花男の二次小説になります。つかつくonlyです。

With a Happy Ending

こんばんは〜。
何だか番外編に筆が進まず、短編を・・。
「俺の女」には、滋ちゃんが出てこなかったので、滋ちゃん目線のつかつくを書いてみました。
***




「いいなぁー。」

「つくし?」


今日は久しぶりのT4女子会。
幹事はもちろん、私、大河原滋。
社会人になってからも、T4は定期的に集まってる。


「先輩、酔ってます?」
「ん?そーでもないけど。」
「つくし、何がいいなぁ、なの?」
「んー。」


ガサゴソとつくしが鞄から取り出したのは、週刊誌。
それも、結構低俗なやつ。
こんなのつくしが持ってるなんて、ちょっと意外。


「何、これ。」
「あ、これって、道明寺さんの記事ですね。」
「どれどれ・・。あー、またかぁ。今度はアメリカの通信会社の社長令嬢ね。」
「なんですか?あっ、熱愛報道?」

週刊誌には、アメリカのどっかのパーティーで、司が金髪美女をエスコートしている写真。
タイトルは、『御曹司の熱愛発覚』・・ね。
その御曹司の意中の女性は、ここにいるんだから、アリエナイんだけどさ。


「つくし、大丈夫?」
優紀ちゃんが心配そうにつくしの顔を覗き込んでる。


大丈夫って言っても、今更じゃん?
司がNYに行ってた4年の間も、2年前に日本に帰ってきてからも、熱愛報道っていったい何回あった?って感じだし。
はっきり言って、誰も本気になんかしてないんじゃないかな。
つくしだって、全然気にしてなかったはず。

だけど、今回の報道はいつもと違った。
金髪美女が、司の腕にしなだれかかっている。
だいたい司は、つくし以外の女性をエスコートなんかしない。
だから、いつも噂になる写真だって、ただ会話してるだけとかそんな写真ばっかりなのに、今回の写真は二人が腕を組んでいる。

これは・・確かにキツイかも・・・


ん?でも、待って?
さっき、「いいなぁ」って言わなかった?
それって・・それって、どーいう意味!?


「つくし?」
「ん?」
「もしかして・・羨ましい・・とか?」
「んー。ちょっとだけ・・。ま、現実には・・ねぇ。」


レアー!激レアっ!!
つくしがこんなこと言うなんてさ。
いっつも、ちょっと司が気の毒っていうぐらいに、私達の前では愛情表現に乏しいって言うか、冷めてるって言うか、そんな感じのくせにさ。

ちらっとみたら、優紀ちゃんも、桜子も、ちょっと驚いた顔をしてる。
だよねー。
驚くよねー、このつくし。
何か、あったのかな・・そう思って、つくしを問いただそうとしたのに、

パタン・・・。
すぅー。すぅー。

つくしはテーブルに突っ伏して寝ちゃった。



凍りつく、私達。

「ねぇ、桜子。さっきのってさぁ。」
「ええ、滋さん。先ほどのって、つまり。」
「つくしも、報道されたいってこと!?」

「「「意っ外〜〜!!!」」」


だってさ。あれよ。
司は、昔からつくし一筋で。
つくし以外、目に入っていなくて。
私とか、桜子とか、ナイスバディの美女とか、一切相手になんかしてない訳。

あれだけ愛されてたらさぁ。
もう、結婚してあげたらいいじゃんっとか思ってるんだよね、私達。
だけどさ。
社会人としての経験積みたいとかさ、訳わかんない理由で、司のプロポーズを断ったりとか、世の中の女子を敵に回してるつくしがだよ?まさか、熱愛報道に憧れてるなんて。


「これって、道明寺さんが聞いたら、泣いて喜びますわね。」
「そっ、そーですよね!まさか、つくしが・・。」
「だいたい、司って、時間があればつくしのアパート通ってるし、結構、その辺のスーパーとかで、つくしと買い物してたりするらしいのに、そう言えばどうして報道されないんだろうね。」
「そんなの決まってるじゃないですか。道明寺さんが、マスコミに圧力掛けているんですよ。絶対。」
「どうしてですか?」
「つくしの・・ためだよね。」
「そうでしょうね。今、噂になったりしたら、先輩の仕事に差し障りがありますもんね。」
「でも、結局、噂になりたいってことは・・つまり、つくしもついに覚悟を決めたってことだよね!」

しばし・・沈黙。


「道明寺さんって、今NYでしたっけ?」
「あ、多分そう。」
「もう、1ヶ月以上会ってないって、つくし言ってました。」
「だからかぁ。つくしも寂しいんだね。きっと。」
「なんだか、ちょっと切ないですね。」
「あっ、私、来週NY出張だわ。りょーかい!司に伝えとく。」
「滋さん、楽しそうですね。」
「でへへ。だって、つくしが喜ぶ顔、見たいじゃん?」

「「「ねーっ!!!」」」



RRRRRRRR……..

あれ?つくしの携帯が鳴ってる・・

他人の携帯は見てはダメ。
だけど・・
テーブルに置かれたつくしの携帯の着信画面。

そこに表示されたのは、『道明寺』の文字。

あたしたち、3人は顔を見合わせた。


出る?出る?出ちゃう??
出るっきゃないよねー!


3人の視線はGoを支持。

爆睡しているつくしを、ちらっとみて、
ちょっとだけ、罪悪感?
ちょっとだけ、高揚感?

酔いも手伝って、私はその携帯をタップした。




***




「しっかし、急だったよなぁ。」
「俺も驚いた。」
「あんだけ逃げ回ってた牧野が、プロポーズに応じるとはな。」
「なんでも、司のお袋さんが、すぐに結婚しろって凄んだらしいよ。」
「まじかよっ!」
「すげぇじゃん、牧野。認められてたんだな。鉄の女に。」


「「「とにかく、よかったよな〜〜!!!」」」


「これで俺たちは、猛獣の世話とは永遠にお別れだな。」
「感無量!!」
「ぷっ。とにかく、二人のとこ、早く行こうよ。」



ほらね、F3の面々も、二人の門出を祝福してる。
そう、今日は、司のとつくしの結婚式。
あの、つくしの爆弾発言から3ヶ月のスピード婚だった。



あの女子会から1週間程して、司のがNYから帰国した。
その直後から、新聞やテレビ、週刊誌も含めて、各種メディアで取り沙汰された、『道明寺司の本命』報道。

そこには・・
相変わらずの完璧な美貌と躯体に、オーダーメイドのビジネススーツを身につけて、つくしのオンボロアパートにせっせと通う司の姿。
そんな司が、薔薇の花束を持ってアパートに入る写真はため息モノ。

さらには、
二人が近くのスーパーで買い物をする姿。
それがなんと司はラフな私服で。
スーパーの袋を持って歩く司とか、激レア万歳!って感じで。
世の中の女子はキュン死寸前!

