺は、とても意地悪な顔をしていた。
それって、どっちにしても帰さないってことだよね。
それなら・・
私は、ゆっくりと道明寺に背を向けて、それから瞳を閉じる。
道明寺は安心したように、私を両腕で抱え込んで眠りに就くんだ。


あいつは、私の愛人になったなんて言ってるけど、それってどういうことなのかさっぱり分からない。
私も道明寺も結婚している訳じゃない。
どこかの令嬢との婚約という話も、事実ではなかった。
広報部も噂話に踊らされていたとして、厳重注意を受けた。
だから、私たちは、後ろめたいことをしているって訳じゃない。
だけど、この関係は何と言えばいいの?

道明寺は私のことを、大切ににしてくれている。
それは肌で感じられる。
憎しみだけではない、彼からの愛情。
でも、どうして?
私たちは、これからもどうなるの?

道明寺は将来のことを何も語ってくれない。
この関係はいつまで続くのか。
この関係がいつ終わるのか。
どうして、こんな関係になったのか。


22歳になって、初めて知った行為。
道明寺は私の体を知り尽くしてしまった。
的確に私の感じやすいスポットを突いてきて、私を絶頂まで導く。
あれ程痛かった行為なのに、今ではもっとして欲しいと思うなんてなんて、私はどうかしてるのかも。
だけど、いつの間にか、道明寺がいないと安心して眠れないほどに、彼に溺れるようになっていった。

「俺とお前、完璧に相性がいいな。もう、俺なしじゃダメだろ?」

そんな風にまた意地悪を言う。
右耳に聞こえてくるのは、彼からの皮肉ばかり。
一体何が言いたいのよ。
私をこんな体にしてどうしたいの?


それから、道明寺に言わせると、私は左耳が感じやすいらしい。
だけど、私は言わなかった。
左耳は聞こえにくいんだということを。
聞こえが悪い分、とても敏感なんだということを。

道明寺が私の左耳を攻める。
抱き合っている時はいつも左耳に何かを囁く。
彼が達する時にも、左耳に何かが聞こえてくる。

左耳に囁かれる言葉は、上手く聞こえない。
それが、愛なのか、憎しみなのか、何なのか。
だけど、こうして優しく抱かれていると、そんなことはどうでもよくなるんだ。
左耳に囁かれる言葉が何であれ、今、道明寺と一緒にいることが、私の幸せだから。





私は道明寺ホールディングスの広報部で、道明寺司のPRを受け持っている。
私のために用意された仕事。
会社のHP内での道明寺司の自己紹介から始まり、道明寺個人のメディア対応も私の仕事になった。
道明寺自身はマスコミ嫌いで、マスコミへの露出は必要最小限に制限していたから、広報はなかなか道明寺司のPRに動くことができず、これまで苦労していたんだそう。
だから、私が入ってきて、仕事がやり易くなったと喜ばれた。
私はというと、道明寺が行うマスコミ会見や、雑誌の取材など、全てのPR活動を調整し、それらに随行するようになり、必然的に道明寺と一緒にいる時間が増えていった。

そうしているうちに分かってきたことがある。
道明寺がこの5年間で築き上げた地位や名声。
これからも、ますます羽ばたいていくであろう未来。

あぁ、もう本当に、あの頃の、高校生の道明寺じゃないんだね。
世界の道明寺司と言っても、過言ではないね。

それなのに、道明寺は私に何を期待しているんだろう。
道明寺は、「私次第」だと言っていた。
私次第って、何だろう?

『私次第』の意味。
私があんたのことを愛してるって言ったら、どうするっていうの?