極め付けは、つくしのアパート前での二人の濃厚キスシーン。
ドラマ顔負けのそのシーンは、なんと動画で撮影されていた。
3分に渡る、二人の熱烈なキッス。
ありゃ、尋常じゃないね。
司の愛情ダダ漏れ。
恐らく、あれは、司の帰国日だね。


当然、連日のようにワイドショーは、司とつくしの話題で持ち切り。
しかも、それが『4年後必ず迎えに来ます』の女だと分かれば、もう世紀のカップルっだってもて囃されて。

つくしは仕事に行けなくなって、道明寺邸に逃げ込んだ。
そこに、現れた楓社長は、とっても冷静で。

「この期を逃せば、二人の結婚は認めません。」
って言ったんだって。

それもそうだ。
司の仕事上のカリスマ性と、本命に対する一途さが高く評価されて、この報道で、道明寺HDの株価は急上昇した。
これが、事実無根、もしくは、司の遊びだったとでもなれば、大変な損失を招く事態。

元々、認めてはいたんだろうけど、結婚を許可するには、ベストタイミングになったみたい。


つくしもさ。
さぞかし嬉しかったんじゃないのかな〜。
憧れの?熱愛報道されたんだしさ。
そして、なんだかんだ言っても、相思相愛の恋人と結婚だよ。

司なんてさ、初恋実らせちゃった訳だしさ。
そりゃ、かつて司のことを好きだった滋ちゃんとしては、辛い時もなかった訳じゃないんだけど。
だけど、今日の二人の幸せいっぱいの結婚式に参列したら、そんな気持ちなんて、吹っ飛んだ。

それになにより、最後に二人のをアシストしたのは、やっぱりT3だったってことが、すっごく嬉しくて。
私も、桜子も、優紀ちゃんも、すごい大役果たしたみたいに鼻が高いよ。
うん。。。涙・・でちゃう・・。



ウェディングドレスに身を包んだつくしを、これ以上ないってぐらいの蕩けた顔で見つめる司。
タキシード姿の司は、ゾクゾクするぐらいにカッコいい。
その司を見上げるつくしも幸せいっぱいの笑顔。

教会から出て来た二人は、
仲間みんなが見つめる中、
熱烈な口付けを交わした。




F3に絡まれている二人の元へ、私達も、レッツゴー。
この結婚式に至るまで、二人に会う機会がなかったもんだから、今日会えるのは、本当に久しぶりなの。

聞こえてくるみんなの話し声。

「しかし、あの報道には驚いたよなー。」
「報道規制解除すると、あんなに凄いもんなんだな。びびったわ。」

「規制解除〜??」
つくしが、素っ頓狂な声を上げている。

「司が、お前のことは表に出ないように、規制かけてただろ?でも、なんでこのタイミングで解除したのかって、疑問だった。」

「え?」
と司を見上げるつくし。
なんだ、つくし、知らなかったんだ。

ここは、T3の出番かな?

「だって、言ってたもんね。つくし、司の熱愛報道、羨ましいって。ねっ?」

「んん?何それ・・?そんな事、言ってないし。」
「言ってたよー。ほら、最後に女子会した時っ!」
「うん、言ってたよ。つくし。」
優紀ちゃんも賛同してる。
桜子も、頷いてるし。

「司がアメリカのパーティーで、金髪美女をエスコートしてた写真みてさ、羨ましいって、言ってたじゃん!!」
「バカ言うなっ。あれは、あの女が勝手にくっついてきただけだっ。俺が、こいつ以外の女をエスコートする訳ねぇだろーがっ!!」

「あー・・あれ?」
「つくし?」
「あれは、そー言う事じゃないよぉ。ほら、あのパーティーにトム・ク●ーズが出席してたって書いてあったじゃん。あれ、いいなぁって。一度でいいから、生で見てみたいなってさ。そーいう意味だったんだけど・・。」


・・・・。
・・・・・・。
「はぁ〜??」

それを聞いた、司の額には、青筋ニョキニョキ。
私達はちょっと尻込み・・。


「お前っ、このちょーカッコいい旦那を目の前にして、トム・ク●ーズだぁ?!」
「だって、ファンなんだもん。」
「俺は、お前が熱愛報道されたいって言うから・・」
あっ、と司が気まずそうな顔をした。

「えっ!ええ〜っ!?もしかして、今回の報道って、ヤラセなの!?」
「んな訳あるかっ。事実だろうーがっ!」

「だけど・・さぁ・・。」
上目遣いで、疑わしい目を司に向けるつくし。


つくし、こんなところで喧嘩とかしないでよね。
そりゃ、勘違いして、けしかけたのは私達だけどさ。
いいじゃん。いいじゃん。
結局は。相思相愛カップルなんだからさ・・。



「何?お前、今更、後悔してんの?」

ちょっと寂しそうな司の顔。
捨て犬みたい。
やだっ。見てらんないっ。
つくしーっ。
ハラハラ・ドキドキ・・・。


「何言ってんのよ?あんた。それこそ、今更、でしょ?」
「・・!」
「あたし以外に、誰があんたを幸せにするっていうのよ。あんただって、約束守りなよ。あたし、もう仕事も辞めちゃったし、今更、後戻りできないんだからねっ!」

司の顔が、パァッと明るくなったと思ったら、
つくしをギューッと抱きしめた。

「ぐぇっ。やだっ。痛いって!」
「黙れっ!」
「ぎぇー。死ぬーっ!」
「絶対、幸せににすっから、安心しろっ!」


カシャッ。





今、私のデスクには一枚の熱愛写真。
親友の結婚式の写真。
モテモテの新郎は、その後一切のゴシップ報道を許さず、今では、愛妻を秘書にして、パーティーやら出張やらへ引きずり回している。
至る所で見かける、二人の仲睦まじい姿。
それは、永遠に続く熱愛報道。


オフィスには、つくしから奪い取ったブーケの押し花を飾ってる。

ふふふ。
そろそろ・・
私の熱愛が囁かれる日も近いかもしれないなぁ。



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番外編・・展開を検討中でーす。
どうしようかなぁ。ちょっとぐらい、ハプニングとか書こうかなぁ。うーん。

追記)金髪美女の謎というご指摘を受け、一部加筆しております。(23:50)
司が、つくし以外をエスコートするのは、私の中でナシ!
単なるトラブルを撮られた設定です。へへ。
  1. 短編
  2. / comment:5
  3. [ edit ]

今日、22時30分に、司君と牧野さんが来店する。
1週間前にその連絡を受けた。
前もって連絡を受けたのは初めてだ。
しかも、直接、司君から。

『つくしが、絶対行くっつって聞かねぇから。Barの開店前は忙しいからダメなんだとか言いやがるし、俺たちのために貸し切りにするのもダメらしいし、夜にちょこっと行くとか言ってんだけど、あいつももうフラフラさせとく訳にいかねーし。』

あーだこーだと電話口で話す司君は、いつもほどのトゲがない。
入籍を済ませ、メディアにも公開した愛妻の牧野さん。
牧野さんの身を守らなければならない彼の責任感と、彼女の希望を聞いてあげたい彼の優しさが垣間見られる。

『それでは、通常営業をしますが、22時以降はカウンターを全て空けさせます。その方が奥様も気楽にお越しになれるでしょう。カウンター周囲にSPの配置を。』

『サンキュ、臼井。・・・でもよ。』
『はい。』
『その・・奥様っての。きっとつくしは喜ばねぇと思うんだわ。』
『しかし・・。』
『いつも通りでいいから。』

いつも通りでいいと言われても、それなりのケジメは必要だ。
彼女は、ここでバイトしていた牧野さんから、道明寺財閥の後継者、道明寺司の妻になった。
だからこそ、彼女の周りもまた、かつての僕のようなSPが周囲を警戒しなければならない。
そんな彼女には、やはりそれなりの対応が必要なんだ。

『あいつは、何にも変わってねぇよ。けど、周囲の見る目は変わってる。だからこそ、俺が昔そこで世話になってたみてぇに、つくしにもいつも通りでいられる場所が必要だろ?』

司君は、牧野さんのことを十分に考えている。
こんなに気配りのできる男だったはずはないが。
全ては牧野さんのため・・か。

『分かりました。いつも通りで。』
『おう、頼むわ。』



*****



「マスター!!お久しぶりです!ご無沙汰してます!」

牧野さんが、以前と全く変わりない様子で、カウンターにいる僕に向かって走り出した。
それを、司君が笑いながら、やんわりと制す。
あっ・・という表情で、はにかんだ牧野さん。
きっと、花嫁教育なんかもきちんと受けているんだろう。
道明寺司の妻としては、常に冷静沈着が求められる。
だけど、司君が彼女を制したのはそういう意味じゃなくて、ただ単純に牧野さんが転ばない様に配慮しただけのことだ。
そんな仲睦まじい様子に、思わず、僕も微笑んだ。

二人が来店する少し前から、司君のSPが、カウンター席の一部とその周囲の席に散らばっている。
司君が、満足そうに、視線を走らせた。
牧野さんは、全く気が付いていない様だ。
二人の周囲を直接警護するSPは2名。
実際には、その周囲にはさらにいるはずだ。
牧野さんには気付かれない様に、彼女の安全に配慮する司君の様子。
牧野さんがここでバイトをしていた頃も、タクシーチケットを出したり、支社長である自らが迎えに来たりと、心配性だったことを思い出した。


「司君、つくしちゃん、ご結婚おめでとう。」

いつも通りでと言われ、いつも通りに出迎えた。

「ありがとうございます!マスター!」
「おう。」

牧野さんがキョロキョロとしながら周囲を伺い、カウンター席を見て、司君を見上げる。
司君が、牧野さんに向かって軽く頷くと、牧野さんはぴょんとカウンターチェアに座った。
司君もゆっくりと、隣に腰を下ろす。

「つくしちゃん、どうですか、ニューヨークは?」
「もう、毎日大変です!楓社長にしごかれています。あっ・・お義母様に・・」
「あはは・・」

いつも通りのつもりだが、あれ・・司君の額に青筋が・・。

「臼井。つくしちゃんとか言ってんなよ。」
「どうしてよ?いいじゃないの。今までだって、仕事では牧野さん、普段はつくしちゃんだったんだよ?」
「さっきの男も、牧野とか言ってたな。気に入らねぇ。」
「それは仕方がないでしょ?今更なんていうのよ。」
「そりゃ、あれだろ?道明寺・・さん?」
「ええ~っ!」

「ぷっ。」

いつも通りにしろと言ったり、独占欲を滲ませたり、司君は本当に人間らしい男になった。
それも、これも、牧野さんのおかげだ。


「マスター。あのね。本当は、今日もフロアに出たかったけど・・それはダメだって司さんが・・。」
「あはは。当然でしょう?さすがに、僕も許可できないな。」
「そうなんですけどね。でも、ここはあたしの原点だから。」
「原点?」
「はい。メープルに就職が決まって、頑張るぞって思ったこと、つい昨日のようです。それに、ここのウェイトレスとして司さんに出会って・・。」

そこまで言って、牧野さんの言葉が止まる。

「出会って・・なんだよ?」
「うっ・・うん。まぁ・・いいや。」
「俺に見惚れた、とか?」
「ちっ、違うからっ。あたしは、マジメに働いてたのっ。」

図星だろうに、焦りまくる牧野さんが面白い。

「つくしちゃんが、ここでマフィンを焼いたのは驚きましたね。」
「わーっ。マスターっ!」
「俺の誕生日な。」
「あれは、どうして渡そうと思ったの?」
「えっ・・えーと、ですね。初めて見た時から、司さんって、なんだか冷たそうな感じで。あの日も、一人で飲みに来てたでしょ?それで、誰かと電話をしている時に、今日が誕生日なんだって分かったんですけど、なんだか寂しそうで。お誕生日に、一人で飲んでるなんて・・ね?」

ちらりと司君の表情を伺う牧野さん。

「同情かよ。」
と、司君がぼやいた。
「違う。この人が笑ったらどんななのかなぁって。司さんに笑って欲しかったんだよ。」

きっと、牧野さんの言っていることは本当なんだと思う。
本気で司君を笑顔にしたかったんじゃないかな。
だけど、僕は、むしろ司君の方に疑問があった。

「ですが、僕からすると、あの日、平日の早い時間に、司君がここに現れたことの方が驚きましたね。それから、バレンタインデーも。」

司君と牧野さんが、お互いに見つめ合いながら、パチパチと瞬きを繰り返している。
どっちが口を開くんだ?

「そりゃ、俺がこいつに惚れてたからに決まってんだろ?」
「始めからですか?」
「出会った時から、気になってた。」
「嘘だぁ。だって、すっごく冷たかったもん。」

「いや、案外本当だと思いますよ、つくしちゃん。司君は、絶対に女性を個室に入れるなって僕に言っていたのに、つくしちゃんのことは拒否しなかったでしょう?」
「女性は入れるなって・・マスターそんなこと言ってなかったですよね?」
「言う前に、つくしちゃんがグラスを持って行っちゃったからね。」
「そっかぁ。じゃあ、出会いは偶然だったんだぁ。」

偶然。
その、偶然が重なれば、運命と呼ばれるのかもしれない。
僕は、この二人の出会いは運命だと思っているんだけどね。

「お前こそ、バレンタインの時は俺にムース渡すために、遅くまで残ってたんだろ?俺のこと、あの時から好きだったんじゃねえの?」

おっ、司君の逆襲が始まった。

「うーん。あの時も、やっぱり、司さんに笑って欲しかったっていうか・・。非日常を味わってほしかったっていうか・・。」
「素直じゃねぇな。好き以外に何があんだよ。手作りなんか渡してよ。あんなことされたら、期待するに決まってんだろ?あっ、お前、まさか、他の男にも手作りの菓子とか渡してんじゃねぇだろうなっ。」
「してません。」