5年前の雨の日に、私たちが別れなければならなかった理由。
それは、今も解決なんてしていない。
私は、道明寺にとって、プラスになる人間じゃない。
道明寺グループにとって、役に立つ人間じゃない。
なのに、私たちは、今、何故一緒ににいるんだろう。

先が見えない不安はあの頃と同じなのに・・。

あの頃と変わったこと。
それは、表立った妨害がないことだった。
私と道明寺が密会することを誰にも咎められなかった。

道明寺は、私にとって、今も昔も、ずっと大切な人。
ずっと好きな人。
だけど、いつまでたっても、私たちの住む世界は違うんだね。
私たちは一緒にはなれない。
例え、二人のが愛し合ったとしてもそれは認めなれない。
だから言えないよ。
愛してるだなんて。
伝えてしまえば、別れが辛くなる。

私次第でいいというのなら、
いつか別れる日が来るとしても、それまでの日々を大切にしたい・・本当にそう思った。



***



俺たちは、メープルで逢瀬を重ねている。
あいつの左手にはまだ、あのリングが嵌ったままだ。

この1か月、牧野が俺以外の男と会った様子はない。
SPからの報告もない。
当然、類とも会っていない。

一体、あのリングは何なんだ?
そして、俺はどうしてあのリングに拘る?
無理やりに引き抜いてしまうこともできるのに、そうしないでいるのは何故なんだ。

牧野が、愛おしそうにそのリングを見つめるから。
それほどに大切なものだと分かるから。
そんな牧野の姿が、余計に愛おしくなるから。


俺は、牧野が左手で髪をかきあげて、左耳に掛ける仕草が好きだ。
綺麗なうなじが見える様子が凄くいい。
だが、その手には、あのダイヤのリングが収まっている。

だから、いつもその左手を握りこんでしまうんだ。
あいつを抱く時には、左手を握り、左耳に囁く。

「愛してる。だから、俺のものになれ。」


あいつを抱けば抱くほど、夢中になる。
一晩でも一緒にいられなければ気が狂いそうだ。
その一晩に他の男に取られるかもしれない。
だから、俺は、毎晩のように牧野をメープルに誘い出すようになっていった。


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たくさんの励ましをありがとうございました。
すっかり元気になっています。健康って本当に大切ですね・・。
Eternalは、このまま一気に書きたいですが・・いけるかな?
  1. Eternal(完)
  2. / comment:6
  3. [ edit ]

俺は、やはり狂っているのかも知れない。
近くにいれば、もっと近くにいきたくなる。
いつもあいつの声が聞きたくて堪らなくなる。
手が触れる距離にいないと不安で仕方なくなる。

そして、あいつを追い詰めているつもりが、追い詰められているのは自分の方だと気付かされる。



「この後、9時から3社ほど面談がございます。その後は、書類に目を通して頂き、12時よりメープルで松田社長との会食。一度帰社して頂いた後、17時より役員級会議です。」
「16時に牧野を呼べ。」
「は?」
「牧野を部屋に呼んでおけ。」
「しかし、今回は広報の仕事は・・」
「呼べと言ったら、呼べよ。16時には俺の部屋に来させろ。1分たりとも遅れは許さない。」
「はっ、はいっ。」

俺の凄みに驚く秘書。
だが、もっと驚いているのは俺自身だ。
自分の欲望を抑えることができない。

この2日間、俺は牧野に会っていなかった。
九州出張から戻り、滞っていた執務に時間を取られた。
昨日の夜、牧野をメープルへ呼び出すつもりが、全く時間が取れなかった。
夜中に会社に呼び出すこともできたが、それはしなかった。
二人の間で、暗黙の了解があるように感じる。
俺たちが会うのは、夜、メープルのスイートで・・と。

だが、今日はもう限界だった。
2日会えなければ耐えられない。
今晩だって、会えるかどうかは分からない。
メディア関係の仕事が無ければ、おいそれと牧野を呼び出せないことなんて分かっている。
けれど、今夜も会えなければ、あいつがどこかに行っちまうかもしれない。
俺は気が狂いそうだった。


12時の会食が思ったよりも長引いたが、14時半には執務室に戻った。
16時になれば牧野に会える。
16時を指定したのは、17時に会議があるからだ。
1時間だけの逢瀬。
リミットを決めておかなければ、ズルズルと牧野に飲み込まれて、俺は仕事もこなせない堕落した人間になっちまう。
欲望のままに生きてみたい。
だが、それをすれば、あいつを捕まえられないことも分かっていた。

1時間で充電する。
そう気合いを入れ直し、山積みにされた書類に向かった。

牧野に会えると思えば、猛スピードで仕事のが進む。
16時前には積み上がった書類がなくなった。
仕事がなくなれば、嫌でも考える時間ができちまう。

早く、牧野に会いてぇ。
そもそも、なんでこんなコソコソした関係になってんだ。
なんで、俺たちはこそこそとメープルで会わなきゃならない?
それに、あいつには、本当に男なんているのか?
あいつからはそんな雰囲気は微塵も感じられないし、事実そんな報告も上がっていない。

だいたい、なんで俺は、あいつに男がいると思ってんだ。
そう考え直す。
そうだ、あのダイヤの指輪だ。
あれを嵌めているくせに俺を拒否しない牧野。
冷静になれば、真面目な牧野が二股なんてあり得ない。
じゃあ、何で?

俺は、何かを見落としてる・・・
それは・・何だ?




____コンコンコン
もう少しで何かを閃きそうだと思った時に、ノックの音。
我に返ると、16時ジャストになっていた。

「牧野です。」

そう前置きをして、牧野が執務室へ入って来た。
牧野の姿を見たとたん、俺の意識は完全に牧野に囚われる。
今まで抱いていた疑問も完全に吹っ飛ぶ。
考えなければならないことを考える余裕も無くなった。

「御用でしょうか?」

そんなつれない牧野の態度を崩したくなる。
御用かどうかなんて愚問だろ?
俺はお前に会いたかっただけだ。
2日会ってねぇ。
2日抱いてねぇんだ。
くそっ!分かれよっ!

ドアの前から動こうとしない牧野。
その牧野に近づいていく俺。

「それ以外に言う事ねぇの?」
「勤務中でしょ?」
「だから何だよ。」

「きゃっ、ちょっとっ!」

牧野の腕を引き寄せ、その華奢な体を抱きしめた。
目を閉じて、彼女の香りを堪能する。
そんな俺を引きはがそうとする、冷たい牧野。
ベッドの上ではあんなに乱れるくせに、ここでは知らんぷりなんだな。
一体どれが本当のお前なんだ?

「お疲れ様とか、何とか言えよ。」

そう呟いた俺に、急に心配そうに牧野が言う。

「どうしたの?疲れてるの?大丈夫?」

「大丈夫じゃない。」

「本当にどうかしたの?」
「なぁ。俺、もう限界かも。」
「何が?どうしたの?」

先ほどよりも格段に優しい牧野の声。
俺を心配してくれている、大きな瞳。
俺のことを本気で心配してくれる女なんて、こいつしかいねぇのに。
ああ、どうして俺が欲しい唯一のものは、俺の手に入らないのか。
なんで、お前は指輪を外さないんだ。
なぁ、俺が贈ったネックレスはどこに行った?
どうして、お前は俺のもんじゃないんだよっ!

彼女に再会し、新しい彼女を知る度に、ますます彼女に惹かれていく。
綺麗になった女が作る懐かしい笑顔も、その甘美な体も、何もかもに。
全てを俺のものにしたいのに、手に入らない。
___このままじゃダメだ。


俺は牧野の体を離して、彼女の瞳を覗き込んだ。

「お前が欲しい。」

驚いたような彼女の表情。
大きな瞳をさらに大きく見開いている。
何でだよ。
何度も言ってんだろ?
愛してる。だから、俺のものになれって。

「道明寺・・それって・・・」

何度も伝えていた言葉なのに、牧野は、今初めて聞いたかのように戸惑っている。

「俺は、もう待てない。」
「待てないって・・何を言ってるの?・・やっ。ちょっと待ってっ!」

俺は、牧野の左手から、ダイヤの指輪を抜き取った。
そして、それを窓ガラスに叩きつける。

ガチッという音とともに、指輪は絨毯へと落ちていった。
その指輪を拾おうと牧野が駆け出していく。

が、そうはさせない。

彼女の腕をつかみ、革張りのソファーへ押し倒した。

そのまま牧野の上にのしかかり、その唇に食らい付く。
髪を振り乱して抵抗するこいつを開放してやるほどの余裕は、この時の俺には無かった。

指輪は捨てた。
牧野が大切にしていた指輪を捨てた。
だからと言って、牧野の心が俺のところに戻ってくる保証なんてどこにもないのに。
だったら、こいつの体を縛るしかない。
そうするしか、俺には道が残されていない。