司君の嫉妬も、軽くスルーの牧野さん。
大したもんだ。

僕は笑いながら、司君の前にペリエを、牧野さんの前にフレッシュジュースを置いた。
酒は出すなと前もって言われていたから。
そのジュースに手を伸ばす牧野さんの左手には繊細な輝きを放つリング。
当然、司君の左手にもお揃いのリングが収まっている。
極々シンプルなそのリングだが、埋め込まれたダイヤモンドのクオリティは世界最高級だろう。
照明を落としたこのカウンターでも、牧野さんが手を動かすたびに輝いている。
一片の曇りもない。
まさに、二人の愛を代弁しているようだ。


牧野さんが、ジュースを一口飲んでから言った。
「そうだ、マスター。マスターは、どうして初めから、司さんが道明寺HDの支社長だって教えてくれなかったんですか?」

牧野さんが急にそんなことを聞く。
どうしてか・・と言われても、どうしてなのか。
あの時は、知らなくていいと思ったんだ。
この二人には、余計な情報は必要ないって。

「どうしてかな。二人が幸せを呼ぶハンカチを一枚ずつ持っているって知っていたからかな?」

そう言った僕を、牧野さんはじーっと見つめてきた。
何か、言いたそうだ。

「マスター、ありがとうございます。」
「うん?」
「あたし、あの時、司さんの素性を知らなくてよかったなって思ってたんです。」
「どうして?」
「あたし、恋愛とか全然したことなくて。しようと思っても、頭で考えちゃうタイプで。たぶん、司さんの素性知っていたら、素直になれなかったかなって思うんです。だから、知らないままでよかったなって、今では思っているんです。」
「そう、それは良かった。」

牧野さんの隣では、司君が、水と氷だけのグラスをカラカラと回している。
その表情は幸せに溢れている。
そういえば、途中からは、司君の指示で箝口令が敷かれたんだっけ。

もしも・・
もしも牧野さんが、初めから司君の素性を知っていたとしても、
それでも、きっと二人は結ばれたに違いない。
獲物を狙う司君の本能は、総帥譲り。
一度狙いを定めた獲物を、絶対に諦めたりはしないはずだ。
どんなに時間がかかっても、司君は絶対に牧野さんを手に入れただろう。


「でも・・つくしちゃんは、一体いつ、司君の素性を知ったの?このBarを辞める時には、分かっていなかったよね?」

その唐突な僕の質問に、牧野さんの顔が突然真っ赤になった。

「いっ、いつだった・・かな・・?」
チラッと司君を見て、またすぐに視線を逸らした。

「お前、覚えてねえの?俺、言っただろ、初めてお前を・・」

「だーっ!!!」

慌てた牧野さんが、司君の口を掌で塞いだ。



「くっ・・くっくっくっ・・・」
笑っちゃいけないと思っても、どうしたって笑えてしまう。

こんな風に堂々と、幸せいっぱいの二人がこのBarを訪れてくれる日を、本当に楽しみにしていた。
今日、そんな僕の願いがやっと叶った。


道明寺実氏のSPになり、それからこのBarに来た。
長年ここにいて、様々な人間模様を観察してきたつもりだ。
時には、自慢話を聞き、
時には、愚痴を聞き、
時には、人生の決断に立ち合いながら、
虚栄や嫉妬の渦巻く世界を眺めてきた。
名門のBarと言えば聞こえはいいが、支配人としてここに立つと言うことは、そういった裏の事情を飲み込んでいくということだった。

そんな仕事が、感情を表に出さないように訓練されたSP上がりの僕には案外合っていて、こうして長年勤めてきたように思う。

だけど、今日ほど、僕はここの支配人になって良かったと思えた日はない。
こうして、お客様の幸せを、本気で喜ぶことができたのは初めてだ。
ある意味、特殊な職業を続けてきた僕。
常に先を読み、警戒を怠らない。
SPとしても、ここの支配人としても。
毎日が、ある種緊張の連続だ。

そんな僕に、二人は幸せのお裾分けをくれたようだ。
緊張の中、二人の行く末を見届けることは、本当に、本当に幸せだった。


「臼井。サンキュ、な。あんま言いたくねぇけど、昔から、感謝してた。」

思いがけない司君の一言に、すぐには返事もできなかった。

あぁ、僕もまだまだ甘い。
司君から、こんな言葉を貰うなんて、予想外だ。
先を読むことに長けているはずなのに、意表を突かれた。


「僕の方こそ、ありがとうございます。このBarの支配人であることを、誇りに思います。」

何とかそう答えた僕に、司君の口角が上がった。

僕よりずっと年下の司君が、妻になった牧野さんと繰り広げるこれからの生活。
その中にある幸せを、これからも眺められたらいいと思う。
それは、ここの支配人をしている僕の役得だ。


僕は、司君という人間を通じて、
現実から目をそらさない強さと、
人を信じ、愛することで得られる幸福とういものを肌で感じた。

それは、普段、このBarで見ることはほぼ無いが、
人間としては、必要不可欠なもの。


多くの人間の人生を見てきた、このBarの支配人である僕にとって、
この二人との出会いが、一番の栄誉であることは間違いないだろう。

目の前でじゃれ合う二人を見て、
そんなことを思った。



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久しぶりの臼井さん目線でした。
  1. その後の二人のエトセトラ
  2. / comment:3
  3. [ edit ]

「新婚旅行が日本なんてね。ぷぷっ。」
「わりぃ。」
「ううん。そういうことじゃなくってね・・なんだか、不思議だなって。日本に帰るのが、懐かしいっていうか、嬉しいっていうか。」
「落ち着いたら、ヨーロッパでも行こうぜ?」
「ええ~。別にいいよぉ。こうやってさ、二人でいられるだけでいい。」

ったく、こいつは本当に欲がない。
お前の夫は、この俺だ。道明寺司だぜ?
お前が望めば、どこにだって連れて行ってやるし、なんだって買ってやるのに。


だが、実際のところ、結婚式を急ぐことになり、そのスケジュールだけで目いっぱいで、ハネムーンはお預けになっちまった。
今日は昼過ぎまでアイランドでゆっくりできたが、今はもう日本へ向かうジェットの中だ。
もちろんつくしも一緒だが、1週間後には、ニューヨークへ戻ることになっている。
一緒に暮らしてぇ・・つー希望はあるが、つくしもまだ覚えるべき仕事がたくさんあって、もうしばらくは、ババァの元で仕事をしたいというのが彼女の願いだった。

入籍し、結婚式を挙げ、正式に俺の妻となったつくし。
入籍後に速攻で会見を済ませたから、公にも俺の妻だ。
すでに、ニューヨークのパーティーではつくしを妻として同伴して、周囲の注目を浴びた。
7月末にはニューヨークでデカイ披露宴が計画されてはいるが、今回の帰国中に、日本の重要な取引先には挨拶回りを済ませることになっている。


帰国後は、俺には当然、挨拶回り以外の仕事もあるから、四六時中つくしと一緒という訳にはいかない。
なんなら、俺の秘書でもやったらどうかと思ったが、それはつくしに却下された。

「お前、日本で一人でも暇だろ?」
「ううん。そうでもない。ほら、日本のお邸も久しぶりで、覚えなきゃいけないこともあるし、タマさんとお茶する約束もしてるの。それに、結婚式に招待できなかった同期に会ったりとか、あと、楓社長・・じゃなかった、お義母様に頼まれた仕事もちょっとだけあるの。」

ふーんと聞いていた俺だったが・・
待てよ?
結婚式に招待できなかった同期?