スカートの中に手を差し入れ、ストッキングとショーツを一気に下ろした。
騒ぎ出す前に唇はキスで塞いでいる。
片手で、牧野の花芯を刺激する。
抵抗していた牧野が俺のジャケットをギュッと握りしめた。

感じてるんだろ?
それなら、このまま俺のもんになれよ。

牧野の中に指を沈め、的確に牧野の弱点を攻めていく。
俺のジャケットを握った手に更に力が込められて、牧野の中がヒクヒクと痙攣した。
全身の力が抜けた牧野から、ゆっくりと体を離していくと、牧野が呆然と俺を見つめていた。
その表情はとても悲しそうで、俺は自分がしたこの行為が正しいことなのか、それとも間違ったことなのか分からなくなり、それまで抱いていた僅かな自信さえもが崩れていくのを感じていた。



***



役員級会議は19時に終了した。
執務室にいるはずの牧野にすぐに会いに行こうとした俺に、秘書が言った。

「牧野さんは、あれからすぐに広報へ戻られました。」
「はっ?あいつを部屋から出すなと言っただろっ!」
「ですが、ご本人が戻ると・・」

牧野の具合が悪いから、俺が戻るまで必ず執務室で休ませておけと言い付けていたのに、こいつら全く使えねぇ。

「すぐに呼び戻せ。」
「今日は、もう帰宅されました。顔色が悪かったので、広報の部長に連絡を入れまして・・」
「勝手なことすんなっ!」
「申し訳ございませんっ!」

あのまま、牧野を帰してしまった。
後悔ばかりが押し寄せてくる。

「しかし、さすがは専務ですね。優秀なご友人をお持ちです。牧野さんはとても飲み込みが早いと、広報部長もおっしゃっていました。あの左耳の障害がなければ、外部の業務もこなして欲しいのにと残念に思われていて・・」

・・・・。
今・・・なんて?
左耳の・・・障害?

スルーしそうになった秘書の言葉が、頭の中を占拠する。

「牧野さんは左耳の聞こえが悪いそうですね。なので、不手際があっては困るからと、外回りの仕事は控えたいとのことで。今は、内勤と専務のPR活動のみに専念してもらっているそうです。」


それからもペラペラと話す秘書の言葉なんて、何一つ耳に入ってこなかった。

左耳に障害?
俺は・・・何も知らねぇ。

首筋に冷たい汗が流れた。


俺が見落としていたもの・・・
それは、このことだったのか?


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牧野は左耳に障害がある。

牧野がよく触っている左耳。
あれは、聞こえが悪いから?
あいつは左耳が感じやすいと思っていた。
それは、聞こえないから・・だからなのか?

俺は・・何てっ!


思いがけず知ったその事実によろめきそうになるのを必死に耐え、執務室に戻った。
ソファーにドカッと沈み込み、頭を抱える。

再会してから、もう2か月近くになる。
今まで何度も抱き合って、あいつに俺の気持ちを伝えてきたと思っていた。
あの左耳に囁けば、俺の気持ちが伝わると勘違いをして、何度も何度も囁いた。
それが、ほとんど伝わっていなかったということか。
そうなのか?

あいつを快楽に導いているつもりで、そうじゃなかった。
いや、そんなことじゃない。
2か月も一緒にいて、この事実にも気づいてやれなかったなんて・・。
俺は、何て馬鹿なんだ!
畜生っ!!


焦る。
俺は、強烈に焦ってる。
きっと俺が伝えたかったことは半分も伝わっていない。

そうだ、あの指輪。
あれはいったい何なんだ?
それを考えていたはずなのに、牧野に会った瞬間にそんなことはどうでもよくなったんだ。あいつの指から指輪を抜き取って、捨てた。

あの指輪はどこに行った?
俺はすくっと立ち上がり、巨大な窓に走り寄った。
指輪を叩きつけた窓ガラスには、一筋のうっすらとした傷が残っていた。
その傷をたどって視線を下ろしていくと、そこにはあの指輪が落ちていた。

牧野が持ち帰った訳じゃなかった。
なのに、この虚脱感。
あいつは大切にしているものを捨てるような奴じゃないのに。
これを持ち帰らなかったということは、この指輪はもう用無しだということなのか?

それでいいじゃないかと思いながらも、やはりだめだと思い直す。
牧野が大切にしているものだから、俺も大切にしてやりたい。
あいつに男なんていないことは、この2か月で分かっていたんだ。
だから、じっくりあいつの話を聞いてやるべきだったのに。
そうしなかったのは、俺だ。

俺はその指輪を拾い、じっと眺めた。
やはり懐かしい気持ちになるのは何故なんだ。

答えはすぐそこにありそうなのに、辿り着けないもどかしさ。

まずは、あいつの耳だ。
どうして、左耳が聞こえないんだ?
どうしてそれを俺に言わなかった?

俺は指輪をパンツのポケットにしまい、携帯電話を取り出した。

牧野のことを知っているとすれば、こいつしかいない。



***



メープルのラウンジに幼馴染を呼び出した。
類を呼び出したはずが、ほかの二人もついて来た。
どうやら、類が連絡したらしい。

「司、ずいぶん前に帰国してたんだろ?連絡位しろよ。」
「忙しいんだよ、俺は。」

「へぇ・・。毎晩、スイートに出入りしてるらしいじゃん?」
嫌味たっぷりに言うのは、総二郎。

「・・・。」
「結構、話題になってるぜ?知ってんのか?」
少し心配そうなのは、あきら。

道明寺司が毎晩メープルのスイートで女と密会している・・そんな噂が立っていることは知っていた。
だが、俺のプライベートに関してはマスコミに規制をかけているし、牧野のこともSPを使ってカバーしていたつもりだ。
あいつの情報が出ることはないだろう。


「相手・・牧野だよね。」
珍しく、時間に遅れることなく到着した類が、『牧野』という言葉を口にした。

この5年、俺たち4人の中で、『牧野』の言葉を出した奴はいなかったと言うのに。
だが、俺はその問いには答えなかった。
俺の方が聞きたいことが山ほどあるんだ。

「牧野って、今付き合ってる男いるのか?」

そう尋ねた俺に、怪訝そうな表情をする3人。

「牧野の男?」
「いねぇだろ、あいつ。」
「いないね。」

俺だってこの2か月で、あいつに男がいるとは思えなくなっていた。
だが、こいつらは、どうしてそう断言できる?

「お前ら、牧野とどれぐらい会ってんだよ。絶対って言えんのか?」
「一番会ってるのは、類だろ?俺は、半年に一度ぐらいだよ。」
「俺も。」

あきらと総二郎は半年に一度ぐらいの付き合いらしい。

「俺は、牧野と連絡は取ってるけど、この3ヶ月は音信不通。でも、それって、司が絡んでたんじゃなかったの?まぁ、俺は、牧野が幸せならそれでいいんだけどさ・・。」

こいつらによれば、やはり牧野に男なんていない。
じゃあ、あの指輪は一体・・・
それに、左耳はどうしたんだ?


「なぁ、類・・あいつの左手のリングって・・。」

そう切り出した俺に、類が少しだけ笑って視線を投げてくる。

「なんだ、司。やっぱり、牧野に会ってたんだ。あの指輪。気が付いた?懐かしいでしょ?。」
「懐かしい?」
「あれ?分からなかった?」

面白そうに類が言う。
総二郎とあきらも表情を崩した。

「やっぱ、司は牧野かよ。5年もたってんだ。他に女なんてたくさんいるだろうが。」
「俺も、今更、司が牧野に会ってるだなんて、俄かには信じられないな・・」


「「でもよ、愛だよなー。愛!!」」

「牧野の愛が報われたかと思うと、なんか感慨深いよな。」
「あの事故の時は、マジびびったから。」

総二郎とあきらが二人揃って騒ぎだす。
だが俺は、奴らの言葉に、心臓が止まるかと思うほどの衝撃を受けていた。


牧野の・・愛?
事・・故?


ガシャッ!!
思わず、スコッチが入ったグラスをテーブルに落とした。
低い位置だったから溢れはしなかったが、その音でその場が静まり返る。


牧野が事故にあった?
何だそれは?
いつ?
聞いてねぇ・・何も聞いてねぇぞ!