「同期に会いにいくのか?」
「うん。土曜日に、みんなで夕飯食べようって。皆がお休みを合わせてくれたの。お店も予約してくれててね。」
「はぁ?店?」
「言ってなかったっけ?」
「聞いてねぇぞ。」
「えっと・・じゃあ、行ってきます・・」
無意識の俺の凄みに、つくしが一瞬ビクッとしたが、俺の嫉妬には慣れたもんなのか、さらっと話を流しやがった。

「場所、どこだ?」
「ん?何が?」
「同期の集まりだよ!」
「えっと・・どこだったかな・・居酒屋さん。創作料理だったかな。」
「SPは連れて行けよ。」
「う・・ん。えっと・・、お店の中も?」
「・・。」
「分かりました。」
「よし。」

しばらくすると、つくしがコクリコクリと船をこぎ出した。
また寝てやがる・・。
昨日の夜の様子といい、なんとなく、つくしの様子がおかしい。
ぼーっとして、疲れてんのか?と思えば、急に寂しそうにしたり、甘えてきたり。
俺が、つくしに敏感になりすぎてるだけかも知れねぇけど。
だってよ。生理だって、確実に遅れてんだろ?
こういう事って、普通、女の方が敏感なんじゃねぇのか?
隣ですやすや眠るつくしは、どんな夢をみているのか幸せそうで、俺がそんなことまで心配していると思われるのもな・・。
もうしばらくは、厳重に様子をみるしかねぇか。



*****



メープル東京は、現在、新支配人の元、順調に業績を伸ばしている。
つくしが昨年立ち上げた企画は、今も継続されている。
町田の事件以来、つくしはメープル東京に足を踏み入れていなかった。
渡米するための準備もあったし、いきなり俺と婚約したことで生じるトラブルを回避するためでもあった。


夕方に帰国した俺たちは、久しぶりのメープルに来た。
その目的の一つが、1年前につくしが行きたいと言った、フレンチレストラン『Shangri-La』で食事をするためだ。
俺たちの休暇は今日までで、明日からは挨拶回りや通常業務に忙殺される。

「うわぁ。久しぶりだぁ。」
少し緊張気味のつくしの腰に腕を回し、彼女をエスコートする。
この日本で、堂々とつくしの隣に立てる幸せ。
俺は自慢の妻連れ、レストランの入口をくぐった。


すると・・
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。」
出迎えたのは、この店の支配人ではなく、若い男。
なんか、どっかで見たことある。

「あっ・・黒田君!」
「久しぶり、牧野。いや、道明寺夫人。ようこそおいで下さいました。」
「やだ~っ。何言ってるの?でも、嬉しいっ。元気だった?」
「うん。他の奴らも元気だよ。土曜日、牧野に会えるのをみんな楽しみにしてる。」
「私も楽しみ!」

何勝手に二人で盛り上がってやがる。
しかも、こいつ・・黒田。
つくしを狙ってた男じゃねーか。
はっ、ま、こいつは今や俺のもんだし?
俺は、そんなに心が狭くねーけど・・

「おい、席に案内しろ。」

つい凄んじまった。

「畏まりました。」
俺の一声に焦った黒田が、俺達を奥の個室に案内する。
一方のつくしは、俺の不機嫌には全く気づいてねぇな。

「黒田君、レストラン希望だったもんね。戻れたんだ。良かったね~。」
「あぁ・・まぁ・・ね。」
黒田は、ちらっと俺を見た。
「あの時、牧野が言ってた人が、まさか・・」
「あ・・。う・・ん。えっと・・。」
「それは、言えないね。」

この男、つくしのことをまた牧野とか言いやがって。
でも、この男の一言で、つくしは、黒田に告られたことを思い出したらしい。
ったく、遅せぇんだよっ。
このボケボケ女め。

でも、次のつくしの一言に、俺は吹き出しちまった。


「あ・・あの・・私の、主人の・・道明寺です。」


「「ぶっ・・」」


何言ってんだ、こいつは。
今更、俺を紹介とかしやがって。
可愛すぎんだろっ。
あーもう、このまま、スイートに連れ込みてぇ。


黒田も笑いを堪えきれなかったようだ。

「牧野、それは、みんな知ってる・・。」

つくしが、真っ赤になって、俺の腕に顔を埋めた。




それから、つくしと楽しく食事をとった。
シャンパンを頼もうとするつくしを制して、オレンジジュースを頼む俺。

「も~っ。子供じゃないんだからねっ。昨日だって、飲まなかったんだからっ。」

そういうことじゃねぇだろうがよ、ったく。

食事が進み、メインの肉料理も半ばになると、

「なんだか、お腹いっぱい・・。おかしいなぁ、楽しみにしてたのに。司さん、食べられる?」
「いや、俺も腹いっぱい。」
「やだぁ。もったいないし。黒田君もがっかりしちゃう。」

そう言って、切り分けた肉を俺の口に放り込んで、周りをキョロキョロ見回すつくし。
誰も見てねっつーの。
そのまま、いくつか無理やり肉を食わされた。
やっぱり、こいつが肉を残すなんて・・おかしいよな。

けど、その後、つくしは、紅茶とシャーベットをペロリと完食していた。
わっかんねぇ・・。



「あ・・ふぅ・・。お腹いっぱいになったら、また眠くなってきた・・。何でかなぁ、気が緩むとすぐに眠くなっちゃうの。結婚式が終わって、ほっとしたからかなぁ。」

つくしも、彼女なりに、おかしいと思ってはいるらしい。
そんなこいつに言ってやった。

「それなら、今日は、止めとくか?」

その俺の一言に、急にシャキッとしたつくし。
「えっ?嫌だよっ。絶対に行く!すっごく楽しみにしてたんだから!」

「何で、そんなに臼井に会いてぇのか、俺にはわからねぇ。」


もう時間は22時を軽く回っている。
今日メープルに来た第一の目的は、『The Classic』に行くためだ。



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「主人の道明寺です・・」って言わせたかっただけの回でした(笑)。
  1. その後の二人のエトセトラ
  2. / comment:3
  3. [ edit ]

チャペルでの挙式の後、集まった皆での食事が終わると、俺の両親は、ニューヨークへとんぼ返りになった。
初めから分かっていたことだから、気を使うことなんてねえんだけどな。
つくしと二人で、空港まで、二人を送った。
主役は俺たちだっつーのに、本当にくそ真面目なんだよな、こいつは。

「お義父様、お義母様、これからも、どうぞよろしくお願いします。」

「こちらこそ、つくしさん。司の事、頼んだよ。」
「なんだよ、それ。」
「分かるんだよなー、私には。」
「何がだよっ!」

「私にも分かるわ。つくしさんの苦労が。」
「楓・・どういう意味だい?」
「道明寺家の嫁は大変だという意味よ。ね、つくしさん。」

きょとんとしたままのつくしは、何を言われているのか分からないんだろう。
俺だって、完璧に分かってるわけじゃねぇけど・・
あれじゃね?
オヤジとババァなりに、新婚の俺たちを祝福してるって訳だ。

俺たちは、これから、夜に仲間たちとパーティーをして、明日には日本へ戻る。
つくしは1週間ほど俺と一緒に日本に滞在するが、その間に、取引先の企業なんかへの挨拶周りをこなす。
それが終われば、またつくしだけニューヨークへ戻ることになるから、この1週間は、俺がつくしにがっつくことを予想してんだろう。


そんなことを思いつつ、オヤジ達と別れて、ホテルへ戻るリムジンの中。
ウエディングドレスから、深紅のドレスに着替えたつくしが俺にもたれかかって来た。

「ちょっと・・眠い・・」
「あいつら、夜まで騒ぐ気だろうから、少し休むか?」
「5分だけ寝たら大丈夫・・」

そう言っただけで、もう寝息が聞こえてきた。
つくしに俺のジャケットを掛けて、抱きしめる。
もう、あいつらと騒いでる場合じゃねぇんだけど。
早く、二人きりになりてぇ・・な。



***



「「「お二人さん、結婚おめでとー!!」」」

ホテル内のリビングスペースで、気を許している仲間たちとのパーティー。

つくしは少しだけ休んで元気になったのか、きゃっきゃっと女同士で騒いでいる。

「でもさぁ。つくしが、道明寺さんと結婚するなんて、聞いた時は驚いたよー。あれでしょ?お試しで付き合った人なんでしょ?」
「ちょっと!優紀、声が大きいっって。」

「なになに~。お試しって。」
総二郎が、その話に食いついた。
「あの頃さぁ。つくしってば、話を聞いていたら、絶対にその人の事好きなくせに、お試しで付き合い始めたとか言ってたよねー。」
「わーっ。」
「司相手に、お試しかよ。やっぱ、牧野、お前、すげぇわ。」
「何でですか?」
「だってよ。やっぱ、道明寺司に迫られたら、一発OKって女が普通じゃん?それを、お試ししてみるっつー考えがさ。」
「私は、つくしの逃げだと思いましたけどね。」
「へぇ~。優紀ちゃんだっけ?言うねー。」

「お試しって、体のお試しのことですの?」
なんて、真顔で言う三条。
馬鹿め。そんな訳あっかよ。

「私もね、そう思ったんですよ。桜子さん。」
という、つくしの友人。
お前もかよっ。

「そしたら、つくしが、わーってなっちゃってね。だいたい、22歳にして、ファーストキスとか、本当につくしは、ある意味、箱入り娘だったよね。」
「何それ、司と付き合うまで、キスもしたことなかったって事?」
「そうですよ。」

「もーっ、止めて!!!」
ドレスと同じぐらいに真っ赤になったつくしが、友人の口を塞ごうとしている。

どれを聞いても、俺にとっては愉快で、楽しいことばかりだ。
そんなこともあったと懐かしく思える。
結局こいつは、俺のものになったんだしな。

「それを言っちゃ、司だって、同じようなもんだよな。牧野が初めての彼女だしよ。」
「ええ~っ!以外ですっ!信じられない!」
「私も、道明寺さんに彼女がいると知った時には驚きました。それも、どこからどう見てもパンピーの女で。」
「桜子っ!あんたまでっ。」

つくしが、傍にあったシャンパンを口に持って行った。
俺がぱっとその手をつかんで止める。

「今日は止めとけよ。」
「ん?何で?」
「疲れてんだろ?」
「ん。でも1杯ぐらい大丈夫だよ。」
「だめだ。」
「えー。」

そんな俺たちのやり取りを見ていた悪友たちが、
「だよな~。もう入籍してるとはいっても、今日は一応初夜って奴だよな。そりゃ、酔っぱらわれちゃ困るよな~、司。」
「ちっげーよ。」

いや、それもあるけど・・。
でもそれだけじゃない。
このアイランドに来てから、つくしの体調はあまり良くなかった。
もしかして・・と思わなくもない。

「絶対大丈夫なのに・・」
なんて、のんきなことを言っているつくしだが、こいつのボケ発言はいつものことだから、聞いてらんねぇ。
俺がしっかりしとかねぇと。

シャンパンの代わりに、オレンジジュースを握らせた。
一口飲んで、
「うん。美味しい。」
と言うつくしを見て、
やっぱり、さっぱりした飲み物がいいんじゃね・・?
なんて思った。


つくしの中学・高校時代の話。
俺たちの高校時代の話。
三条とあきらの惚気話。
そんな会話を楽しみながら、まったりとした時間が過ぎていく。

時計が22時を回る頃、俺は、左の肩に重みを感じた。
つくしが、俺の肩にもたれて眠っている。
やっぱり、以前より体力がない。
その様子を、友人たちも見て笑っている。

「部屋、連れて行ってやれよ。」
「あぁ。」

それだけ言って、つくしを抱えて立ち上がった。

「司、マジ、おめでと。」
「あぁ、サンキュ。」
「道明寺さん、つくしのことお願いしますね。」
「おう。」
「無茶すんなよ!」
「うっせーよ。」

あいつらの祝福を背中に受けて、俺はつくしを抱いてスイートルームへ向かった。



*****



ゆっくりとつくしをベッドに下ろすと、
「ん・・・。」
とつくしが身じろぎをした。
「起きちまったか?」
ベッドに腰かけて、ネクタイを外しながら問いかければ、
つくしが俺に向かって、腕をいっぱいに伸ばしてくる。

「どうした?」
つくしの隣に倒れ込んで、彼女の体を抱え込む。
「だって、シーツが冷たいんだもん。司さんが離れちゃうから・・・。」
ちょっと拗ねている、その言い方が可愛らしい。
酒が入ってるわけでもねぇのに、なんだか妙に素直だな。
やっぱ、これは初夜だから・・か?