自分の手が、僅かに震えている。


「おい、司、お前、もしかして本当に知らないのか?」
「知ら・・ねぇ。」
「何だよ、俺らはてっきり・・」
「お前なら、牧野のこと、とっくに調べてると思ってた。」

調べたさ。
牧野の現状を。
広告代理店に就職し、男関係は特に見当たらないってことぐらいは。

他に、一体何が?
俺は・・何を見落としてるんだ?



類がふぅーっと息を吐いてから話し出した。

「牧野はさ。高校の時から、ずっと司のことが好きだったんだよね。司んちのおばさんに圧力かけられて別れたけど、忘れられなかったみたい。」

俺はじっとその話に耳を傾けていた。

「大学生になって東京に戻って来たんだ、牧野。俺は、時々会ってた。何度か、告白もしたけどさ、やっぱ司じゃなきゃダメみたいでさ。」

俺は類をギロリと睨んだ。
そんな俺を軽く笑って、類が話し続ける。

「あの土星のネックレス、覚えてる?」
「忘れる訳ねぇだろ。」
「あれ、牧野の宝物。」
「今は、もう持ってねぇよ。」

怖くて聞けなかったネックレスの行方。
俺は帰国後、一度もあのネックレスを見たことがなかった。

「牧野、一年前に事故にあったんだよ。」
「どういうことだ?」
「あいつ、いつもバイトを夜遅くまでしててさ。その帰りに男に襲われた。」
「っ!」
「レイプ目的じゃなかった。物盗りだった。牧野がいつも身に着けてた、あのネックレス狙いだったんだ。あいつ、司と別れてからもずっとあれしてたし、冬は洋服で隠れてたけど、夏は隠せてなかったから。本人も隠そうとしてなかったと思うけど。あれ、司が選んだダイヤとルビーでしょ?誰が見ても高級品だよね。あの土星の形は珍しいけどさ、あれだけふんだんに石を埋め込んでたら、売りさばこうって奴らに狙われても仕方がなかった。」

ガンッ!
俺はテーブルを殴りつけた。
俺が牧野に渡したプレゼントのせいで牧野が襲われた。
その事実にやり場のない怒りが沸騰する。
犯人を絶対に許すことはできない。

「もみ合った挙句に、チェーンが切れて、その男にネックレスを奪われた。相手がナイフとか凶器を持ってなくて良かったんだ。それなのに、牧野は犯人を追いかけて。あいつ、足が速いんだよね。犯人に追いついて、また取っ組み合い。そのまま、大通りに飛び出して、車に引かれた。」

「フロントガラスに全身強打して、意識不明だったんだぜ。」
「でも、手にはしっかりネックレスのチェーンを握ってた。」
「実際には、トップの土星も事故の衝撃で壊れてたけどね。残ったのは、はめ込まれたダイヤが7つ。これ、意味分かる?司。」


聞いてねぇ。
いや、あいつがそんなことは言う訳がねぇのに。
俺が贈ったネックレスのせいで襲われた何て言える筈がない。
俺は一体何を調べてたんだ。
あいつの現在ばかりを知りたがり、俺と離れていた5年間を知ろうとしなかった。
だから、この事故が報告されなかったんだ。

両手の震えを止められない。


「あいつの・・耳・・。」
「あ、それは気づいたんだ。あいつ、結構隠してるみたいだけど、仕事では迷惑かかるからって職場には報告してるらしいね。」

いや、俺は、気づいてなんかいなかった。
あいつの指輪に気を取られて。
あいつの5年間を振り返ってやることもしないで。
過去よりもあいつとの未来を掴もうと必死になっていた。
俺の知らないあいつの5年を知りたくないと切り捨てたから・・だから、俺は気づけなかったんだ。

「事故で左側の耳小骨を損傷した。全く聞こえない訳じゃないけど、かなり聞こえにくいらしい。」


「ねぇ司、牧野のリングだけど・・」
「類・・もう分かった。」

俺は、立ち上がった。

「「「司・・」」」

3人が俺に話しかけようとしたが、それを制して店を飛び出す。


今すぐに会わなきゃならないんだ。
俺は・・・牧野つくしに。


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