「あー、やっぱり、司さんは温かいね。」
「そうか?」
「そうだよ。」
「落ち着く。」
「俺も。」

彼女の背中をさすりながら、彼女の首筋に顔を埋める。
彼女だけが持つ優しい香りに酔いしれる。

ちゅっ・・と項に。
ちゅっ・・と首筋に。
ちゅっ・・と鎖骨に。
一つずつ、思いを込めて痕を残す。
そのまま、ドレスのファスナーを下ろした。

「シャワーは・・?」
「要らねぇ。」

さっとドレスを脱がせると、レースのビスチェに、揃いのショーツ。
それから・・ブルーのガーターベルト・・。

ドクンッ。
俺の中心が一気に熱を持った。


その姿を前に、しばらく見惚れていた俺に気付いたつくしは、
「あっ、やっ、これは、桜子がっ!」
なんて、急に焦り出した。

ダメだなんて言ってねーし。
俺は一気にそれらに手を掛けると、パチンッと留め具が外れた。
ショーツを引きずり下ろすと、そこにはつくしの薄い繁み。
大きく足を開かせて、顔を埋めた。

「ひゃっ・・あっ・・んっ・・あぁ・・!」


つくしの密口にしゃぶりついて、小さな突起を舐めまわす。
逃げようとする腰をしっかりと捕まえて、執拗な刺激を送り続けた。

「はっ・・ああ・・ん。いやっ!・・・だめぇ・・」

つくしの体が痙攣し、小さく達したのが分かった。
いきなりこんなつもりじゃなかった。
だが、こいつの姿に煽られた。
つくしの顔を覗き込むと、小さな息を繰り返し、俺をとろんと見つめて来る。
その姿にも、欲情する。

____もっと、俺の手で、乱したい。


くるりと体を反転させ、つくしの背中からビスチェを緩めていく。
全てが外されると、つくしが大きく息を吐いた。
こぼれた乳房が俺の手のひらに落ちる。
それをやわやわと揉んでいく。
背中に俺の印をつけながら、乳房の頂を弄った。

「あっん・・」

つくしの腕から力が抜け、ポテッとベッドに顔を埋めた。
長い髪をかき分けて、白い項に唇を這わす。
片手で胸を刺激しつつ、つくしの密口に指を添わした。
ズブッと指が飲み込まれ、つくしの中から愛液が溢れる。

クチュリクチュリ・・
つくしの中をかき回す俺の指が増やされる。

卑猥な音に混ざって、泣きそうな声が聞こえてきた。

「つかさ・・さん・・もう・・やだぁ・・。おねがい・・。」
「司・・だろ?」
「つかさ・・」

クチュ・・

「やぁっ・・。」
「何のお願いだ?」

「ふぇっ・・うっ・・つか・・さ・・」
「ん?」
「一人に・・しないで・・」

「えっ?」
「ずっと・・一緒にいて・・・離さ・・ないで・・」

つくしの顔を覗き込むと、その顔が涙で濡れていた。
慌てて指を抜き、つくしの頬を包んで、キスをした。

「幸せすぎて・・恐いよ・・。」
「俺がお前を、離す訳ねぇだろ?」
「何があっても?」
「ああ。」
「絶対に?」
「約束する。」

つくしを仰向けにして、じっと見つめ合った。
互いの本気を確認する。
俺の言葉に安堵したつくしの腕が上がり、俺の首に添えられた。


深いキスを交わしながら、
俺は、彼女と繋がった。


俺の下で揺れている、俺の花嫁。
その目からこぼれる涙をキスで拭い取った。

これは悲しい涙なんかじゃない。
俺を想う、幸せの涙。
だから、俺が出来ることは、彼女を抱きしめて離さずにいる事だけだ。

何度も何度も突き上げて、
気が狂いそうなほどの快楽に襲われた。

つくしと共に弾ける直前。

「つくし、俺を離すなっ。」


つくしが腕に力を込めて、強く俺を抱きしめた。
首に掛かる力に、彼女の愛を感じながら、
そのまま、長く、彼女の中に俺の精を放った。



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深く考えずに書いていて、この先が、全く見えません・・。
ここまで計画性がないのは初めてかも・・。

  1. その後の二人のエトセトラ
  2. / comment:7
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結婚式は6月の2週目。
プライベートアイランド、『マリアージュ』のチャペルにて。

二人の両親。
姉ちゃん家族と、つくしの弟。
俺の悪友たち。
三条とつくしの幼なじみだという友人。
招待客はそれだけだ。

その全員が微笑んでいる。
それを見ている俺も、相当緩んだ顔をしているんだろう。
ビジネスの場では決して見せることのない表情。

結婚式はビジネスだなんて考えていた自分が、恥ずかしく思えた。
人前で、こんなに感情を露わにしたことがあっただろうか。
こんなに、人に感謝したことがあっただろうか。

つくしに出会ってから、幸せの上に幸せが積み重ねられていく。
一体こいつは、どれだけの幸せを俺にくれるのだろう。



ウエディングドレスを纏ったつくしが、親父さんと一緒にバージンロードを歩いてくる。
世界一美しい、俺の花嫁。
ボリュームのあるチュールドレスには、繊細な刺繍が施され、可愛らしくも品があり、朗らかなつくしにぴったりのデザインだ。

このウエディングドレスは、なんと姉ちゃんがすでに準備していたもの。
「勝手なことすんなよ、姉ちゃん。つくしにだって、希望っつーもんがあんだろ?」
「あら、嫌だ。あんたと一緒にしないでよ。私は、つくしちゃんの希望を聞いて、デザイン画だって10枚描いてもらって、その中から一緒に決めたのよ?」
「本当か?つくし。」
「あ・・うん。あの・・自分のドレスだとは思っていなかったんだけど。どんなドレスが好きかって聞かれて、お姉さんと一緒に考えたの。だから・・」
「満足してんのか?」
「うん。」
つくしが恥ずかしそうに言った。

つくしが満足してるなら、それでいい。
それに、実際出来上がったドレスは、文句のつけようがないぐらいに素晴らしくて、華奢なつくしに似合っていて、そのドレスを纏ったつくしに、俺は一瞬で目を奪われた。



この島に咲く花がバージンロードを飾る。
教会の中は、笑顔が溢れている。
つくしが、穏やかな表情で、俺の手を取った。

「道明寺さん、つくしをどうか宜しくお願いします。」
「お任せください。お義父さん。」

そんな俺たちにのやりとりを聞いたつくしが、少し寂しそうに親父さんを見つめた。
そして、ポロリと一粒の涙。
俺は、その綺麗な涙を親指で拭った。

「大丈夫か?」
「うん。」
「俺がいるから。」
「うん。」

涙をこらえて微笑んだつくしと腕組み、祭壇へ向かって歩き出した。


プロポーズの時には存在しなかった司祭の前で、永久不滅の愛を誓う。
これからずっと、「良き時も、悪しき時も」「富める時も、貧しき時も」「病める時も、健やかなる時も」、どんな時でも、つくしが俺のそばにいてくれる。
自分の愛する女性から、その誓いを聞くことができる男は本当に幸せだと思う。
自分がつくしに選ばれた男なんだということが、最高に誇らしかった。


俺がデザインしたマリッジリング。
ホテルウーマンはマリッジリングしか許可されないと聞いた時から、すぐに準備を始めていた。
今日、ようやく、渡すことができる。

つくしの左手に指輪を滑らせた。

「綺麗・・」
と小さく呟く、そのつくしの声に、俺の口角が少しだけ上がる。
こいつは、俺が渡すモノにケチをつけるような女じゃない。
例えおもちゃのリングを渡したとしても、後生大事にする様な女だ。
もちろんこのリングは特注で、値段なんてつくしには言わないし、言えない。
けど、こいつが素直に喜んでくれるだけで、それだけで、俺の心は満たされる。
値段以上の価値があるんだ、つくしの笑顔には。


誓いのキスは、堂々と。
つくしの唇に食らいついた。
俺の両親や、つくしの両親が見てるからって遠慮はしねぇ。
つくしへの愛を隠したりしない。
それが、道明寺司のやり方だ。
片手はつくしの腰を引き寄せて、もう片手は彼女の後頭部を支える。
そうして、俺を仰がせ、引き寄た。

唇から伝わるリアル。
この柔らかさと温かさこそが、俺が手に入れた宝物。
夢じゃない。
これからは、ずっと・・俺のものだ・・。


しばらくそのまま、手に入れた現実を味わっていると、
突然、
「ピューイッ!!」
という口笛。
総二郎が飛ばしたそのヤジに、やっとつくしを離す。

真っ赤になったつくしが、俺を恨めしそうに見上げる。
だけど、文句なんか言わない。
困ったような瞳の中に、溢れる幸せが見える。
その表情がまた、俺を最高に幸せにしてくれる。
俺がつくしの頬を撫でると、彼女は、俺の唇についたルージュを、そっと拭ってくれた。

彼女が、俺の全てを受け入れてくれる・・
ずっと・・永遠に・・



元々、俺は、結婚なんて考えていなかった。
つまり、一生独身で構わねぇと思っていた。
政略結婚なんて論外だ。
結婚なんて人生の墓場に足を突っ込む奴は、馬鹿な奴だと思ったこともある。

だけど、この教会から見える景色は、その馬鹿モンにならねぇと見ることができない景色だ。
俺は、良かった。
つくしに出会って。
つくしに、呆れるほど惚れて。
彼女は、俺に、嘘、偽りのない幸福を与えてくれる。
その幸福の中で、どんな馬鹿者になったって、俺は一向に構わない。



フラワーシャワーの中を、つくしと教会の外へ踏み出した。
晴れ渡った空までもが、俺たちを祝福しているように感じるなんて、俺も大概イカレてるな。

つくしが、三条達とじゃれ合っている。
俺の周りには、悪友たち。

「しっかし、司が一番乗りとはなぁ。」
「出会って、まだ、1年半だろ?」
「つっても、俺らだって、見合いが決まれば即結婚だけどな。」
「俺、司が羨ましい・・」
「言えるな。」
「お前、桜子とはどうなってんの?」

悪友たちが、ごちゃごちゃ言ってやがるが、そんな時も、俺の目にはつくししか映らない。

「司は、完全に、牧野に狂ってんな。」
「牧野じゃねぇーよ。あいつは、1ヶ月前から、道明寺つくしだっ。」
けど、最低限の訂正は忘れねぇ。

「ぷっ、お前、どんだけ独占欲強いんだよ。」
「司が、惚れる女とか見て見たいと思ってたけど、庶民の女だとは、思いもよらなかったな。」
「だよな。歩くブランドの男がよ。選んだ女は、ノーブランドだもんな。」

ホザケ。
つくしの価値は見た目じゃねぇんだよ。
あいつの心はすげぇ綺麗だ。
あいつには、金では得られない価値がある。
だけど、それは、俺だけが知っていればいい。
俺が見つけた、秘蔵の宝石・・

つくしの価値を、多くの人間に知らせる必要なんてない。
そう思っても、こいつは人の心を無意識に掴む奴だからな。
俺も、安心はしてられない。

ノーブランドの女に惚れる男は案外多いからな・・

いつの間にか、俺の悪友たちに囲まれているつくしを見て、俺は焦って、彼女を追いかけていく。
こうして、ずっと彼女を追いかけていきたい。
見守って、見守られて、そういう人生を歩みたい。

つくしを後ろから抱きしめると、
「うわっ、司さん、重たいよっ。」
と騒ぐつくしを、みんなが笑った。



「司ってば、つくしちゃんにメロメロなんだから。」
そう言って、姉ちゃんが近づいてきた。

「司、つくしちゃん、結婚おめでとう。」
「ありがとうございます。」
つくしと姉ちゃんは、すげぇ仲がいい。

「そのドレス、すっごく似合ってるわ。」
「えへへ。お姉さんのおかげです。」
「そのネックレスは、母からね?」
「はい。あの・・道明寺家に伝わるパールだそうです。」
「ええ。知っているわ。それから、つくしちゃん。ありがとうね。」
「え・・?」
「この教会で、結婚式を挙げたいって言ってくれたの、つくしちゃんなんでしょう?」

「なんで姉ちゃんが礼なんか言うんだよ。」
「だって、お母様のためでしょう?ここでの結婚式を決めたのは。」
「は・・?」

俺は、何も知らない。
つくしが、この教会で式を挙げたいと言った理由。
単純に、ここで俺がプロポーズしたからだと思い込んでいた。
それが、ババァのため?

「この島には、お母様の夢が詰まっているんだもの。家族の時間を十分にとることができなかったお母様が、私や司のために、家族で安心して来ることができるリゾートを作ったのよ。」

ババァの夢?
そんな事は知らねぇよ。
俺はつくしの願いを叶えたつもりで・・。

「お姉さん、それは違います。ここは、司さんが初めて連れてきてくれた旅行先なんです。世界各地に別荘を持っている司さんが、あたしに見せたいと思ってくれた場所。このアイランドが本当に素晴らしくて。感動して・・。だから、お願いされた訳じゃありません。自然と、ここで挙式したいと思えたんです。」

自然と・・ここで・・。

俺がつくしをここに連れて来たのは、このリゾートが完全にプライベートの確保ができることと、やはりこの教会が素晴らしかったからだ。
プロポーズはこの教会でと決めていた。
そこに、ババァの思惑なんか、感じなかったが。
それでも、自然とここに足が向いていた。

「それでも・・やっぱり、ありがとう。母がとっても嬉しそうにしているの。久しぶりに見たのよ。」

ふと見れば、少し離れた木陰で、俺の両親とつくしの両親が笑っているのが見える。
信じられない光景。
ニューヨークメープルで挙式していたら、きっとこんな場面は見られなかったに違いない。



また一つ、つくしから幸せを貰った。
この幸せを、彼女にも返したい。

「つくし、愛してる。」

そう彼女の耳元で囁いて、もう一度後ろから抱きしめる。
つくしの耳が一気に朱に染まった。

「うん・・あたしも・・愛してます・・・。」


俯いたつくしを、くるっと回して抱き上げると、
慌てたつくしが、俺の首にしがみ付く。

「司さんっ!」
「証拠、見せて。」

彼女のまっすぐな瞳を覗き込んで、絶対に逸らさない。
この青空の下、神の前でだけでなく、ここにいる全員に見せつけてやりたかった。

俺がつくしを愛するように、
つくしも俺を愛してるってことを。


つくしが俺の頬を包み込んで、
「愛してる・・」
羽のようなキスを落とした。



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だらだらと書いていたら、なんと、結婚式だけで一話使ってしまいました・・(汗)
  1. その後の二人のエトセトラ
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